第39話 定年退職
システムの削除 / 引き継がれない技術
2016年8月29日(月)午前5時30分に自宅を車で出た川緑は 6時30分頃に会社に入った。
この日は 彼の定年退職日であり 普段より1時間遅い出社であった。
川緑は いつものように守衛所の窓口で「おはようございます。」と言って 入出門時間管理表に入門時間と名前を記入して 守衛さんに技術棟の鍵を受け取ると 技術棟へ向かった。
彼は 技術棟の居室の扉を開けて 扉横の鍵掛けに鍵を掛けると その横に掛けてある実験室の鍵を持って 実験室へ行き 扉を開けて 室内灯を点けた。
実験室に入ると パソコンの電源を入れ 実験室の壁側へ行き 窓を開けて換気を行った。
実験室は 多くの水性タイプや非水性タイプのインクや洗浄液等が保管されており 薬品臭がする所であり 窓を開けると 朝のさわやかな空気が室内に流れ込んだ。
川緑は パソコンの画面で 会社のホームページの新着情報の確認と メールチェックを行うと モニターと本体の電源を落として それぞれのプラグを外した。
午前9時になると 川緑は パソコンを持って 隣の厚生棟の1階にある情報システム課へ行き「パソコンの返却に来ました。」と言った。
近くにいた情報システム課のメンバーは「そこの机の上に置いてください。後で データは消去しますので。」と言った。
返却したパソコンのハードディスクには ビジュアルBASICで作成したUV硬化型樹脂の硬化性の計算ソフトと そのソフトと連動した機械的強度の計算ソフトと それらのソフトを走らせるのに必要な250ギガバイトの数値データが入っていた。
会社は 企業秘密を守るために 退職者に 彼の保有する技術書類やパソコンのハードディスクやローカルネットワーク上のフォルダに保存された情報や 彼の頭の中にある情報を リストアップさせ その中で上司が指定する機密事項について 3年間秘密の保持を約束させる誓約書を書かせていた。
川緑は カラーLBP定着機開発関連の資料と 0603チップインダクタ開発関連の資料と BD光ピックアップ用樹脂材料開発関連の資料と UV接着技術開発関連の資料とパソコンのハードディスクにあるソフトと数値データをリストアップして 上司に提出していた。
上司は UV接着技術に関するものについては 不必要と判断して 川緑に それらを処分するように指示していた。
熊本事業場では 光ディスクドライブ事業の売却が決定されて以降 この事業に関わっていた技術者は それぞれの保有していた多くの技術資料を処分していた。
技術資料の処分は 技術棟の横に置かれたコンテナを用いて行われ それぞれの技術者が彼等の保有する資料を コンテナに投入し それが満杯になると 産業廃棄物処理業者により 焼却場に運ばれて処分されていた。
川緑は 彼の技術資料をコンテナに投入しながら これまで多くの技術者達により積み上げられてきた膨大な量の技術資料が 誰にも引き継がれずに消去されていくことに 喪失感を覚えた。
退職の挨拶 / 会社を後にする
午後1時の技術棟での昼会後に 川緑は 昼会の当番と入れ替わり 退職の挨拶を始めた。
「私は 皆様のお陰で 定年まで勤めることができました。大変ありがとうございました。」と切り出したが この言葉は 社交辞令ではなく 彼の本当の気持ちを表したものであった。
熊本事業場は 光ディスクドライブ事業以外に インクジェットプリンタ用ヘッドの製造販売を行っていたが それは完成された品質の商品ではなく 生産歩留まりが低いものであった。
数年前に杉下電気社の秋葉社長が来社した時に「インクジェットプリンタ事業は 10年後にもある。」と発言したことから 親会社の資金援助が始まり 収益が上がらないまま事業が継続されていた。
そのために事業場は 赤字経営を続け 同時に品質改善と歩留まり改善活動を続けてきていた。
その様な状況の中で 60歳まで仕事を続けられたのは 会社で働く全ての人達のお陰であった。
「私は 1995年1月に塗料メーカーから九杉社に中途入社し 材料部品研究所に配属になり 社内の事業部向けに新規材料やデバイスの開発に従事してきました。」
「その時の経験の中から 幾つかの開発事例と その時に私の印象に残った人物の話をご紹介します。 何か 皆様のご参考になることがあれば幸いです。」
「1998年に 佐賀事業部の商品企画課から カラーLBP定着機の開発の依頼がありました。 当時 佐賀事業部では 月に5000台程のカラーLBPのOEM生産を行っていました。 上位機種の複合機は 1台当たり100万円程の価格であり 相当な事業規模でした。 カラーLBPに搭載される定着機もOEM元で設計されたものでした。」
「この定着機は ヒートロールと これに隣接するプレッシャーロールと ヒートロール表面に離型オイルを塗布するためのウェブロールとで構成されており、これら2つのロール間にトナーを転写した紙を通して 熱圧着することにより画像を形成する仕組みでした。」
