第77話 姉の受難 4

 私が部屋に戻ると玲奈が椅子に座って待っていた。

 玲奈はスマホを触っており、何をしているかわからないが画面を真剣になまなざしで見ており、両手を使ってポチポチと操作をしている。



「おまたせ、玲奈」


「うん」


「スマホを見てたけど、何をしていたの?」


「ゲーム。これを見て」


「これは!? 昔私が玲奈に進めたゲームじゃない!!」



 玲奈が私に見せた画面は、スマホ向けに展開されているアイドルを育成するゲームである。

 このゲームは近江君に似ている男の子が出てくるため、私が今最もはまっているゲームだ。

 玲奈のスマホのホーム画面には、格好いい男の子が立っている。この男の子はこのゲームでも屈指の人気キャラであった。



「最近このキャラが当たったから、頑張ってシナリオを進めてたの」


「私が勧めておいてなんだけど、そのゲームはどう? 面白い?」


「うん。すごく面白い。さすが美鈴さんが教えてくれたゲームだけある」


「そうなの。喜んでくれてよかったわ」


「ありがとう。美鈴さん」



 くっ!! 可愛い。玲奈が時たまみせる天使のような笑顔は女の私でさえ魅了してしまう。

 何でこんな可愛い子が春樹のことを好きなのよ!! 世の中理不尽だわ!!



「こほん、時に玲奈。貴方に聞きたいことがあるんだけど?」


「何?」


「玲奈は春樹の事が好きって言っていたけど、どれぐらいあいつのことが好きなの?」


「う~~ん、そうだな‥‥‥」



 玲奈の好きだ。きっと少し気になる程度のはず。

 よくて付き合えたら嬉しいといった所だろう。もしそうなら、もっと格好良くて面白い人を玲奈に紹介すればいい。

 玲奈の事だ。きっとすぐに気に行って、春樹の事なんてポイ捨てするに違いない。



「春樹の‥‥‥」


「春樹の?」


「春樹の‥‥‥春樹の子供を産んでもいいぐらい好き」


「ノン!! それはダメよ、玲奈!!」


「何で?」


「何でって、倫理的にダメに決まってるでしょ!?」



 高校生にもなってないのに、いきなり子供を産むなんて玲奈は何を考えているのだろう。

 せめて高校‥‥‥いえ、やっぱり大学を卒業してからそういう事には励んでほしい。



「むぅ~~、春樹の子ならいつでも産んであげるのに」


「駄々をこねても駄目よ!! 一体何を考えてるのよ貴方は!!」



 言葉の端々から玲奈がどれだけ春樹が好きか伝わってくる。その覚悟は交際前提というよりも、既に結婚前提のお付き合いをしたいと言っているようなものだろう。



「まずいわ。まさか玲奈がここまで春樹を思ってるなんて想定外だよ」



 今の段階では玲奈を説得するのは難しい。こうなったら作戦を変更して、徐々にその考えをほぐしていくしかない。



「美鈴さん、どうしたの? 独り言なんて言って?」


「何でもないわ!? それよりも玲奈は本当に春樹のことが好きなのね」


「うん。大好き」


「大好き‥‥‥ぐっ!!」



 堪えろ、堪えろ私。

 言いたいことは山のようにあるけど、今は抑えるんだ。



「貴方は今、春樹のことを振り向かせたいのよね?」


「うん」


「それならもっとあなた自身が可愛くなるしかないわ」


「可愛く?」


「そうよ。春樹が今あなたに見向きもしないのは、玲奈に魅力がないからなの」


「確かに‥‥‥そうかもしれない」


「だから私と一緒に可愛くなる努力をしましょう。そうすればきっと春樹も振り向いてくれるわ」


「本当?」


「本当よ。私が嘘を言ったことがある?」


「ない。美鈴さんを信じる」



 よし、玲奈もこの作戦にのってくれた。

 後はこの春休み中に玲奈を可愛くして高校デビューさせる。

 そして入学と同時に人を見る目を養わせて、彼氏をGETだ。



「玲奈は本当に聞き分けがいい子ね」


「だって、春樹に振り向いてもらいたいから」


「本当にけなげな子ね」



 春樹にはもったいない。本当にこの子は何で春樹の事が好きなんだろう。

 こうして話を聞いていたら気が変わった。春樹だけでなく他の男にも絶対に渡したくない。むしろ私が玲奈の事をもらってあげたいぐらいだ。



「そしたら玲奈、これからは私のいう事を聞くってことでいいのね?」


「うん。頑張る」



 これで玲奈への言質は取れた。後は玲奈を可愛くするだけだ。



「それじゃあこのことは春樹には秘密ね」


「うん。わかった」



 玲奈の許可は下りたので、後は行動に移すだけになる。

 こうして私の玲奈改造計画が幕を開けるのだった。



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ここまでご覧いただき、ありがとうございます。


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神殺しの少年


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