第7話イジョウナニチジョウⅦ
雲谷は手を前に組んで僕の目を覗き込んだ。
「お前で7人目だ。」
私にはなんのことかわからない。
「自分の性別を勘違いするほど自己暗示をかけて事件の犯人だと思い込んでいる人間だよ。この事件とは別にお前と同じように自身を犯人だと思い込み、自首、もしくはそれを伝えてくる真似をしてきた者が4名。思い込みの末、犯罪を隠蔽しようとした者が2名いる。そして、それら全員が、自信を犯人だと思い込む前何者かに接触した形跡がある。」
雲谷顔を寄せて私に言った。
「僕はその何者かの調査のためここにいる。」
もう一度聞く。と雲谷はいう。
「お前は誰に騙されている。」
そんなわけがない。この事件は私が自分の意思で、私が瑠美を好きだから起こしたじけんだ。鈴村先輩は、たまたま私と一緒にいただけ、偶然私が回覧板を届けるのについてきた…偶然?
「おかしいだろ、なぜ回覧板を届けるのに鈴村が米村と一緒に来る必要がある。そもそもなぜ米村は鈴村と一緒にいたんだ。それは、米村が鈴村と付き合っているからだろ。思い出せ、お前は花江瑠美を殺してなどいない。」
そうだ。私は誰も殺していない。私は…誰も殺していないんだ。
「ご苦労様。」
千歳さんが労いの言葉と共にコーヒーを差し出してきた。
「千歳さん、僕コーヒー飲めないんですけど。」
千歳さんには前にも伝えたはずなのだが、覚えていないらしい。優秀な刑事さんらしいが、まだ僕にはその片鱗は見えていない。物覚えの悪い近所のお姉さんといった感じだ。
「コーヒーくらい飲めなきゃ女の子にモテないわよ。男はやっぱりブラックでしょ〜。きっとあの優等生ちゃんも男らしい人のが好きなはずよ。」
余計なお世話である。
「それでどうだった。」
千歳さんが話を促してきた。やっと本題に入れる。
「米村正美が花江瑠美を殺していないことと、事件後に男と接触したことを認めました。接触した奴についてわかったことは、それだけです。」
僕と話したことで米村は、自身の恋人が鈴村智弘であること、自分の記憶が改変する前に男と会っていたことを思い出した。
「それじゃあ犯人は」
「そうですね、鈴村智弘で間違いありません。かなり穴のある推理でしたが、米村の記憶を取り戻せたんで、確証のある証言を得られました。」
米村に話したことは、あくまで推測の域を出ない話だったので、米村が記憶を取り戻せなければ、事件の解決は難しかった。
しかし千歳さんは納得していないらしい。
「わざわざ能動の
千歳さんが「はあぁ」とため息を吐いた。
「そもそも能動の
そんなこと言わないでよとばかりに千歳さんがもう冷めたコーヒーを差し出してくる。
「あーそうだ。千歳さん、鈴村を逮捕するのちょっと待ってもらえませんか。ちょっと話をしたいんで。」
言いながら僕は差し出されたコーヒーを飲み干す。やっぱ苦い。
「そんなに長く待てないわよ。」
僕は頷いて席を立った。
能動の真実追求《Lie Detector》 右京虚宇 @ukyoukyou160294
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