第2話 勇者、地球への逃走成功!

 俺、田中タナカ 勇也ユウヤはチキンでビビりでザ・モブって感じのルックスをしている人間だ。

 歳は17で学校ではギャルゲーのハーレム主人公、そんな奴の隣の席に座って勉強している。普通ならそんな主人公な奴の隣に座るのはゴメンだと思うのだが俺は思わなかった。だってそいつは俺の幼馴染であり親友だからだ。あと、ソイツの何処にそんな女の子を引き付ける魅力があるのかを探りって俺もモテてみたい、なぁ~んて目的もあったりする。

 そんな毎日を過ごしていると俺は突如、勇者として異世界へと招かれてしまったわ。あ、お決まりのクラス転移や転生トラック、女神転生または転移ではなくホンット突然見知らぬ部屋に転移されたのであしからず。欲を言えば綺麗な女神様、一目拝んでみたい気もするけど。

 そんでもって最初は混乱した。だってよ、いきなりお城の大広間みたいな感じの場所に場所が変わるもんだからチキンな俺はビビるしかなかったね。だって瞬時に異世界物の物語が頭を過ったからさ身の危険があるって考えた俺はビビっても悪くないと思う、チキンオタクなめんなぉ。

 その予想道理か悪代官みたいな顔をした王様からやれ俺達は勇者だの魔王を倒して世界を救えなど、色々と御託を述べられついには魔王を倒さないと元の世界に帰れないと来たもんだ。まぁあ、その後王様はマジ尊さMAXなゆるキャラな人だった事は後にでも話そう。

 でもそんな状況の中でも救いはあった、勇者が俺だけじゃなかった事だ。


「汝らに勇者として世界を救ってほしい」

「汝?」


 王様の話を聞きながら辺りを見回すと何とビックリ俺と同じぐらいの年齢の人がオレの他に4人いるじゃぁ~ねぇ~ですか。1人目―――


「なるほど……勇者……か……」


 名前は神道シンドウ 達也タツヤ、俺の親友であるアイツの如く主人公っぽいルックスしたイケメン……馬に蹴られてs。

 性格はまぁ~熱血系主人公って感じの奴だ。


「ってか勇者ってカッコよくない!?」


 少々バカであるが……


 二人目はRPGってより格ゲーに出てきそうなゴツイルックスをしたマッチョメンである剛大自ゴウダイジ ゴオ

 筋肉を愛し筋肉を鍛え上げる事を生きがいにしてるやつだ……いつも思うがお前だけ作画違くね? 


「俺の鋼の筋肉なら魔王ぐらい朝飯前だ!」


 三人目はザ・ツンデレヒロインって感じのツインテール、佐々倉ササクラ 美鈴ミレイ。……絶対イケメンのヒロイン枠か何かだ、オタクな俺には分かるんだぁ。


「魔王うんぬんは分かったからここは一体どこなのよ!」


 それには同意見である。


 そして四人目は……何と言いますか‥‥ロリ?枠のアナスタシア・A・坂本……まさかのハーフさんある。背が低くて一際異才を放ってるハーフ系女子ってか幼女……あれか? ロリ枠って奴か? ギャルゲーのヒロイン枠でも郷が深すぎね?


「すいません、今ロリって考えませんでしたか?」

「いえ何も……」

「そうですか……ならいいのですけど」


 こえぇ~!このジト目でロリって考えた事追求してきやがった、マジでこえぇよ。


「それと背丈で誤解されるのであらかじめ言っておきますが私、16歳の高校生ですから」


 ロリはロリではなく年下の女の子であった…だと…!?

 まぁ結局何が言いたいかって言うとこの四人がいた事により俺一人勇者って状況は回避できたことだ。同時にこうも思った。

 

 アレ? 俺ってば異世界物の物語に当てはめると下剋上物の主人公枠、もしくは主人公を庇って死ぬ後にファンが若干出来る枠のやられ役じゃね?ってね。

 どちらの選択もチキンでビビりな俺には辛すぎる。だから―――


「逃げ……なければ……」


 これがシンプルに最初に出た考えだった。だって下克上枠だった場合裏切られて瀕死の重傷、またはそれに似たような危険な状況へとなるわけだし。やられ役に関しては俺死んでんじゃん! ってか謎の筋肉枠なんだよ、お前だけ出てくる作品違ってるよ! そんなこったで俺を合わせた5人で魔王退治をしてほしいって王様頼み込んでるけど俺のここは既に逃走の選択へと傾いていた。だってよ!モブなオレがいなくたって残った4人でも魔王退治は十分でしょう!


