第10話 舞い降りた天使 #3
第10話 続き #3
[15]ー《緑の国》 城の庭 離れの客室のそば 続き
〈近衛副隊長ウォーレスと美化班夏組新入りノエルが陰で隠れて話している。そのまた、背後の木の陰でこっそり立ち聞きしている武官アリ。〉
近衛副隊長ウォーレス「しっ!その名前を口にしてはならぬ。素性がバレれば城からすぐに追放されるぞ」
ノエル「怖いのね。自分は何も知らん顔で今日まで生きてきたのでしょう?だから頼みに来たの。過去を明るみに出されたくなければ言う通りにして」
〈滑稽な格好で木にしがみついている武官アリ。〉
武官アリ(心の声)「これは・・・面白い秘密を
[16]ー城 ミリアム王子の部屋
〈厨房班夏組新入りマーシーがソファで目を覚ます。隣りで妹モカはまだ眠っている。ヒソヒソ話しているポリーとミリアム王子。ミレーネ姫もまだミリアム王子のベッドで寝ている。〉
マーシー「ポリー様、すみません、気が付かなくて。お早うございます」
〈ポリーはマーシーをそっと手で制し、話の続きをミリアム王子に告げる。〉
ポリー「この人は天使と一緒に来た使いの者。〈ミリアム王子に分からないよう、マーシーにウィンクして〉この可愛い天使はミリアムの所にそっと遊びに来たの。お願いを聞いてくれるんだって。でも、天使のことを誰かに話したら、すぐ帰ってしまうから、お願いも聞いてもらえないよ。誰にも言わないって約束出来る?」
ミリアム「うん!僕、誰にも言わないよ」
ポリー「それから、この天使ちゃんは目が見えないの。ミレーネのように」
ミリアム「そうなの?」
ポリー「だから、起きたら、優しく声をかけて遊んであげようね」
〈隣りで眠っているモカの髪を撫でながら話を聞いているマーシー。眠っていたミレーネも途中から目を覚まし、まだ皆には背を向けたまま、ベッドの中で微笑む姿。〉
[17]ー城 王の会議室の前 廊下
〈大臣や重臣達が並んでいる。外事大臣と近衛隊長が隣同士で立っている。〉
外事大臣「〈横にいる近衛隊長に小声で〉まだ見つからぬのか」
近衛隊長「はい、どちらも」
外事大臣「明るくなっても、すぐ見つからぬとは」
民政大臣「〈その隣りから〉仮に刺客が城内に潜んでいるとして、明るくなったら、余計に姿を現さぬでしょう」
外事大臣「隅から隅までつついて探し出してやる!」
〈そこへ王が侍従と護衛に付き添われ歩いてくる。〉
一同「〈深々と頭を下げて〉王様、申し訳ございません」
王様「中で詳しく聞こう」
〈王が部屋に入り、一同がその後に続く。〉
[18]ー城 ジュリアスの部屋
〈朝の身支度をしながら、昨晩のことを思い返しているジュリアス。〉
【ジュリアスの回想: 深夜 城の庭 真っ暗闇の中で刺客と戦った近衛副隊長ウォーレスとポリー。そして、その中で唯一、ミレーネ姫の持つ首飾りの石が眩い光を放ち、戦う3人を照らしていた。】
ジュリアス(心の声)「城が突然、闇に包まれたことは偶然に起こったことじゃない。その闇の中で城、姫、そして僕らを守るために輝いた光。姫が疲れ切るほど、首飾りの力は強く激しかった。あの光がなければ誰も動けなかったのだ。誰も?いや・・真っ暗闇にも関わらず、あの刺客だけは動いていた」
【ジュリアスの回想: 戦い敗れたとみるや、暗闇をものともせず、さっさと闇に紛れて逃げ去った刺客の姿。】
ジュリアス(心の声)「あいつが闇を呼んだのか?そんな力を持つ者が何の目的で侵入したのか?」
[19]ー城 王の会議室
王様「では、城に連れて来ていた毒見役の子どもが行方不明のままなのか?こうなってしまったら、水面下でことを進めるなどと言っていては
近衛隊長「しかし、王様、恐れながら、あの子どもはやっと見つけた毒見役でございます。また、すぐ見つかるとは限りません。予定通り内密に探し、見つかり次第、毒見をさせた方が宜しいかと」
外事大臣「私も同意見です。予定変更は姫様の治療に差し障りがあると思われます。どうぞ、お考え直しを」
王様「むろん、姫の治療は大切だが、城に連れてきた子どもを城の護衛が守りきることが出来ず、さらに近衛隊が捜せなかったとなっては、民の間に不信感が生まれかねない。今は毒見より無事発見が先だ。民政大臣、薬の投薬は延期すると薬師に伝えよ」
民政大臣「かしこまりました」
[20]ー城 王の会議室の前 廊下
〈扉の前に立っている近衛副隊長ウォーレス。〉
[21]ー【近衛副隊長ウォーレスの回想: 先ほど城の庭の木陰 】
近衛副隊長ウォーレス『ノエル、どんな薬か分からないぞ。下手をすれば命を落とすことになる』
美化班新入りノエル『命なんて何も惜しくない。ただ姉さんの潔白を明かしたいだけ!いい?今日中に伝えなかったら、その時は覚悟して。これは本気の脅しよ』
[22]ー城 王の会議室の前 廊下 続き
〈ふうーっと息を吐く近衛副隊長ウォーレス。扉をノックする。〉
[23]ー城 王の会議室
〈近衛副隊長ウォーレスが入り、頭を下げる。皆が注目する。〉
王様「おお、副隊長。話は聞いたぞ。昨夜は姫を守るため、見事な働きをしてくれたそうだな」
近衛副隊長ウォーレス「恐れ入ります」
王様「どうした?何か見つかったか?」
近衛副隊長ウォーレス「いえ、申し訳ございません。捜索は進行中です。ただ・・・」
王様「ただ?」
近衛副隊長ウォーレス「〈再度、一息ついて〉毒見役の件で急ぎご相談したいことがございます」
[24]ー城の中 あちらこちらの部屋
〈美化班が掃除をしている。ノエルも中にいる。皆、口々に昨夜の騒ぎの話をし、棚や物入れ、ベッドの下などを隅々掃除しながら、誰かいないか確認している。〉
[25]ー城 武法所
〈近衛隊と武官が全員集められている。ジュリアスも並んで立っている。〉
近衛隊長「もう、すでに知っている者もあろうが、城内に刺客が忍び込んだ。まだ、どこかに潜んでいる可能性がある。また、同じ頃、離れの客室から子どもが一人いなくなった」
〈少しざわつく集合させられた面々。刺客のことは知っていても子どものことは初めて知らされた者も多い。〉
ジュリアス(心の声)「ついに子どものことまでも
近衛隊長「薬師に目を治してもらうために来ていた、目の見えない3歳の女の子だ。この二人を一刻も早く探すようにとの王命である」
[26]ー城 薬師の客室
〈ドアを開ける
民政大臣「ゴーシャ殿、申し訳ございません。諸事情がありまして、投薬日が延期になりました」
民政大臣「安堵いたしました。〈後ろに控えていた美化班を指し〉では、今から、この者達がお部屋の掃除に入らせて頂きます。どうぞ、その間、あちらでお茶でもいかがですか。サイモン王子様にもお声を掛けさせて頂きます」
〈不敵な笑みを浮かべている
※第10話 終わり
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