第7話景虎、友達との初GW

「おい、お前ら。ゴールデンウィークどうするつもりだ」


 信長君が叫んだ。この人周りの迷惑を考えてないのかな。


立花先輩のドタバタから少し過ぎ僕らは、昭和の日とゴールデンウィークを挟んだ平日の教室にいる。僕、信長君、結城さん・・・。そしてなぜか立花先輩がいた。そして、その静寂に包まれた教室に信長君が叫んだ言葉であった。僕と結城さんは、ラノベを読んでいたのでなかなか耳に響いた。


「信長君、うるさいですよ」


 僕はラノベから信長君に視線を変え、少し怒って見せた。しかし、彼には届いていない。威厳というか顔のせいかまったく怖くないらしい。


「その通りだわ。久我君、周りの迷惑も考えなさい」


「俺らしかいないだろ。しかも、そんなでけぇ声出してねぇよ」


 結城さんは威厳っぽいのがあった。しかし、何気正論を突き付けてくる信長君であった。


そして、僕は確信に迫ることを口走ってみた。


「信長君、チャラ男リア充のくせに、友達いないんですか。悲しいですね。ボッチは」


「その通りだわ。久我君、ボッチ、ご愁傷様」


 僕と結城さんは、信長君に向かって手を合わせた。


「お前らに言われたくねぇよ。そんなことより、このメンバーで遊ぼうぜってことを言いたいんだよ」


「そんなこと早く言ってくださいよ」


「言ってただろ。だから、予定聞いたんだよ」


「あら、そうなのね。私は、特に予定はないかしら、ボッチだし」


「僕もないですね、ボッチだし」


 僕と結城さんは信長君を睨んで見せた。


「私も空けれるよー」


 僕らに続いて立花先輩も答えた。しかし、信長君は不服そうな顔をしている。何故だろう、どこにそんな顔をする要素があるのだろうか。


「お前には聞いてない」


「久我君。私とは遊んでくれないの」


「そもそもなんでここにいる」


「それは千代ちゃんに呼ばれたからに決まってるじゃない」


 信長君は結城さんを睨む。結城さんはそれに微笑みかけるのであった。


「あら、久我君が喜ぶと思ったのだけど、違ったかしら」


「わざとだろ」


「いえ、別に。そもそも私は楓先輩の恋を応援してるから」


「なっ、お前余計なことを」


「それより、何するんですか」


 僕は話が脱線しすぎているので、どうにか収拾を付けようとした。


「みんなでだべったり、ゲームしたりとかしないかと思ってな」


「僕はそれで大いにうれしいけど、他の人はどうかな」


「私も構わないわ」


「私も久我君いるなら何でもいい」


「で、場所なんだが・・・・。景虎の家はダメか」


「僕の家ですか。別に大丈夫ですよ。僕一人暮らしなので」


「じゃあ、決まりだな。ゴールデンウィーク二日目に景虎の家に集合ってことで」


「分かりました」


 これによって、ゴールデンウィークの一日目。掃除をすることになった。しかし、僕はあまり欲がないのか、部屋にはベット、テーブルとソファーというおじさんから買い与えられたものとゲーム、ゲーム、ゲームしかなかった。なんと無欲な男なんだ僕は・・・・。ゲーム以外で。あっ、そういえば最近になって、ラノベが増えてるのであった。


 もはや掃除機だけかけて、僕はラノベを読むのであった。そして、時間はどんどん過ぎていく。


「そうだ。少し書いてみようかな。時間もあることだし」


 僕は、ノートパソコンを開いた。そして、テキストエディターというアプリを開く。これは、作文用紙に文章を書けるのだ。


「まず、設定考えないといけないのか・・・。ん、どうやってラノベって書くんだろう・・」


 僕は読み終わったラノベをペラペラとめくった。


この人たちどうやって書いてるのだろう。結城さんならわかるかな。


とりあえず僕は設定だけ考えることにした。


それから一日が経ち、二日目の昼となっていた。昼から集合という話になっているからもうすぐ信長君たちが来ると思う。なので、僕はここで待っているということだ。一応、住所とか教えてるけど、大丈夫かな。


