Case 2-12.Her strange plan
「すごかったですね」
「ええ」
帰り道。行きとは違って空席の目立つ電車に揺られながら、俺たちは小学生並の感想を言うことしかできなかった。
まぶたを閉じれば、絵を前にした時の記憶が鮮明によみがえる。
まるで絵の風景が視神経を通して頭の中に流れ込んでくるような感覚。
才能。その一言で片づけることしかできないほどのすごさ。それが、天川先輩の絵だった。
「でも……美術部、辞めるんですよね」
ただ、腑に落ちないのはそこだった。夕月とクレープを食べていたときの疑問が再燃する。
あれだけの絵を描けるのに、美術部を辞める必要などあるのだろうか。
「もう絵を描くつもりはないってことなんですかね」
「どうなのかしら」
本人に訊けば一発なんだろうけど、会った時の様子じゃ無理だろうなあ。天川先輩、俺たちと話すことすら嫌そうな顔してたし。
「やっぱり
自分で提案してみたものの、大して得られるものはないだろう。彼とは依頼を受けた時にさんざん訊いた。
「そうね……」
あごに手を当てて、部長は考える。
「こうなったら、アレを使うしかないわね」
「アレ?」
不安極まりないセリフ。理解が追い付かない俺をよそに、部長はいつもどおりの自信満々な様子で、言った。
「まあ見てなさい。こういう時にあらゆる手を尽くすのが『諦め屋』よ」
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