嬉し恥ずかし初デート♪



「ツェリ、はい、あ〜ん」



とんでもなく良い笑顔で、一口サイズのカステラ?のような物を差し出してくるレオン。

はい、その笑顔1億点!


私は恐らく羞恥とレオンにハートを撃ち抜かれた事で真っ赤になりながら、レオンに差し出されたカステラをパクっといただく。

口の中に、カステラの素朴な味わいが広がる。



「ふふっ…」



そんな私の姿を見て、心底嬉しそうに微笑むレオン。

はい、その笑顔100億点!!!


さて、何故私たちがこんなにイチャイチャしているのかというと。

え?いつもイチャイチャしてるって?

そ、それはひとまず置いておいて…。





遡ること1週間前。



「ツェリとデートがしたい……」



膨大な執務に追われて、心なしか疲れた顔をしているレオンがそうボソッと呟いた。



「デート…ですか?」



私がきょとん、として聞き返すと。



「あぁデートだ!リーフもクローヴもルードも!!いつも嬉しそうに恋人とのデートを惚気けるのだ!私もツェリとデートがしたい!!!」



よほどストレスがたまっていたのか、駄々っ子のように訴えるレオン。

子どもみたいなレオンも可愛いわぁ。



「はいはい、レオ陛下。馬鹿言ってないで手を動かす!」


「酷いぞクローヴ!」



レオンの言葉を軽く受け流しながら、ドサッと大量の書類を追加するクローヴィア。



「ふむ…。でもレオ陛下も頑張っていることです、ご褒美はあってもいいかも知れませんねぇ」


「大将、寝る間も惜しんで頑張ってるもんな」



顎に手を当てて考えるリーフェルトと、同情的なルードルフ。


しばらく考えていたリーフェルトは、ポンッと手を叩くと、レオンにこう提案した。



「レオ陛下、ではこうしましょう。日暮れまでにその書類を片付ける事ができたら、デートについては検討します」



リーフェルトがそう言い終わる前に、レオンが先程までのスピードは何だったのか?と言う程のペースで書類を片付け始める。


そ、そんなに私とデートしたいのかしら…?

ちょっと照れる。



「まぁ、レオ陛下にも餌は必要でしょう」


「そんな大将を馬みてぇに…」



そして、驚くべき速さで書類を片付けたレオンは、見事デートの権利をもぎ取ったのであった。




デートの権利を無事ゲットしたレオンは、ギッチギチに詰まったスケジュールの合間を縫って、私とこうしてデートをしているのである。


前世でもデート経験のなかった私は、それはもう嬉しすぎる程に嬉しいのだが……。


ちょっとスケールが大きすぎてついていけない!



そう、この国の国王であるレオンは、おいそれと市街地へは出掛けられない。


そこでレオンが何をしたかと言うと…、行けないのなら来てもらえばいいじゃない、とばかりに、屋台を呼んだのだ!この王城に!!!


当然、私たち2人だけの為に…というのは勿体なさすぎるので、王城で働く人たちへも解放したが……。


なんというか、前世小市民だった私は落ち着かない。


そんな私の様子を察したのか、リーフェルトが『全て陛下のポケットマネーですから…』と教えてくれたが、違うそうじゃない。




「ツェリ、楽しくないか…?」



物思いに耽っていた私の意識を呼び戻したのは、レオンの不安そうな声と、眉が情けなく垂れ下がった子犬のような顔だった。



「まさか!ただ、私の為にここまでしていただくのは申し訳ないような気がして…」



慌てて弁明する私。


そんな私にレオンは。



「ツェリの為では無いぞ?」


「え?」


「僕が、ツェリとデートをしたかったのだ。その、3人から、デートをすると甘い雰囲気になると聞いてだな……」



顔を紅く染めながら、恥ずかしいのか頬をポリポリと指で掻くレオン。


そんなレオンの尊さに召されそうになる私。


2人して顔を紅くしてモジモジとする姿は、傍から見たら滑稽に映る事だろう。



「「ふふっ…」」



そんな様子におかしくなってきた私たちは、同時に笑い声を上げた。



「レオンの為ということなら、私は遠慮しませんわ。さぁ、存分に楽しみましょう! 」



レオンの手をギュッと握って、はしゃぐ私に。



「あぁ」



レオンは強く手を握り返すと、心底嬉しそうな笑みを浮かべるのだった。




その後存分にデートを楽しんだ私は知らなかった。

レオンがこのデートに味をしめて、度々屋台を呼ぶことを。

そして、それが王城で働く者の息抜きになり、レオンの評価が上がることを……。


さすがだわレオンっ!


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美醜逆転異世界で、黒豚令嬢は月の王子を溺愛する。 猫野 肉球 @nekononikukyu-punipuni

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