3
五年の歳月が過ぎました。
内乱が続いた国は、新国王が定まり復興を始めたとの連絡が来ました。
まだまだ、反乱分子はいるそうですが、新国王の体勢は盤石であり、反乱は起こせないみたいです。
新国王の下に、有能な人材が多く集まり、反乱分子をも吸収して行っているみたいです。
また、他国にも認められて、国家として動き始めました。
各地に散っていた、魔道具技師も呼び戻されました。
彼等の待遇も改善されて、魔道具の認識も改められたそうです。
その国は、後に魔道具の先進国となることになります。魔道具を他国に輸出し始めてから、大きな利益を得ることになるのです。今はまだ、誰もその事に気が付いていませんが。
そして、王を選定する
盗み出した、冒険者は亡くなり、次々に人の手を渡ったそうです。
ですが、誰も持ち切れず、最終的に王城の門近くに捨てられていた……。
魔道具技師達は、泣きながら剣を拾い、鞘に納めました。
──コンコン
「開いていますよ。ようこそいらっしゃいました」
一人の青年が入って来ました。剣を携えています。
でも、外見からは騎士には見えませんでした。
「え~と。ここは、占い屋で合っていますか? 私は初めて来るのですけど、遺言により占い屋を訪ねるように言われて、ここに来ました」
「はい! 占い屋カンロにようこそおいでくださいました。それは、王を選定する剣ですね」
店の主人は、頭を下げて一礼した。
訪ねて来た青年は、剣の事を言い当てられて、驚きを隠せません。
それでも、視線が合うと、二人は笑い合いました。
「その節は、本当にお世話になりました。おかげ様で国も安定を取り戻し、発展して行くと思います。祖父に代わりご挨拶に来ました」
「あの魔道具技師の方には、気の毒な話になってしまいましたね。それでも、先王の意思は引き継げたと思います。新国王には、そういう人物を選ばせて貰いました」
お客様と呼ばれた人物は、これ以上ないほどの笑顔で答えました。
「まさか、あのような人物がいたとは、誰も思いつきませんでした。そして、新国王様です。人の才能を見抜き、そして誰の話にも耳を傾ける。見た目は悪いかもしれませんが、良い王様になると思います。皆認めています」
「まあ、そうですよね……。あの組み合わせでなければ、誰も王位に推薦などしないでしょうね……」
店の主人は、苦笑いです。初めて、笑顔が崩れました。
「祖父も驚いていました。国政にまったく関係のない人物を紹介されたので、始めは怒っていたそうです。それでも、話をして行くうちに打ち解けて、最終的には、信頼のおける友になったと言っていました」
店の主人は、ポリポリと頬を掻きます。
「国政ですか……。国政は、有能な人材が行えば良いのですよ。お客様の国の問題は、国政ではなかったいう話です」
お客様と呼ばれた人物が、笑い出しました。
「っぷ。あはは。終わったので分かります。本当にそうですよね。
結果論かもしれませんが、迷走していたとしか言えなくなりました」
「今回は、ちょっと強引だったかもしれません。ですが、お爺様と先王の意思を通したく思い、あの方をご紹介いたしました。経緯は別として、結果は良かったと思います」
「……あなたは、すごい力を持っているのですね。
私の知る限りでは、『運命操作魔法』が近いのですが。それも違う気がします」
店の主人は、首を横に振ります。
「私は占い師です。占いというのはですね。未来を変えることが出来ます。人々を幸せに導くためのほんのちょっとした力でしかありませんけど。予知や予見は、占いと違い未来を変えられません。悪い未来を知ることが出来ても避けられないのです」
「……あなたの占いは何と言う種類ですか?」
店の主人は、笑顔で答えます。
「私の占いは、易学と呼ばれます。私は易者と呼ばれています。卜聖とも。過去を知り、千里を見渡し、未来を変えることを生業としております。なのでお爺様やお客様がこの店に来られたことも、私の話を聞いてくださったことも、ご自身で切り開いた運命ということになります」
お客様と呼ばれた人物は、満面の笑みです。
「正しい物を正しい位置に……。祖父は、この剣をあたなに渡して欲しいと遺言を残しました。それで、私が預かり持って来たのですが、受け取って貰えますか?」
店の主人は、満面の笑みです。そして、頭を下げて両手で剣を受け取りました。
「……そうですか。お爺様は、そういう選択をされたのですね。
この剣は、必要な人物がこの店においでになったら、お渡しする事をお約束致します。
適任者が見つかるまでは、私が保管することをお約束致します」
「祖父は、幸せそうな笑顔で逝ってくれました。お礼を言います。ありがとうございました」
「またのおこしををお待ちしております」
お客様と呼ばれた青年が、一礼して店を出ました。
王を選定する剣と占い屋 信仙夜祭 @tomi1070
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