Case 3-6.Next attraction, next pair

 ゾンビみたいな足取りで七海先生が去っていってから数分後。夕月ゆづきすばるが戻ってきた。


「いやー楽しかったー」


 お腹いっぱい満足、といった表情の夕月。それがジェットコースターを満喫したことによるのか、昴と二人きりだったからなのかまでは読み取れない。ともあれ、部長の作戦はうまくいっているようだ。


「よう晴人はると、体力は復活したか?」

「まあな」

「じゃあじゃあ次は――」

「次はあれなんてどうかしら?」


 提案しようとする夕月に、部長が声を重ねた。そして少し遠くを指さす。


 白い人差し指が向くのは――楽しげな雰囲気など微塵みじんも感じさせない、おどろおどろしい外観の建物。ジェットコースターとはまた違った悲鳴が聞こえてきそうな、人を怖がらせることに特化した施設。


「……お化け屋敷、ですか?」


 瞬間、夕月の顔が引きつるのがわかった。こいつが怖いものが得意じゃないことは、俺が一番よく知っている。


「いいですね。あれなら乗り物酔いもしなさそうですし」


 だけど、俺は部長の提案に乗る。別に夕月に嫌がらせしたいとかではない。これも部長と事前に立てておいた、作戦のひとつだ。思い出づくりのためには、楽しいアトラクションだけじゃなくて、怖い体験も共有しておくのがよいだろう、という。


「べ、べつにあれは今日行かなくてもいいんじゃない? あはは」

「なんだよ星宮ほしみや。もしかして怖いのかー?」

「ち、違うし!」


 慌てて否定する夕月。


「せっかくだから、二人一組に分かれるか」

「ちょ、私まだ行くなんて」


 ふふふ、さっき無理やりフリーフォールに引きずっていった仕返しだ。


「そうね。じゃあ私は晴人くんと行くから――」

「あ、それじゃあ」


 予定どおり、夕月と昴がペアになるよう誘導しようとした部長の言葉が、思いもよらない方向からの――昴の声で遮られた。もちろん俺と部長の作戦なんて知るよしもない彼は、右手を突き出してこう提案してきた。


「今度はじゃんけんでペア決めないか?」

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