ピンポーン


僕だけがいる家にインターホンが鳴り響く。僕は急いで玄関を開ける。そこには、見知った人が三人いた。


「悪いな。遅くなった」


「いえ、大丈夫ですよ」


 へらへらしている信長君。そんなに美少女二人を連れているのが喜ばしいのか。時間も三十分オーバーしているし。まさか、僕を置いて楽しんできたとかないですよね。


「まぁ、中に入ってください」


 三人は快く入ってくれた。四人いるには窮屈にならない程度にしかない部屋で僕は烏龍茶をとりあえず人数分用意した。


「結構狭いのね」


 金髪美少女が嫌味を言ってきた。立花楓先輩である。我が初めての友達である信長君を好きな人である。信長君目当ての何者でもない。


「ホントはお前は呼んでないんだけどな」


 当の信長君はどちらかと言えば、苦痛に思ってるらしい。


「あら、私が遊びたかったんだもの」


「ありがとね。千代ちゃん」


 あの一件以来、この二人は仲良くなったらしい。しかし、結城さんは信長君への嫌がらせのつもりなのだろうと僕は予想する。


 全員がしっかり席に着き本題に入る。


「あの・・。何をするんでしょうか」


「これだ」


 信長君は自分の持ってきたバックをあさるとこれでもかというようにトランプを見せてきた。しかし、僕にはそれがうれしかった。チラッと、結城さんを見ると少し目を輝かせていたように思える。


「信長君・・・・。それはトランプですか」


「ああ。景虎はあんまやったことないと思ってな」


「ええ。まぁ、はい」


「おお。やる気か」


「当たり前です。ことゲームに関して僕がやる気じゃないなんてありません。どんなクソゲーだろうと手を抜いたことはありません。


「まぁ、私もしてもいいけど」


 僕の後に結城さんも同意してくれた。そして、僕ら三人は金髪美少女の立花先輩を見た。


「久我君がしたいならいいよー」


 軽い返事だった。


「じゃあ、まずはババ抜きだ」


 五十三枚のトランプが均等に配られた。じゃんけんの結果、僕からスタートし、結城さん、立花先輩、信長君の順番だった。


 最後にジョーカーを持っていたら負けという単純なゲームだ。しかし、そんな単純なゲームこそ相手の心理を測ることが要求される。


 僕は結城さんを見つめる。そして、数枚の手札の一枚をつまむ。結城さんの顔は変化しない・・・。これはジョーカーでないということだ。自信を持って取ってみた。


 ・・・・。ジョーカーであった。


どうやら僕には心理を読むより、何も考えずに取った方がいいと確認できた。そもそも、結城さんがポーカーフェイスすぎるのだ。


 結局、僕は一枚。結城さんは二枚という状況になってしまった。僕が取る番であるが・・。これはなかなかまずいことになってしまってる。巡り巡って、結城さんに行ったものの、彼女のカードから一巡目にジョーカーを引いてしまっている。


 僕は、また結城さんの目をじっと見つめる。しかし、今度は反応があった。なぜか下をうつむく。僕に顔を見られたらまずいということか。


「あの結城さん。それじゃカード取れません」


「あっ、ごめんなさい」


 下をうつむいたせいで、髪の毛によってトランプが取りにくい状況になっていた。


そして、顔も上に上がったところで、また顔を見つめる。


「おい、お前ら。早くしろよ」


「そうよ。長い」


 そうそうに上がった信長君と次に立花先輩である。


「臼井君、早く取りなさいよ」


「はい、では」


 僕は、右側を取ろうとした。僕はそのまま顔をじっと見つめていたから、口元が緩んだのを見逃さなかった。


「こっちです」


 僕は高らかに左側を取った。しかし、見てみるとジョーカーだった。結局次に結城さんが当たりを引いて見事に僕が負けたのであった。


それから、いろいろした。大富豪だったり、はたまたスピードであったり、ポーカーであったりと。


 しかしながら、僕は心理戦というものが絡むと超絶弱いのであった。楽しい時間は、あっという間に終わりを告げ、みな帰ってしまったのだ。


「楽しかったな」


 僕はまだ余韻を楽しみながらゲームをしていた。そんな時、僕は一日前のことを思い出していた。


「・・・・。あああ。聞くの忘れてた」


 ピンポーン


 僕は玄関の方にかけて行った。そこには先ほどまでこの部屋にいた黒髪ロングの女の子が立っていた。慌ててドアを開けた。


「どうしたんですか」


「定期を忘れたの。ちょっと入っていいかしら」


「はい」


 僕は快く快諾し、彼女を入れることにした。結城さんは場所が分かってるのか一直線に行こうとしていた。


 そういえば、なんかこういうとき言う言葉があったような・・・・。あっ、そうだ。


 僕は部屋の中に入ろうとする結城に腕を引っ張りそのまま壁ドンをした。


「男の部屋に一人で入って、何されても文句言うなよ」


 結城さんは何一つ表情を変えていなかった。・・・。何かまずいことでもしたかな。


「臼井君こそ、私に何されても文句言わないでよね」


 あれ・・・。なんかあの本と違うような気がする。やっぱり違っていたのかもしれない。


 そのまま結城さんは僕の襟をつかんで顔を近づけてくる。


「あの・・・。結城さん・・・」


「どうしたの。臼井君。何されても文句言わないよね」


 ガチャ。


そんな時、玄関のドアが開いた。僕と結城さんはそのままの状態でドアの方に目をやった。そこにはよく知ってる女性の姿があった。その女性を見て結城さんは、ぽかんとしていた。


