Case 3-9.Parade (The time)

 パレードの通り道近くはすでに人でごった返していた。


「ちょっと距離あるけど、このへんから見るしかないな」

「ああ」


 比較的人口密度が小さい、少し離れた一角にスペースを陣取る。空はすっかり薄暗くなり、パレード用にイルミネーションも控えめにしているせいで、近くにいないと表情が見えない。


「そういやここのパレード、花火も上がるらしいな。星宮ほみしやは見たことあんの?」

「えっ? いや、私もない、かな」

「ならしっかり目に焼き付けないとな! 写真も撮らねえと……でも花火の写真ってうまく撮れないんだよなー」

「今のスマホならきれいに撮れるんじゃないか?」


 なんて言いながら、時間を確認。


 開始五分前。そろそろだな。


「俺、今のうちに飲み物買ってくるから、部長ついてきてもらえますか――って」


 手はずどおりに、後ろにいる部長に向かって声をかける……も、そこには誰もいなかった。


「部長……?」


 まさか先にこの場を離れたのか? それとも、本当にはぐれたとか。


 とりあえず、部長がいないならあとは俺がこの場を離れればいいだけ。そう思って、再び隣に目をやると、


 そこには夕月ゆづきしか、いなかった。


 もしかしてすばるもどこか行ったのか?

 まさかここまで予定どおりにいかないなんて。ともかく、今は目の前の幼なじみのためにできることをやらないと。


「悪い、すぐに昴を探してくるから、お前はここで――」

「ま、待って!」

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