ただの高校生の物語
@tsukasa06
第1話
「別に一回だけだよ、経験経験」
その日、俺にとって最大の分岐点だったのかもしれない。
ピロリロリ、ピロリロリという音で目を覚ますと、俺は眠い目を擦りながらたばこに火をつける。時刻は午後3時。4時からのバイトのためにかけておいたアラームだ。
「すぅーーー………ふぅー……」
眠気覚ましにたばこを一服。これが俺の日課なのだ。
俺は高校生である。これがばれればよくて停学、悪ければ退学である。ここで疑問に思われるひともいると思うが俺は定時制出はなく全日制に通っている。偏差値45。
低くねぇ~し?周りが高すぎるだけだし?
ガチャっと嫌なおとがした。母が帰ってきやがった。
「てめぇ、また学校サボって…退学になったら問答無用で追い出すからな?」
バタンと音をたてて扉をしめる母。
わかっている、こんなんじゃダメなことぐらい。変わらなきゃいけないことぐらい。
高校2年の春、俺は中学の時の友達に呼ばれた。
陰キャだった俺は誰かに呼ばれるなんて初めてでとてもウキウキしていたし反対にドキドキもしていた。
そこにつくと当時の陽キャのやつが二人いた。
「おー、久しぶり!元気してたか?」
「元気よ、そっちは?」
「俺らも元気だぜ」
この時こいつらは吸っていた。その時点でヤバイ気はしてた。逃げ出せばよかった。
ある程度近況報告をしあい、話も落ち着いてきた頃にそれはやって来た
「お前も吸えよ」
この時断っておけばよかった。しかし人間には空気というものが存在する。それは誰かが意図的に生み出したものじゃない。ただただ自然にそこにある。
「そーだよ、俺らも吸ってるし大丈夫だよ」
人というのは極度の緊張状態になると思考が停止する。
「一回だけ試してみ?」
嫌だ、嫌だ、
「何事も経験っしょ?」
…………っ
気づいたときにはなぜかキャバクラにい
た。お酒を手にしていた。たばこを吸っていた。ダメだとわかっているのに…
「……時間だ」
俺はバイトの支度を始める。
「エプロンよーし、頭に巻くための手拭いよーし、たばこよーし、財布よーし」
忘れ物の多い俺は毎回これをやっていた。
「んじゃ、バイトいきますか」
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