終編「真実」

 ※※※


 青く澄んだ大空の下、僕は、飛鳥さんのお墓の前で、手を合わせると、祈った。そして、懐から手紙を取り出すと、お墓に置いた。


 数日前のことだーー。


 駅での出来事から少しして、飛鳥さんの妹、五十鈴さんから、連絡があり、姉が亡くなったことを告げられた。よくよく聞いてみると、飛鳥さんが亡くなったのは、駅での出来事があったちょうどその日だった。なんとなく、彼女の死を予感していたとはいえ、聞いた時は、ショックで気を失いかけた。


 あの時、助けてくれたのは、間違いなく、飛鳥さんだった。そんな、奇跡のようなことが、起こるなんて信じられなかったが、僕の母親と父親もかつて、同じように、奇跡のようなことを体験したらしい。


 二人とも、飛鳥さんが残したお守りに書かれた、神社に覚えがあった。その神社は、山中にあり、願い事を叶えてくれることで知られているようだ。神社のご利益という奴なのだろう。


 僕は、お墓から立ち去る際、見覚えのある一輪の花が風で優しく揺れているのに気づいた。


 あの花は......。そうか、飛鳥さんは、あの時の女の子だったのか。


 記憶の奥底から、甦ったのは、かつて、野犬に襲われていた女の子を助けた時の記憶だった。あの時は、怖くて仕方がなかったが、純粋だった子供時代の僕は、果敢に、野犬を追い払い、女の子を救った。救ったお礼に、花をもらったのだが、女の子の名前が、飛鳥だったはずだ。


 実は、飛鳥さんは、ずっと僕のことを覚えていてくれたのかもしれない。今となっては、真実を確かめる術はないけれど。




敬具。

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拝啓。部屋の窓から始まった僕と君の恋は失敗に終わりました。でも、勇気をくれました。 東雲一 @sharpen12

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