第2話
「おい!藤沢!これ間違ってるじゃねぇか!」
「いや、それは俺じゃ」
「言い訳はいいんだよ!」
殴られた。これがいつも通りだからとりあえず形だけ謝り作業をする。
俺のバイト先は寿司屋だ。デリバリーメインのはずなのになぜか寿司を作ってる。
わかっている。ミスをしたのはたぶん後輩の増永だ。しかしあいつに悪気があるわけではないのは俺が一番知っている。
宅配15件、これだけたまっていれば働き初めて一年たった俺でも何かしらミスはする。何せ増永は入って3日目だ。
「増永!てめぇこれちがうじゃねぇかよ!」
「………」
「おい!きいてんのか!」
あぁ、これはあれだ、いつものパターンのやつだ。
「……ます」
「あ?」
「やめます!」
ドン!っと調理台の上にエプロンを叩きつけ逃げるように荷物をもって出ていく。
そりゃそうだ。俺だって親の紹介じゃなきゃ逃げ出してる。
「ッチ、藤沢!それつくってこれ持ってけ!」
わぁお、自転車で配達なのに5件も持たされたよ。洒落になってないよ洒落に。
「北口、お前残りいってこい」
「りょうかいーす」
北口先輩まさかの10件持ちかよ!
バイクとはいえ化け物かよこいつ!
「宅配の電話来ないようにしたからはやくいってこい」
後ろの荷物いれに3件、手に2件…
これ事故るかもな…
「んじゃ、おつかれ!」
「おつかれさまです!」
「おつかれーす!」
仕事が終わると店で店長と北口先輩と飲むのが日課になりつつある。
「いやー、今日やばかったすね」
「あれぐらいふつうだよ」
「てか、増永やめましたけどどうするんすか?」
「北口、お前入いれよ」
「まじっすかー、これで20連勤目っすよ」
店長と北口先輩と会話をしながら俺は高校の時間割りを確認していた。
なぜかって?そりゃ退学にならないため。
ちなみに今は2年の2学期。1学期の欠席は33日、遅刻は22日である。
高校には気が向いた時に顔を出すレベル、当然成績表はオール0。先生に1すらつかないと言われた。友達に写真とられてsnsにあげられバズった!親には殴られた。
「そーいえば藤沢、お前高校卒業できんの?」
「あー、まぁ、英語表現と日本史が次休んだら退学であとの教科は1回づつぐらい休めます」
「お前そんなんだからだめなんだよ!」
店長の厳しい叱責に笑顔で
「でもまぁ、ここで17万位稼がせてもらってますから最悪独り暮らしできるんで」
「お前なぁ」
ちなみに今日で俺は13連勤目。世の中の高校生でここまで働いてるやついないんじゃないかな?
「よしお前らさっさと帰れ!仕事が残ってるんだよ!」
「おつかれっした」
「おつかれさまです」
このあとはいつものあれだ。
「すぅーーー……ふぅー」
「いやー、今日混みましたね」
「そうだな」
北口先輩と駐車場で一服!これまじでやめられない!
「てかさ、藤沢やめちゃったね」
「そーすね、でもまぁあそこ時給いいすっからね」
「そーだよな、時給だけはいいんだよな」
何を隠そう、寿司屋の時給は平日1250円土日1500円なのである。その時給につられて来る人は多いんだけど…
「店長に耐えられないと続かないっすよね」
「だな、俺も30万貰ってるけどやめたいもん」
ちなみに北口先輩は24でフリーターである。何でも起業したいんだとか。でも、この人なら何でもできる気がする。10件もって40分足らずで帰ってきちゃうんだもん。俺なんて1時間かかったのに…
「明日どうするの?」
「あー、明日は高校に顔出しにいきます」
「いや、その表現おかしい」
だってねぇ、高校なんて行くだけ無駄でしょ。効率悪すぎる。
「まぁ、がんばれよ。おつかれ」
「おつかれっす!」
高校行きたくねぇ…
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