「頑張って皆で魔王を倒そう!」


 今すぐにでも逃げたかったのだけどそれではダメだ。まずはこの世界で生き残る術を身に付けないと、露頭に迷うのは異世界モノの定番でもあるからね。

 そして俺は他の勇者と共に逃げずに他の勇者との絆を作りながら様々な事を学んだ。

 時に武術や基礎訓練。


「おぉ!俺の適正は剣か! これは燃えるなぁ!」

「俺は大盾……使いこなすには筋肉をさらに鍛えなくてわ」

「私はこん棒?……あ、コレ杖なのね」

「私はメイス……お、重い」

「剣…だと!? まさかのか、被り」

「稽古相手ゲット!」

「体力バカである達也が稽古相手だなんて……不幸だ!」


 時に魔法。


「俺に魔法は向いてないのかよ、ショックだ」

「ファンタジーの定番って言えば魔法なのにな‥‥やはり筋肉だ! 筋肉が全てを解決する!」

「アホか! 筋肉が全てってだったら世界中筋肉だらけになるわ!あと私は回復魔法以外全部に適性アリよ」

「いいなぁ美鈴、俺も魔法使ってみたかったなぁ」

「あ、私はその回復魔法が適正でしたよ!」

「適正……俺も無しかよ!」

「ドンマイ勇也!」

「ドンマイ、俺と一緒に筋肉を鍛えようぜ」

「仲間の優しさが骨身に染みる……後筋肉は却下で」


 そして学問など様々な事を学んだ。その途中魔王幹部とか名乗る変態に出くわしたので逃げ回ったり、他国の姫を名乗る不審者を簀巻きにして担いで拘束すると何故か憲兵的な者達から身に覚えのない罪をきせられ逃げ回ったり、なんか適当に激変する周辺の状況に身を任せてたら変な宗教の神になってたり、訓練用のダンジョン内で魔物から逃げ回ってたら偶然古代の遺産を拾ったと色々とあったりしながらもついに、俺達は魔王の討伐に成功したのだった。‥‥だった‥‥‥‥ん? まてよ……


「……ってか、なんで俺まで討伐に参加してんだ?」


 俺は当初の目的と今の状況を照らし合わせて考えを巡らせる。

 おかしい、当初は他の勇者メンバー達とは絆なんて結ばずにサヨナラバイバイしていたはずなのに………なんで命をかけてまで魔王討伐に加担してんだ、俺は?


「それにしても勇也、お前の一撃はスゲェよな」


 バシバシと肩を叩きながら俺を褒めたたえる達也。その顔は完全に目を輝かせる子供だけど‥‥‥‥いや、凄いのは俺じゃなくてこの剣だから。


「それにあの登場のやり方! ヒーローは遅れてやって来るって感じでかっこよかったぜ!」

「確かに、事前の打ち合わせも無くよくあんな不意打ちかませたわよね……」

【私のマスターは完璧デス!】


 偶然です、偶々隠れていた場所が王座の後ろだっただけであって不意打ちを狙う為でもありません。それに聖剣ブッパしたのだって聖剣がどうしてもブッパしたいを抑えきれずに俺を操ってやったのであって俺の意志じゃないし……


「そぉーです! 私の先輩は凄いのです!」


 エッヘンと胸の無い胸を張るアナスタシア……無理すんな、てめぇはロリ枠だから胸無くても問題ない。あと私のってなんだよ! お前、亡国のお姫様騒動があった辺りから俺に馴れ馴れしくないか!?


「先輩今ロリって考えませんでしたか?」


 毎度思うけどこの子はエスパーかな?


 そうこうしていると今俺達のいる場所に変化が見られた。具体的に言えば魔王のいた辺りにだが。


「何……あれ……」


 空間と言うのだろうか、突如としてガラスの様にひび割れそしての中が見えない暗い穴のようなモノが出現する。それに対して勇者達は魔王の攻撃か何かかと警戒するけれど俺は違った‥‥だってその穴の先が見えているのだから。

 あれは俺の部屋?

 その穴の中に広がる光景は元の世界にある俺の家の部屋そのモノ。つまりは元の世界への出口?


「!」


 この時俺の脳内に電撃走る。最初の頃は何度も頑張って逃げ出そうとしてたんだけども、逃げた先が問題だらけな場所だったり問題が飛び込んで来たりと色々とトラブルばかりだったためか? それとも仲間を見捨てられないとかいう情の為か? ……分からない、分からないがこれだけは言える今がチャンスだと。


「達也、達也」

「ん? 何だ?」


 俺は達也をこちらへと呼び寄せ―――


「ほい」

「な!?」


 聖剣を無理矢理押し付けると俺は穴へと走り出す。


「ちょ、待てよ!」

「この状況でいつものですか先輩!?」

「勇也の逃走癖ここで発揮する!?」


 後ろで何か言っているみたいだけど俺は迷わずその穴へと飛び込んだのだった。


「俺は、自由だぁ!」


 こうして俺は異世界から元の世界へと帰還した。しかし、この時の俺は知りもしなかった。元の世界でも裏では異世界と同じような事になっている事に、そしてそれに関係するトラブルに巻き込まれる事を……

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逃げる勇者は道具使い 錆びたがらくたさん @sasorisu

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