ドラマシリーズの章

ダーマー モンスター

【作品情報】2022年9月 アメリカ 製作総指揮:ライアン・マーフィー


【あらすじ】

実在の殺人鬼、ジェフリー・ダーマーを主人公にしたドキュメンタリードラマ。全10回。1978年から1991年にかけてオハイオ州やウィスコンシン州で17名の青少年を殺害、遺体を切断して肉を食べ、コレクションにした。

ダーマーの逮捕から始まり、犯罪を看過した警察当局の問題、彼の生い立ちを絡めた犯行の軌跡を振り返りながら隣人や被害者家族、ダーマーの祖母、父、継母など彼を取り巻く人々の苦悩を描く。


【見どころ】

彼が一体どうして、どのように恐ろしい連続殺人を犯したのかをドラマ仕立てで見せる。ショッキングな映像も多いが、いたずらにホラー仕立てにしようという意図は感じられない。エヴァン・ピーターズの鬼気迫る演技が不気味で恐ろしい。狂気の目は深淵を覗いている気分になり、背筋が凍り付くようだった。

ダーマーの最期までを描く作品なので、一連の事件が一体どういうものだったか知ることができる。


【感想】※ネタバレ含

ジェフリー・ダーマーはアメリカの有名な連続殺人鬼で、ホラー、オカルト、ダーク系ドキュメンタリーが好きならその名前を知っている人も多いと思います。私も書籍で読んだことがあり、名前は聞き覚えがあるという程度でした。

今回、初めてドラマを通して一体何があったのかを改めて知りました。


事実は小説よりも奇なり、を地で行く恐ろしさに身の毛がよだつ思いです。スリリングな演出やショッキング映像も恐ろしいのですが、何より彼の利己的な精神性にぞっとします。

夫婦仲が悪い家庭の長男に産まれたが、父と祖母には愛情を注がれており虐待やネグレクトに遭ったわけでもない。それなのにここまで理解不能なモンスターが生まれたことが恐ろしい。


また、ダーマーを取り巻く人々の苦しみとして、警察に何度も通報したのに14才の少年を助けられなかった隣人や、モンスターを生んでしまった父親、彼のしたことを許せなかった囚人と悲劇が連鎖していきます。


特に終盤心に残った描写はキリスト教に絡めた赦しについて。

隣人はダーマーを許せないことを神父に告白します。キリスト教は他者を赦すことを説いています。しかし、恐ろしい犯罪を犯したダーマーを赦せない、と嘆く隣人。敬虔な信者には気持ちの整理がつかず、その精神的な苦しみは想像を絶するものと思いました。


ダーマーを殺害した囚人についても、彼のしたことを知って赦すことができず彼を手にかけました。そうすることで罪を重ねて神に背くことになった。彼はこの先、自分を責めて生きることになるのではないかと思います。

一人のモンスターは犠牲者だけでなく、取り巻く人々をも不幸に陥れた。ここがしっかり描かれていたのは見応えがありました。




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独断と偏愛の映画紹介 神崎あきら @akatuki_kz

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