1-2 純情フラペチーノ

「…へぇ、友達出来たんだ。意外」

「おいこら」

フラペチーノを軽く口に流し込み、少し驚いたものの興味なさげに和奏はそう言った。

まぁ、実際興味なんて無いんだろうが。


日曜日。和奏と思いもよらぬ再会を果たした、その翌日。

俺と和奏は、某大手コーヒーカフェへと足を運んでいた。

というのも、今朝起きたらスマホに『今日、暇?ならはなそー』などというのんきなメールが届いてきていた。

そのメールにはご丁寧に集合場所と時間の指定が添付されていて、断ろうとも思ったが、どうにも昨晩の事が頭をよぎりまとわりついて離れなかった。

どのみち、のこのことついて来た俺も人の事は言えないが。


「絶対興味無いだろ」

「あー、うん。あんまないかも」

「でしょうね」


苦笑いを浮かべながらもコーヒーを啜り、俺は和奏に聞いた。それは思いのほか、ほろ苦かった。



「昨日はなんであんな事言ったりしたんだ?言うようなタイプじゃなかったと思うけど」


「あんなことって?」

俺が言うと和奏は首を傾げた。



「……いや、ほら唐突にキスする?とか言ってきただろ。お前」

「もしかして照れてる?」

「ぶっ飛ばすぞ」


「あはは、しっかし彼女出来ないか~。報告楽しみにしてたのに」

「元カノに彼女出来たとか報告するか?普通」


頬杖を突きながら、薄い笑みを浮かべどこか煽るような視線を向けてきた和奏。

その真意は今の俺には分からなかった。

…昔から分かっていた訳でもないが。

そして和奏は「しないね」と相槌をうってから小さくふうっと息を吐き、フラペチーノに目を落として、こう答えた。


「キスの件は単にからかっただけだし、深い意味は無いよ」

「なっ…」

なんだよ、それ。俺がもし、する。なんて言ったらどうするつもりだったんだよ。

…いや、たらればの話をしても意味無いな。やめよう。考えるだけ無駄というものだ。

俺が困っていると和奏は何故か寂しそうに、あははと笑った




「この後どうする?デートでもしてく?」

「あほか、帰るわ」

やがて飲み終えた俺達は帰るために席を立った。ちなみにあれからは、他愛無い会話が続いたがほとんど覚えてはいない。


「じゃ、会計してくる」

「え?いいよ、これくらい」

「女子におごってもらうのは気が引けるんだよ」

和奏は迷ったような驚いた顔をした。

「で、でも…」

「いいから、な?」


「…わかった」

有無を言わさぬ態度で俺が言うと和奏は不服そうに目を逸らした。

ま、それでいいんだよ。


「それと、和奏。なにかあったのか知らないけど話なら聞くぞ」

  「良いの?」

「当たり前だろ?友達なんだからさ」

「えー、頼りないなあ」

っておい。せっかくいいこと言ったんだから流しそうめんみたいに流すなよ。


「笑うなし……。でも、からかってくる方がお前らしいから良いか」

「え?ドM?…うわあ」


和奏はニヤニヤと笑いここぞとばかりに俺をイジってくる。その顔は昨日の事が嘘に思えるほど楽しそうな笑顔だった。

「違うからな?ふざけんな」


ツッコミながら俺は、その笑顔にどこか幼さと懐かしさを感じた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

きっと差し伸べる手を元カノは振り払う にわとり。 @hiro3smile

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