第10話  吸血鬼少女(エイミー)からの勧誘

色々な騒動のあとで、相変わらず温泉の川の周りにたむろする患者達を見ながら、いつもの病院風景が戻って来たなと思い始めた頃の事だった。エイミーからお茶のお誘いがあった。

一寸調べものもしたかったので、その誘いに便乗して、エイミーーの固有空間にある図書館に行ってから、いつもの草原のガゼボ(西洋風な東屋)にいってみた。

「いらっしゃい、その後お変わりはなくて。」といつになく優しい態度で出迎えてくれていた。

「えー、所で今日は老師いや医院長は?」

「お誘いはしたけど、用事があるとかで・・・」

「そう言えば、ぼくもこの所すれ違い状態ですね。例のボゾン生命体の件で、ここの病院が特別療養施設に指定されてその対応で、老師も忙しい見たいです。新しい設備の導入やら、申請手続きやらであっちこっち駆け回っている様な状況ですね。」

「ほー、それで・・・」

エイミーの話は この固有空間から離れ 新しい世界を 作ることについてだった。

「わらわの体はすでに失われているので、血の契約により眷属を作ることはできないが、わらわの生命体としてのパターンを引き継ぐ事はできるので、その候補となるであろう生命体を探したいのじゃ。そのためにも、以前に行った異世界の様な世界を作りたい。そのためにはどうすれば良いかを教えてほしいのじゃ。」との依頼内容であったが

「できれば、あなたにも、私のパターンを継いでもらいたい。この固有空間と私の図書館を守るために。」と其れが二番目の依頼でもあった。

当然の事ながら、その依頼には、暫く時間を貰ってから回答する事で納得してもらった。

「この固有空間をそのまま異世界に移し替える事は出来ないいんですか?」

「ふむ、それは、わらわも考えたのじゃが、思念空間をそのまま実空間に移し変えることは出来ずに、一度空間作成プログラムとやらに読み取らせなければならないとの事で、じゃが、わらわの思念情報は異次元の情報のため、変換プロトコルが出来てないとの事なのじゃ。」

「ふーむ、そうなると、誰かが、この思念空間を模写して今ある空間作成プログラムに打ちこまなければならないわけですね。」

「そーじゃ、じゃがわらわは、この世界では実態の無い存在だから、以前に行った異世界の様にわらわのアバターが欲しいのじゃ、この世界でも動ける様にのう。」

「フム、分かりました。その件については、老師と相談して早急に善処します。まあ。他の患者達も勝手にアバターを作って動き回っているので、そう問題は無いでしょう。」とそんな会話のあとで、僕は、固有空間内のエミーの屋敷に案内された。

エイミーの屋敷は、僕が以前に調べた、起源惑星の伝承に有る様な屋敷(串刺し王)とは違い、まるで植物園の様な屋敷だった。おそらく、エイミーのいた世界の植物が絢爛な花を咲かせ、ファンタジックな小さな生き物が花の周りを動いていた。

「これらは、一種の精霊の様な存在で、花たちの世話をしているのじゃ。わらわの世界は、この様な思念体(精霊)が沢山いて、皆の手伝いをしてくれるのじゃ。まあ、此方の世界のAIと小型アンドロイドの様な存在かのう。」そう言いながら、とある花に近づき

「この花は、知恵の花と呼ばれる花で、みなの相談に乗ってくれるのじゃ。」

「まるで、AIですね。」

「ふむ、そうじゃな、何方かと言えば、婆ちゃんの知恵袋かのぅ。」

「通信手段とかは、どうしているんですか?」

「それは、この木がそうじゃ。」と言って少し歩くと、大きな樫の木の様な植物があり

「この木の根は、惑星全土に張り巡らされて、他の場所と連絡が取れる様になっておるのじゃ。今は、この固有空間だけじゃから、他に誰もおらんがのう。」

「ふーん、では移動するときは・・・?」

「わらわの世界では、基本的にそう遠くに移動する事はあまりせんのじゃが、必要な時は、これを使っておる。」と言って見せてもらったのが、大きなタンポポの種の様な乗り物で、頭がふわふわな傘の様な恰好をしていて、四から五人は乗れそうな座席の様なものがあった。

「以前に、見せてもらった、僕の起源惑星の中世の様な町並みは、別な所に在るんですか?」

「ああ、あそこは、この固有空間を再生した時に、足りない情報を此方の世界から貰って補填した場所だ。わらわの世界を忠実に再現しておるのは、この屋敷といつも会う草原位で、後は借り物なんじゃ。」そう言ってから、別の部屋の様な所に案内された。








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医療惑星フォボスでの新米ヒーラーの奮闘記 QCビット @kaji2020a1

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