プロローグ ~サイモン王子が帰国して一か月後~

プロローグ


※シーズン2は、サイモン王子が白の国へ帰国して1ヶ月後からの始まりです。


******緑の国 サイモン王子帰国1か月後 


[1]ー《緑の国》 城の庭


〈晴天のもと、庭の木陰で白の国の従者レックスがゆっくり歩く練習をしている。その隣りでミリアム王子が、リハビリに勤しむレックスを一生懸命に応援している。〉


[2]ー城 書架室へ向かう廊下


〈ポリーがお菓子とお茶をのせたトレイを持ってやって来る。〉



[3]ー城 書架室


〈ドアの前で、護衛に会釈して、そっと中をのぞくポリー。一人で勉強しているミレーネ姫。今は失ってしまったが、以前に首飾りがあった胸元の辺りに無意識に手を持っていくミレーネ姫の姿。〉


ポリー「〈部屋に入りながら〉今でも何かを覚える時、首飾りがあった辺りを触るのね」


ミレーネ「ポリー!驚かせないで!この仕草のこと?首飾りがなくても、つい、まだしてしまうのよ」


ミレーネ(心の声)「もう以前のようには多くの情報を一度に記憶することは出来なくなってしまったけれど……」


ポリー「目の訓練は順調なの?」


ミレーネ「ええ。頑張っている甲斐があって、医官や医女も驚くほど成果が出ていますのよ」


ポリー「すごいわ、ミレーネ!ご褒美にこれはどう?〈お茶☕と焼き菓子がのったトレイを見せ〉厨房に寄ったら、ちょうど焼き菓子が出来上がる時間にぴったりだったから」


ミレーネ「まあ、ポリー、そろそろ一度、休憩したいと思っていたところよ。嬉しいわ」


〈ポリーは窓の所に行き、庭に向かって声を掛ける。〉


ポリー「ミリアム王子、レックスさん、一休みしませんか?お茶とお菓子をどうぞ!」


〈ミレーネ姫のそばに戻ってきたポリー。〉


ポリー「レックスさんはすっかりミリアムのいい遊び相手よね。でも、傷もまだ塞がったばかりなのに、一刻も早く白の国へ帰りたがっていると聞いたわ。気があせって仕方ないのね」


ミレーネ「そうなの。白の国の様子が心配らしくて」


ポリー「その後、サイモン王子からは?」


ミレーネ「〈首を振り〉無事に白の国へ着き、女王様の容態は峠を越えたから心配ないという知らせが一度来たでしょう。その後は何も……。あれからもう随分経ってしまったわ。とにかく、レックスが向こうへ着いたら何か分かるはずよ」


ポリー「副隊長やノエルは?」


ミレーネ「二人からも連絡がないの。そのことも気がかりで。誰か白の国へ様子を見に行かせた方が良いかどうか、先日、お父様とも相談してみたわ。でも、レックスが近々帰る話があるから、結局その後まで待つことになったのよ」


ポリー「付き添いで行った護衛まで帰って来ないなんて……。白の国で皆、一体どうしたんだろう?何か、面倒なことが起きているとしたら?内乱とか?」


ミレーネ「緊急事態にでもなれば、狼煙のろしや爆音で国境の村が気づくはずなのに、そういうこともなく不思議ですわよね。ただ全く様子が分からない状態ですもの」


〈扉を開けて入ってくるミリアム王子と白の国の従者レックス。〉


ミリアム「わあ、いい匂い!」


ミレーネ「焼き立てのお菓子をポリーが持って来てくれたの」


ポリー「はい、はい、二人とも、まず手を洗ってきて頂戴」


従者レックス「ミリアム様、行きましょう」


ミリアム「はーい!」


〈ミリアム王子の後からゆっくり歩いて出て行くレックス。〉


ミレーネ「まだやっと歩けるようになったばかりで、レックスは本当に大丈夫かしら?」


ポリー「それにしてもサイモン王子は、すぐミレーネに会いに戻ってくると思っていたのに。何の音沙汰もないのが納得いかないわ!本当に男の人の気持ちなんて分からないわね!」


〈笑顔を浮かべながらも寂しげな表情のミレーネ姫。〉



※プロローグ 終わり



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