ある一枚の葉が
夏
ある一枚の葉が
一枚、また一枚と葉っぱがひらりと宙を舞う。
そして————残りはあと一枚だけ。
この葉がなくなるとき、わしの人生も終わるだろう。
それはもう、次の瞬間なのかもしれない。
なくなってたら嫌なくせに、気になって見てしまう。
……しばらく眺めてから、あくびをひとつした。
と、そのとき。木が大きく揺れた。
「うおっ」
……これはもうだめだろう。
揺れ続ける木を見て、そう思った。
やり残したことはもう……ないとは言えないけれど……
————その瞬間現れたものに目を奪われた。
若者が何人も登ってきて、木の上で遊び始めたのだ。
その老人がそれを理解するのに必要な時間を経た後、驚きは怒りへと変わった。
こいつらは、、、!!
あの葉が今にも落ちようとしているのに————
あんなに楽しそうにして————
……こっちまで元気になったわい。
老人は窓に背を向け、眠りにつこうと目を閉じた。
「ケガするんじゃないぞ……」
— — — — — — — — — — — ―
同時刻
スタッフの田中は、先ほどから仲間と木に登っていた。もちろん、病院に許可はもらってある。
ここは映画の撮影現場。撮影は順調に進んでいた。
しかし、ラストシーンで予期せぬトラブルが起こったのだ。
「なんなんだこの葉っぱは! ラストで落ちるはずだったのに!!」
田中たちスタッフは総動員で木を揺すっていた———
もちろん、老人はそのことを知らない————
〈終〉
ある一枚の葉が 夏 @gozaemon
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