第3話
「すぅーーーふぅ」
朝イチのタバコ、マジ最高。
特に朝の冷えきった空気のなかベランダで吸うタバコは最高。
シャワーを浴び、制服に着替える。
「………行くか?」
時刻は7時45分、もう一本吸える時間だ。
「んむぅ………………」
よし!決めた!
「すぅーーー……ふぅー」
うまい。
家を出てのんびり自転車をこいでいると学校についた。つかなきゃよかったのに。
いるよ、正門の前に生徒指導の先生がいるよ。
「おい匠!お前何度言えばネクタイしてくるんだ!」
「あるよ」
「あるならしてこい!ネクタイはパスポートじゃないんだぞ!」
「はーい」
いつものやり取りだ。
この人は武田先生、ゴリラみたいにごりごりの筋肉が特徴。柔道でクラスのめっちゃ太ったヤンキー投げてた。怖い。
教室に向かうといつものメンバーがいた。
「おっすー」
「お、匠じゃん」
「ついに退学届けだしに来たのか?」
「またバイトしてたのか?」
「退学届け貰いに来た、バイトはしてたね」
「退学すんの!?」
こんなやり取りを来るたんびにしている。
しかもいつものメンバーだけじゃなく
「匠!何で学校来た!」
「いや、来ないと退学なるじゃん」
「ちゃんときなよ!」
「気が向いたらな」
「勉強できるんだから来るだけじゃん!」
「来るだけができないの」
女子、陽キャ、いろんなやつに声をかけられる。女子と話せなかったあの頃とは違うな!
「席につけー」
担任がやって来た。いい先生ではあるんだけどやる気が感じられん。
「おっ!藤沢きてんじゃん!何しに来た!」
「何しに来たとはどういうことですか!?」
「だってお前来ないじゃん」
「いやそうっすけど」
デジャヴ…てか、生徒が来て何しに来たってひどくね?
泣くよ?俺。
「まぁ、いいや、明後日は文化祭だからしっかり準備しろよ?今日の連絡事項はおわり!各自準備開始してくれ」
「はーい」
そういやそんな時期か、まぁ文化祭2日ともバイトあるから休むんだけどね。
「藤沢!こっちの装飾頼む!」
「だるいし帰りたい」
「帰れよ」
「えー」
手伝いやらされた。帰りたい。
今日は運のいいことに4時間授業だったらしくもう帰れるそうだ。先生による明日の連絡がおわり、帰ろうとしてると声をかけられた。
「匠!きてんじゃん!」
振り向くとサッカー部のキャプテンがいた。
「今日部活だからこいよ!」
「わり、バイトあるからパス」
「はぁ?意味わかんねぇ」
「悪いな」
「はぁ、次学校の来たときは出ろよ!」
「おーう」
ちなみに俺はサッカーうまくない。素人に毛が生えた程度だ。ならなぜ呼ばれるのか…
理由は一年前の夏…
俺が中学から上がったばっかで陰キャがもろに出てた頃、サッカーやってたからサッカー部っていう安直な考えでサッカー部に入った。
間違いだった。陽キャにめっちゃ文句言われた。いじめかな?って思うようなこともあった。
やめようとも思ったが入った以上続けるのが当たり前だと思っていたから頑張ってた。
そしてとある事件が起きたのだ!
夏合宿にて、長いバス移動を経て俺たちは静岡に来ていた。暑いなか走らされくたくたになりながら宿舎につき、のんびりしようと思っていたら呼び出しがかかった。広間に集められた先輩含め50人程度。先生が神妙な面持ちでこういった。
「お前ら、万引きしただろ」
「えっ?」
「お前か?」
「あ、いや、その」
俺は驚いて声が出てしまった。そして犯人候補として俺に目線が注がれている。陰キャの俺が注目されてしゃべれるわけがない!
よし、いいな?いったん落ち着こう。そう、落ち着いて、深く深呼吸して…
よし!
「あの…ぇえっと……どこ…ですか?」
前述にもあったとおり人というのは極度の緊張状態になると思考が停止する。
この返答により俺への疑いが確信に近くなりつつある空気。
おわったぁ…
「やったのか、やってないのか、どっちだ!?」
「先生、どこでですか?」
声をあげたのは俺のサッカー部でよく基礎練習とかしている岩田だった。
まじメシア。
「途中のパーキングエリアだよ!やったのか!やってないのか!どっちだ!?」
「あの…パーキングエリアでは…降りてないです…」
よく声を出したと思うよ俺。
「証明できるのか!?」
「俺と岩田で降りるの面倒だからってずっと乗ってました」
「本当か岩田?」
「そうっすね、降りてないです」
疑いが晴れました。緊張が溶けると力が入らなくなるっていうけどまじ出そうだね。柱に寄りかかって動けなくなったもん。
「じゃあだれだ!」
5分ほどの沈黙のあと
「………すみません」
なんと、嫌いだった陽キャが1人手をあげたのだ!すげぇ勇気!何がすごいかって万引きする勇気もすごいしこの空気で名乗り出る勇気もすごい!そんな勇気いらないけどね!
そっからがすごかった。3年と練習してるやつだったから質問攻め。しまいには泣き出しちゃって…
10分くらい話したあと(公開処刑だった)先生が予期せぬことをいった。
「あと一人いるだろ」
おい!疲れてんの!休ませろよ!とは言えなかった。
結局もう一人は出てこずにその後一年のミーティングで話し合うことになった。
「こういうことだめだな」
「そーだな」
みたいな話。まじで無意味だろって後で思った。その頃はいい子だったから今後はそういうのなくしたいって思ってたけど。
そして次の日がこれまたやばかった。
パーキングエリアでやってたやつが1人、そして別の日にやってたやつが12人も出てきた。まじで先生怖い。やばかったのはそれだけじゃない。合計14人いたのもだし、残ってたやつら13人のうち1人だけしか残ってなかった。
公開処刑パート2が始まった。
ということがあったからか俺ら二年は謎の結束感があったんだよね。
まぁ、タバコに酒にキャバクラやっちゃった俺はもう顔を出すべきではないと思っていってないだけだからね。
なんて思出話に心を奪われていると家についた。
「すぅーーー……ふぅー」
本当に罪悪感がすごい。
ただの高校生の物語 @tsukasa06
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