イカれた日々

@yukizake727

第1話 プロローグ

サンテルベ暦56年、国王ベルタージュが統治する大王国

ケシアヘモルヒである条例が発布された。


あああああああ条例。


名前に意味はない。

と言うのも、この条例は国王が実務作業中いつものように

ラミナファ、エハン、ロコドカリウと呼ばれる薬物を気化させて吸引している時に頭によぎったゴミだからだ。


内容はとびっきりにイカれたモノで


1 奴隷または貴族階級の者に松明を丸呑みさせても罪に問われない代わり、加害者は自身の生爪を一年以内に108枚剥ぎ、すり潰し、海水に浸し、ソレを瓶に入れて、ゲイの尻穴にブチ込まなければならない。


2 女性または男性を強姦した者は、如何なる種族・階級であろうと強姦相手に自身の生殖機の3分の1を切り取って相手に贈らなければならない。


3 朝食をとらなかった者は1年間、飲食、排泄、睡眠を禁止する。


4 この条例に違反したものは親族と国内に住む同族を処刑する。



上記のような、脳に虫でも湧いてるのではと思えるほどにイカれたモノばかりだ。


だが、先程言ったようにこの条例はイカれた国王がラリってる時にたまたま脳裏に過ぎっただけのものだ。


故にこの条例が発布されるわけがない。


しかし発布された。


何故この条例が発布されたのか発布日から10年経過した今でもわかっていない。


王国の賢者と称えられたカールゾ大臣も

歴代最強の剣聖と称えられたアーサー騎士団長も

慈悲深き賢王と称えられたフーリガット先代国王でさえも

知らないし分からない。


分かっているのは、この条例が正式に発布された物であり、条例が持つ魔力によって国民は絶対に遵守しなければならないという事、それだけだ。


まぁ、このような条例など正直どうでもいい。

内容が内容なだけに発布されて10年の間、コレに引っかかった者がいない。


と言うかこの国の国民は、クスリ好きや、教会の懺悔室窓口に放尿する者、自身の指をミンチにしてコンプレッサー付きのジョウロに入れ、花に謎の液体を散布する者の様な国王や条例以上にクレイジーなヤツばかりなのだ。


大王国ケシアヘモルヒ、イカれた王がイカれた国民を統治するイカれた王国、他国ではその国の名を呼ぶこと自体がタブーであり、魔王やドラゴン、神ですら手を出そうとしない狂域。


人々や魔族は恐怖の念を込めてこう読んだ。


【大狂国】と。



これより開幕するのは心躍る英雄譚ではない。

胸弾むラブストリーでもない。

怨嗟で彩られた復讐劇などもってのほか。


これより開幕するのは狂気の詰まった最高の喜劇。


身元不明の人の肉片と動物の骨片で作る、永遠に完成しない立体型ジグソーパズルが流行したり


昨日すれ違いざまに抜き取られたと思った目玉が、

翌日大道芸人の手の上で羊の踵骨と一緒に舞っていたり


迷い込んだ者は1時間もしないうちに廃人になるような

純粋な狂気が詰め込まれた国の日常だ。








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