10話.[願い続けたって]

「え、1年経過してもまだ好きだったら付き合ってくれるって? しかもその際はふたりで住み始めるぅ!?」

「う、うん、まあそういうことになるわね」

「いいなあ~……私なんて」


 どんなに願い続けたって兄はもう郁さんの彼氏だ。

 せっかく部活動の件だって解決してこれからはってなっていたところだったのに……。

 これならもっと早くぶつかっておけばよかったな、過信していたんだろうな。

 兄はほとんど郁さんとしか関わっていなくて、3ヶ月ぐらい喧嘩をしてもう致命的なぐらいだった。

 だけどそこで動いたのが彼女が好きなお兄さん、芳樹さんで、兄達は無事に仲直りできて嬉しいはずだったんだけど……。


「遠慮しないで勇太先輩に言っておけばよかったじゃない」

「……だって怖くて」

「私はちゃんと言ったわよ、勇太先輩と郁先輩と、なにより大好きな芳くんの前でね」

「ぐぅ、格好いいなもう……」


 もういいっ、残り少ない部活動を頑張るもんっ。

 部長でなくなってしまったのは悲しいけど、部内の雰囲気も良くなったから問題ないっ。


「おめでどぉ……」

「あははっ、あんたの好きなのを奢ってあげるわよ」

「やったっ、行こっ」


 彼女は「現金なやつね……」と微妙そうな顔で呟いた。

 それでも私はすっきりさせることができるということだけにしか集中していなかった。

 おめでとう、お兄! 郁さん!

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25作品目 Rinora @rianora_

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