Oregano
花薄荷《輝き》
「あ!待ってよ!」
都内のやつれたアパートの一部屋。
若い女と若い男の争う声が聞こえる。
「るっせえなあ!」
パシンっと殴る音が響く。
「さっさと金用意しとけよ」
男はそう言い残して部屋を出て行った。
女は男が出て行った方を見つめて崩れ落ちる。
「…もう、無理だよ」
女の流した涙が床に落ちた。
━━━━━━━━━━━━━━━
「はいっ!次のご注文だよー」
太陽が昇り麗らかな日が差す日曜日の昼を過ぎた頃、少女───
それに反応するのはリビングに集まっていた【花屋】の
「やったー!今度は誰?どんな人?」
「はしゃがないで優香」
嬉しそうに駆け寄ってくる
「ふっふっふ。慌てるでない。今回のお客様は
ダメンズに捕まった挙句、がっぽり貢がされて、金を絞り取られた哀れな女子大生
でっす!」
「はい」
「はい聖華君」
「自業自得なんじゃないのか、それ」
みんなは、桜がちょけているのはいつものことだが、それよりも客が哀れすぎて引いている。
どう言葉を言うべきかわからずみんなが困惑している中で聖華は一人声を出した。
そんな聖華の問いに対し桜はチッチッチと人差し指を口の前で左右に揺らす。
「違うよ。このお客様の哀れさはこんなもんじゃない。
ダメンズに引っかかったのは少なくとも今回が初めてじゃあなさそうだ。
簡単に調べた限りでも高校の時からは彼氏は全部ダメンズだねェ。」
話ながら桜はタブレットを見ている。多分客のSNSを見ているのだろう。
「あとはーこれ見て」
タブレットを全員が見れるように反対向きにする。画面には一枚の写真。
「友達との写真か?」
「そう。でもよーく見て?可笑しくない?」
そう言われて全員が写真を凝視する。
写真には女子大生が3人。よくある学生のSNSという感じだ。
「あ!右端の人だけ長袖着てる!」
「ほんとだ」
「どうしてでしょう?」
優香が指摘した通り1人だけ長袖を着ている人がいる。他の2人は半袖なのに。
「この写真8月なんだよねー」
「8月の野外で長袖はキツイな」
「日焼けしたくない、とか?」
「それなら帽子を被っていないのはどうしてでしょう?」
「…腕を隠したい理由がある」
「そー考えるのが自然だよねー」
ケラケラ笑う桜の目は笑っていない。
「この客、DV受けてるのか」
聖華の一言に空気が張り詰める。
「…確定はしてないけど」
桜のその言葉を聞いて全員が事実だと確信する。桜がああ言うということは99.9%事実だと全員が知っている。しかし、情報屋という仕事上、桜は0.1%でも不確定な情報だと話すのを渋る。情報屋のプライドか。
「じゃあまずはいつも通り、お客様の情報を集めますかっ。ボス、まず何から?」
「ボス言うな。ったく…
今回の注文は、お客様のダメンズからの救出!
報酬は女の敵を根絶やしにすること!かなり貧乏そうだから金は取れないよね!
皇輝はお客様の大学と友人関係を」
「了解、ボス」
皇輝に煽られて指示を出し始めた桜。
「優香はお客様はどうやら読モみたいだから載ってる雑誌を探して」
「はーい!」
「優希は聖華と一緒にお客様の住んでるとこを調査」
「お任せください」
「聖華は優希のサポートをしつつ彼氏を調べて」
「了解」
「私はお客様のSNSを中心に全員のサポート」
桜が立ち上がると共に全員立ち上がる。
「よしっ!【花屋】開店!!」
花屋 桜ハナビ @hanabi_apple
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