第三章

第23話 指に付いた粉

「ボリボリ」真夜中にハッピーターンを食べながら「○○レストランとそのシェフ」の3話目を見ていた。

画面の中に城君がいる。当たり前のことだが、当たり前と思えなくなっていた。

私はこの画面の中の人と一緒に歩いて、喋って、連絡先を交換して、メッセージのやり取りをしたんだ。

ハッピーターンの粉がついた指を舐めながらそう思った。こんなところを城君が見たら、速攻で連絡先を削除してしまうだろう。


ハッピーターンを食べても、粉が付いた指を舐めない女性を城君は好きなはずだ。

そう思っているうちにドラマは終わった。


何も頭に入ってこなかった。ごめん、城君。ドラマは確かに見ていたが、ずっと上の空だった。ドラマの感想言えやしない。


この場合、私からドラマについてのメッセージを送るべきなのだろうか。それともまた城君からメッセージが来るまで控えるべきなのだろうか。

分からない。本当に分からないのだ。

重い女だと思われたら困る。否、その前にただの街案内おばさんではないか。

また考え過ぎの癖が出てしまった。


スマホのメッセージ音がなった。

城君に違いない。

急いで見てみると、

「夜分にごめんなさい。ドラマ見てくれましたか?もし良ければ感想を聞きたいです。返信はいつでも構いません。」


どうしよう。本当にメッセージが来た。なんて返信すればいいんだろう。

面白かったです、の一言だったら失礼だし、本当は沢山沢山言いたいことがある。過去の2話分はしっかり見ていたのだから、感想は書ける。今日は上の空だったけど、、、。演技のこととかに口出ししたら、嫌な気分になるだろうか?

あー、だめだ。感想が纏まらない。


「心温まる話で、夜中にホットココアを飲んだような温かくて優しい気持ちになれるドラマでした。城君の良さが最大限に引き出されていると感じました。上手く言葉に出来なくてごめんなさい。」

送信。


これでよかったのだろうか?文章力が無さすぎて嫌になる。


驚くほど直ぐに返信が来た。

「リアタイで見ていてくれたんですね!ありがとうございます!えみさんの感想が一番嬉しかったかも!」

一番!?私、なんか上手いこと言ったかしら。ホットココアに例えたことかな。あ、社交辞令か。だめだめ、また真に受けるとこだった。


ブブー。またメッセージ音が鳴る。

「えみさんに会って、感想をもっと聞きたいです。明後日撮休なんですが、会えますか?」

「撮休」ってなんだろう?撮影が休みってことかしら。いやそんなことはどうでもいい。また会いたいってこと?いやいや厚かましい。会いたいだなんて。

男の人はスマホでのメッセージのやり取りが苦手で面倒くさいとよく聞く。雑誌でもよく取り上げられているではないか。きっと城君も面倒くさいのだろう。だから会って、直接感想を聞きたいのだろう。

と心の中で思いつつも、顔が綻んでいるのが自分でも分かる。


「私は今無職だから、いつでも空いてます。明後日、大丈夫ですよ。」

送信。

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43歳の私が年下俳優と!? パオ太郎 @eoghan98

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