第8話 光と闇の対決 #2
第8話 続き #2
[7]ー続き 城の庭 大木の陰
〈ケインがモカを入れた布袋を抱え、潜んでいる。近衛が去ったことを確認して城の塀に沿った植え込みの後ろに移動する。その側にも別の大木があり、太い木の枝が塀の向こうの道の上にまで伸びている。その木に登るケイン。〉
剣士ケイン「〈木の上から道の左右を確認して〉誰もいないな」
[8]ー城の外の塀沿いの道
〈崖の階段を上がって、森の中から、城の前の道に出ようとするポリーと厨房班新入り夏組マーシー。〉
マーシー「ふう~」
ポリー「もうすぐ、そこよ」
〈塀沿いの道に出た時、目の前にある、城の庭の大木の方から、塀の上にまず大きな袋の影が現れ、次に塀に飛び移ろうとしている人影を見つける二人。〉
マーシー「きゃあ〜〜、あれは何?」
ポリー「ど、泥棒よ!誰か、誰か来て!!」
〈道で大声で叫ぶ二人。剣士ケインはいったん、塀の上に飛び移るのを止め、布袋と共に大木の繁った葉の中に身を隠す。〉
剣士ケイン(心の声)「見つかったか。まさか、こんな時間に人が森から出て来るとは。しかし、あの声は女二人。二人だけなら、瞬時に倒せるな。近衛隊が来る前に片付けてしまおう」
〈再度、塀の上に飛び移ろうと動こうとするが、大木がまるで生き物のように、その枝で布袋と袋の紐を
剣士ケイン「厄介なことになった……」
[9]ー城 薬師ゴーシャの客室 同時間
〈扉を開け、廊下にいる護衛に声を掛ける。〉
護衛「えっ、どこですか?〈入って来る〉」
護衛「〈駆け寄り支えて〉大丈夫ですか?」
〈支えられた体勢で、顔のすぐ近くにある護衛の目を覗き込む
[10]ー情景
〈呪文が流れ出すと、立ちどころに月が雲に隠れ、城全体が黒いもやの様なもので
[11]ー城 書架室 同時間
ジュリアス「それに、薬師はあの薬は作り直すものだと言っていたし、やはり実際のものとは違うことを、よく検討しなければ――」
〈ミレーネ姫の耳が、遠くから聞こえたポリーとマーシーの叫び声を捉える。〉
ミレーネ「〈ジュリアスの言葉を遮って〉しっ!」
ジュリアス「えっ!何?ミレーネ、何か聞こえたのか?」
ミレーネ「大変だわ。ポリーの悲鳴よ!助けに行かなくては!」
ジュリアス「何だって!〈立ち上がる〉」
ミレーネ「声の方角は外の正門の方よ。急ぎましょう」
〈ミレーネ姫とジュリアスは部屋を出て廊下を歩き出す。すると、いきなり辺りが闇に包まれ真っ暗になりジュリアスの足が止まる。〉
ジュリアス「わっ、何だ!」
ミレーネ「ジュリアス、どうしたの?」
〈真っ暗闇で、すぐ側にいるミレーネ姫の姿さえジュリアスには何も見えなくなってしまった。失明しているミレーネ姫には何が起こったか分からない。〉
ジュリアス「〈緊迫した声で〉今、お城の灯りが全て消えて真っ暗になった。外からの月の光もない。城が闇に沈んでしまったかのようだ。今まで、こんなことは経験したことがないよ。どうなっているんだ?」
ミレーネ「なぜ、そんなことが?ジュリアス、私はここよ。手を伸ばして見て。そう、私の手につかまって。私はどんな暗闇の中でも動けるわ。このまま行きましょう!〈首飾りの石を、もう一方の手でぐっと握る〉」
[12]ー城の外 塀に沿った道 同時間
〈城からの灯りや月明かりが消えて、真っ暗闇の道にいるポリーとマーシー。〉
ポリー「マーシー、どこ?」
マーシー「ここです、ポリー様。〈お互い、声のする方にソロソロと手を伸ばし触れることが出来、安堵して抱き合う。〉」
ポリー「いったい、何が起こっているの?」
マーシー「〈心配そうに〉分かりません。さっきの泥棒は?」
ポリー「この真っ暗闇ではどうすることも出来ないわ。とにかく塀伝いに正門まで行きましょう。すぐそこだから。しっかり手をつないで行くわよ!」
[13]ー城の庭 大木の枝の上
剣士ケイン「〈真っ暗闇になった周りを見て〉ああ、グレラント様が時間を稼いで下さった!よし、皆、早く眠りに落ちろ。今のうちに、子どもを連れ出さねば!〈木の上でゴソゴソと動く〉」
[14]ー城 正門
〈鉄格子の門は閉まったまま。鉄柵の間から中を覗くポリーとマーシー。もちろん真っ暗闇で何も見えない。〉
ポリー「門番さん、返事をして!誰か!」
マーシー「人の動く気配すらないですね。どうしたのでしょう?気味が悪過ぎます……」
ポリー「閉まったままでは私達は入れないわ。どうしたらいいの?お願い!誰か来て!〈叫ぶ〉」
[15]ー城 本館の外
〈手をつなぎ、走り出て来たミレーネ姫とジュリアス。〉
ミレーネ「またポリーだわ。確かに正門の方よ」
ジュリアス「今のは自分にも聞こえた!必死で助けを求めている声だ!」
ミレーネ「ああ、どうしよう。ポリーに何かあったら!〈首飾りの石をさらに強く握りしめて〉助けて下さい、どうかお力を!」
〈それまでも姫の手の中で弱い光を放っていた首飾りの石が、急遽、とてつもない明るさの光を放ち出す。握っているミレーネ姫の指の間から湧き上がるように溢れる光に驚き、立ち止まるジュリアス。その光はミレーネ姫を包み込み、
ジュリアス「ミレーネ!光だ!石が信じられないぐらい明るい光を放っている!
ああ、闇に光が戻った。これで自分にも足元が見える。手を離しますよ」
ミレーネ「ええ、大丈夫なのですね?さあ、正門へ」
〈走ろうとするミレーネ姫とジュリアス。そこへ近衛副隊長ウォーレスがフラフラと何とかやって来る。〉
近衛副隊長ウォーレス「姫様!ジュリアス様!ご無事でいらっしゃいましたか!」
ミレーネ「まあ、その声はウォーレス」
ジュリアス「良かった!ウォーレス殿も大丈夫ですか」
近衛副隊長ウォーレス「巡回中、急に闇に包まれ、身動きが取れなかったのです。様子を
ジュリアス「ポリーが正門の方で助けを求めているようです」
近衛副隊長ウォーレス「えっ!ポリー様が?」
ミレーネ「ウォーレスが一緒なら心強いわ」
〈ミレーネ姫の首飾りの石が放つ光と共に、正門へ走る三人。〉
[16]ー城の正門 外の道
〈鉄柵を掴んだまま、眠りそうになっているポリーとマーシー。ポリーが半分寝ぼけた目で、闇にただ一つ浮かぶ、まぶしいほどの光に気づく。〉
ポリー「〈光をじっと見つめ、だんだん覚醒して〉マーシー、起きて!ほら、見て!ミレーネ姫とジュリアス、それに近衛副隊長だわ。〈手を大きく振り叫んで〉ここよ!!」
〈すぐそこまで近づいて来た三人。〉
マーシー「〈同じく半分寝ぼけたように、ぼーっとしたまま、光のオーラを
#3へ続く
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