「・・・・・・・。琥珀姉さん・・・」


「お姉さん・・・」


 結城さんは僕の言葉に反応していた。そう、この状態を目の当たりにしたのはまごうことなき僕の従姉である琥珀姉さんである。


「何をしていらっしゃるのですか。景・虎・君」


「・・・・。いや、これは。その・・・・。なんなんでしょう」


 僕は結城さんの方を見てみた。そこには、僕の襟から手を放さず固まっている結城さんがいたのであった。


「で、その人はなんなんでしょうか」


 固まってる結城さんが口を開いた。


「私はその・・・。臼井君の友達の結城千代です」


「それで・・・。友達の結城千代さんが何で景虎とキスしようとしていたのですか」


「いや、その。これは臼井君が壁に押さえつけてきて、そして無理やり」


 ちょっと・・・。この人何言ってるの。僕は、そんなことするつもりなかったのに。


「じゃあ、景虎君はなぜそんなことをしたのですか」


「いや、僕はその・・・。家にひとりで入ってくるときにこういうのを言うべきなのかと思いまして」


「何を言ったのですか」


「男の部屋に一人で入って、何されても文句言うなよです」


 僕は正直に言ってみた。しかし、琥珀姉さんの機嫌はずっとよくないままである。どうしたものか。


「景虎君は、いつそんな言葉を覚えたのですか。姉さん悲しいですよ」


「いや、それはその」


 なぜ姉さんは涙を浮かべているのだろう。僕は不思議に思った。


「言ってくれれば、姉さんがキスさせてあげますのに」


 そう言って、僕の方に近づいてくる。なぜだか、様子がおかしいように思える。



僕の目の前、いや顔がもう数センチという近さになっている琥珀姉さん、それを見ている結城さんという図である。


「琥珀姉さん何を…」


「景虎君は目を閉じてください」


そう言うと、琥珀姉さんが目をつぶってこちらにじわじわと迫ってくる。


この状況なんなんだ。僕はどうすれば…。


「ちょっと何をしてるんですか」


そんな声が聞こえ、その瞬間僕の腕ごと体が引っ張られた。


そして僕らは机の前に座っていた。

呑気にお茶を啜るのは琥珀姉さん、そして結城さんはジト目で琥珀姉さんを見ている。


うん、気まずい。


「景虎君、この子との関係は」


「景虎君とは....同じ学校の友達です」


「私は景虎君に聞いてるんです。で、どういう関係何ですか。答えようによってはこの子がどうなってもいいんですよ」


「いや、私ですか」


「はい、私が最愛なる景虎君に何かするわけないじゃないですか」


何かしようとしてたよね。ね!


僕は最愛なるというのに引っかかったが、まぁ家族だからそれもあり得るかと思いつつ、「何かするわけない」という先ほどの光景がなかったかの如くの手のひら返しに驚いた。


「というのは冗談にしておき、では結城さんはなぜあんなことをしたのですか」


冗談ってどこが!!!ね、どこが!!


僕は言葉にできなかった。


「それは少し、ラノベのワンシーンを再現といいますか」


「他意はないと.....」


待って。琥珀姉さん怖いって。


「異性とも思ってないと言うのですか」


「いや、そりゃ異性と言えば.....」


ん。何でそこで顔を赤らめてるの結城さん。確かに性別としては異性ですけど.....。それを言うだけではないですか。


「僕はちゃんと異性だと思ってますよ」


何だろ。普通のことを言ったはずなのになぜか2人が口をあんぐりしてこちらを見ている。


「景虎君、それはどういうことですか」


「いや、そりゃふつうにそう思っただけですよ」


「あの臼井君はそう思ってたんですね」


ん?何か2人と会話が噛み合ってない気もする。


「もともとそういう目的で結城さんと話をしに言ったんですよ」


...........。何だろこの空気..........。


僕は自身が放った言葉は意図しない言葉となって伝わってるのではないかと肌で感じたのであった。

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ボッチも積もればリア充となる 虎野離人 @KONO_rihito

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