届けない。吐息も輝く貴方には

 ぽかぽかと。誰もが微睡む午後の教室。

 鮮やかな青い窓の外から、優しい風が流れ込み、ベージュ色したカーテンを控えめがちに膨らます。前髪がそよいだその拍子、窓際の彼が視界に入った。

 柔らかい癖毛の下の長い睫毛。少し紅い頬は淡い産毛に覆われていて、黄金色に輝いていた。大きな瞳が真剣な様子でノートと黒板を往復する。じっと揺れずに、まっすぐに。私の視線はものともせずに。午後の陽気が彼を照らす。


 ただそれだけ。それだけのことで、彼の光は私を照らす。私の胸は熱を生み、指の先までゆっくり届く。


 ……あぁ。この溢れる想いをどうしようか。


 隠しきれない胸の内。友だちに洩らして、楽になろうか。

 ……この愛を吐き捨てるというの?

 言葉にすれば、壊れそうで。形にできない穏やかな熱。流してしまえば、影の水。


 もしくは、彼にぶつけてしまおうか。

 もて余した厚き重い。それはきっと、繊細な彼の心を押し潰す。可憐な彼は無闇に燃えて、私の熱は冷えて溶ける。白いチョークの粉の煙に。

 見えない煙の香りが漂う。哀しい私は瞳を閉じて、気だるい声に身を委ねる。子守唄のようにつらつらと。母国の歴史は繭のように。

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