第6話 ステータス
考えるとだめだった。
徳香の頭の中には光輝のことだけになってしまった。
光輝が告白をしてくれた日のこと。
高校2年生の夏に行った湘南海岸。
何度も一緒に向かえたクリスマス。
20センチほど身長差がある光輝とのキスはいつも光輝が猫背になって、徳香が背伸びしていた。
セピア色のような思い出の洪水が徳香の脳裏によぎる。
スマートフォンを握る手が少し震える。
このカードがあれば、やり直せる。
他の全てのカードを捨ててもいい。
二度と他の人を好きになれなくてもいい。
もう一度光輝が私を好きになってくれたら、もう一度優しいキスをしてくれたらそれでいい。
多分、そういうカードなのだろう。
そんなことを考えているうちに土曜日になり徳香はある決意を実行する。
光輝以外の全てのカードのステータス、私に対する愛情と私からの愛情をまず0にした。
そして、できる限り粘り強く操作して、そのカードの資金力の上限まで調整してカードを編集する。
それが終わったら1枚ずつ消去していった。
何時間かかっただろうか、残りのカードは南野光輝だけになった。
名前:南野光輝
資金力:___
ルックス:___
優しさ:___
私に対する愛情:___
私からの愛情:___
相性:___
手が止まる。
幸せ、それもとびきりのやつ、それが目の前。
資金力:200
ルックス:75
優しさ:80
この3つのステータスを変更したところで、徳香はぼろぼろと泣き出した。
「ごめんね、光輝、幸せになってください」
そう言って、残りの3つのステータスを0にして保存し、保存ができたのを確認してからカードを消去した。
「幸せになってね・・・」
カードコレクター 海乃 果(うみの はて) @uminohate
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