長いトンネルにいます。

「おーい」


 声をあげると、返事がしました。


「ここにいるよ」


 声はひとつじゃなくて。


「あたしも」

「俺も」

「なんだ、たくさん居るじゃないか」


 真っ暗な闇が温かいような気がしました。


「何にも見えない」


 ずっと先には光が見えて。

 私たちはただただ前へと進みます。


「暖かい日射しが恋しい」

「鮮やかな青空を見たい」


 口々に愚痴をこぼしながら、仲間の声を励みに進みます。


「明けない夜はないし、トンネルは抜けることができるから」


 だけど、なかなか外には出られません。

 歩けど歩けど光は遠く、私はだんだん不安になってきました。



 ふと、仲間の声がひとつ少なくなりました。


 私は立ち止まって、耳を澄まします。


 ポツンポツン……。滴る水が響いています。

 コツコツコツ……。靴の音が反響します。


 ……その奥で、息を吐き出す掠れた音。

 日射しの恋しい仲間の誰かが日なたぼっこをしてるのでしょう。

 青空を見たい仲間の誰かが空を眺めているのでしょう。


 私の周りは真っ暗なのに。


 コツコツコツと。私は歩みを進めます。

 ポツンポツンと。水滴の音を聴きながら。


 ひとりぼっちになろうとも。

 光は先で、ここはトンネル。


「ここにいるよ」


 誰もいない真っ暗な闇。

 みんなが迷う真っ黒な穴。


 夢から醒めるか、そこから出るか。


「おーい、おーい」


 どっちにしても、私は私。

 だから、あなたもまたおいで。

 暗いここも、温かいから。

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