第2話 騎士ジャスティンの平和な巡回

俺の名はジャスティン、大王国ケシアヘモルヒの騎士団に所属するごく普通の騎士だ。


本来ならば非番の俺は、現在パトロールの一環で市街を見回している。


10歳ぐらいの少年が下腹から血を流しながら、楽しそうに膀胱を膨らませている。


いつもの微笑ましい光景だ。


ああやってはしゃいでいる少年を見ると、昔は自分もああやって膀胱で遊んでは幼馴染のシンディと、どっちのほうが大きく膨らませれるかって競っては破裂させて魔法治療師のゴッダムに


『破裂するまでやるのはいいが、今度は広いところでやりなさい。狭いところだと彼方此方に血が飛び散って掃除が大変だから。』


と叱られたのを思い出す。


懐かしさを覚え、もう一度膀胱で遊びたいと思ってしまったが今は仕事中なので別日シンディと子宮サッカーをしようと決め、もう一度街の方を見渡す。


街はいつものように賑やかで、肉屋では牛の生首を履いたパーシーばあさんがハエのタカる瑞々しい野菜を売り、八百屋では両目にホーンラビットを突き刺して満面の笑みを浮かべるゴリーオ爺さんが年代物の高価なラッパを売っている。


魚屋のジョージは肉屋の主人であるクルーガ婆さんを活造りにし、花屋のプラムは棘切りバサミで自身の腹を切り裂いて腸を引きずり出し、花に飾り付けるネックレスを作っている。


変わらぬいつもの光景、退屈な日常の一幕だ。


日常に異常を見出す画家や漫画家でもない俺は、この何気ない日常を見ても何も感じない。

と言うか暇だ、事件が起きないものだから本当にやることがない。


パトロールという名の人間観察に飽き飽きしていると、不意に声をかけられた。


「お兄さん、お兄さんのお腹をこのナイフで切りつけていい?私、ナイフで騎士さんを切り裂く感覚はまだ味わったことがないの!」


5歳くらいの少女が腰まである赤毛のおさげをなびかせて、

ヒマワリのようにランランとした笑顔で可愛らしい事を言っている。


おそらく幼稚舎へ向かう途中なのだろう、魔法で硬質化させた木のナイフを振り回して近づいてくる。


「勿論いいとも!でも、切ったらすぐに幼稚舎に行くんだよ?いいね?」


「うん!わかった!じゃあ切るね!」


少女が魔法で鋭利に硬化した木のナイフの刃先を俺の横腹に押し当てて、ソレを慣れた手付きで真横に薙ぐ。


鋭く熱い痛みが腹部に走る。


少女の力が思ったより強かったのか腸が勢い余って飛び出し、年代物のワインの様に真赤な鮮血がスパークリングドリンクのごとくバシャバシャと吹き出した。


「少し深く切りすぎたね、このままじゃ幼稚舎の床を汚しちゃうし一旦ソコの噴水で体を綺麗にしておこうね?」


「分かった!切らせてくれてありがとう!お兄さん!」


少女は口から聖血を吐き出し続ける水竜の生首へと駆けていった。


少女が噴水へと向かうのを見送った俺は、また暇なパトロールと言う名の観察作業へと戻ろうとした。


だがその時、突然切り裂かれた腹がグゥと鳴り出した。


どうやら空腹らしい、街の中心にそびえ立つ時計塔に視線を移せば、もう昼食の時間だ。


腹を食い破った大蛇の如くドッシリと腹から溢れる腸を腹部の切れ目へ乱雑に押し込み、回復魔法で元通りにし、俺は飯屋街の方向へと足を運んだ。


勿論道中もパトロールの事は忘れない、路地裏でエルフの女を椅子に加工しているゴブリンの少年たちに「もっと広いところでやれ」と注意したり


路上宝石店のショーケース上で踊り狂う全裸の中年男性の口に、金貨を投げ込んだりと仕事をしながら向かった。


飯屋街はいつでもいい匂いがする。


肉の焼ける匂い、香辛料のピリッとした香り、たまに悦びに満ちた甘い嬌声も聞こえてくるが最高だ。


彼方此方から漂ってくる食欲をそそる臭いに腐臭や甘臭、

昨日から時計に張り付けられ、秒針によってもうほとんど原形を留めていない同僚のトムから溢れる小さな絶叫に頭を悩ませる。


「どの店に行こう・・・」



新鮮な腐った中指料理が自慢のファッカーバーガー。


最近メニューに溶解鉛と液化ラドンをミックスした氷菓が追加されたケミストリークリーム。


世界各地の1万種をゆうに超える水と砂糖を使った砂糖水専門店ファットウォーター。


店頭に延々と喋り続ける生首が飾ってある謎の店ゴットタン。



「今日は少し冒険してみるか!」


俺は生首のもとへと足を運んだ。



『ヤァヤァヤァ!俺はお喋りスペンサー!一昨日此処を通りかかったら生首にされてココに飾られてたんだ!

店長に客を一人でも店に入れることができれば雑草をくれるって言われてるんだ!』


どうやら客引きだったようだ。


俺は昔から生首とは上手くやれないことが多かったせいか、この店を選んだことに今更ながら後悔の念が湧き出てきた。


しかし秒針で削られるトムの絶叫の具合からして昼休憩の時間もあまり残っていない事がわかる。


入口でぶら下げられたスペンサーの目玉を銀貨と取り替えつつゴットタンに入店した。




次回

突撃、ジャスティンのお昼ごはん!命の価値など皆平等!


























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イカれた日々 @yukizake727

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