「この定着機の保証する印字枚数は3万枚でしたが 市場に出された定着機で 1万枚 あるいは5千枚程の印字枚数で定着不良を引き起こすトラブルが多発していました。 この定着不良には 定着時にトナーがヒートロールに付着して 次の紙についてしまうオフセットという現象と トナーが紙をヒートロールに巻きつけてしまうジャムという現象がありました。」
「佐賀事業部は 定着機のトラブルの対策として 材料部品研究所へ 保証枚数6万枚の定着機の開発を依頼しました。 依頼を受けて 私は 新規定着機の開発を始めることになりました。」
「最初に 私は 定着機の特許調査を行い 現行の定着機の設計思想を見極めました。 その上で 独自の定着機を作るための設計思想を立てて 開発に着手しました。」
「新規定着機の開発に当たり 設計思想を具体化する際に必要な『ツール』の開発も行いました。 『ツール』のひとつは ヒートロール表層材の表面エネルギーの計算ソフトでした。 表層材の表面エネルギーは 離型オイルの濡れ性や表層材の耐久性に関わる要因であり 同時に ヒートロール表層材の硬化状態に大きく影響される要因でした。」
「ヒートロール表層材の表面の硬化性を厳密に理解するには 独自の硬化の理論が必要でした。」
「私の開発した計算ソフトは ヒートロール表層材の硬化状態と表面エネンルギーを数値化したデータを基に 表層材に最適な離型オイルの表面張力特性を求めるものでした。」
「このソフトを用いた計算結果は 定着機の表層材とオイルの最適な組み合わせを示唆するものとなり 定着機を構成する材料の設計方針を決めるものとなりました。」
「また『ツール』のひとつは 定着時に紙に伝達される熱量の計算ソフトでした。 定着機の熱伝達性は 定着機の定着性能や定着時の画像品質に影響する要因であり 同時に ヒートロールを構成する樹脂材料の硬化状態に大きく影響される要因でした。」
「計算ソフトは 定着時のヒートロールの温度変化のデータを測定することにより 定着機を構成する それぞれの材料の熱伝導率と熱容量と塗布厚み等の数値データを基に 定着に消費される熱流量を求めることが出来るものでした。」
「計算ソフトを用いた計算結果は 定着機を構成する それぞれの材料や それらの最適な組み合わせを示唆するものとなり ヒートロールの設計方針を決めるものとなりました。」
「このような設計思想と開発『ツール』を用いて開発した定着機は 要求された6万枚以上の定着が可能であり 上質紙では10万枚の定着が可能でした。」
「新規定着機開発の案件は 事業部との契約期間内に引継ぎを終えて その後 新規定着機は 国内向けカラーLBPの一部の機種に搭載されました。」
「その数年後に 佐賀事業部の機構技術の担当者から 私に連絡がありました。 彼は OEM元から 新規定着機を カラーLBPの主力の機種に登載したいとの依頼があったことと 今後 事業部での新規定着機の対応を協議することと 私に会議に参加するようにと言いました。」
「数日後 私は 指定された時間に佐賀事業部の会議室へ入ると そこに居た機構技術のメンバーは 私に 上からの指示で会議は 開始時間を早めて行われたことと 会議では OEM元の依頼を断る事が決まったと言いました。」
「彼によると 現行の定着機のトラブル発生時には OEM元がこれを保証しているが 新規定着機でトラブルが発生した場合は 自社が証することになり そのリスクは負えないという理由から OEM元の依頼を断る判断に至ったとのことでした。」
「機構技術のメンバーは 『私達は これまで 現行の定着機のトラブルが発生した時に 新規定着機に交換することで助けられて来ました。 今回 OEM元の要望に答えられないのは残念です。』と言いました。」
「私は事業部の決定に対して コメントすることはありませんでしたが 自社製品の設計思想の良し悪しが判断できない責任者 自社製品の技術や品質を信頼できない責任者 そういう人たちがマネージメントする事業部は 将来がないと思いました。」
「話は代わりまして。」 と言って 川緑は次の開発事例に話を移した。
「2001年7月に 宮杉社の技術部長から電話がありました。 彼は『川緑君 君 すぐに来てくれんかね? まず 3か月間来てもらえんだろうかと思うとる。』と言いました。」
「宮杉社は 九杉松社と杉下電気社との共同出資会社で 電子部品の委託生産を行っていました。
しかし 電子部品市場のグローバル化が進み 製品単価が下がり 売り上げが落ちてくると 杉下電気社は 宮杉社への出資を止めて 生産設備ごと製品の回収を始めました。」
「そこで 宮杉社は 生き残るために 独自の新製品開発に着手していました。 その製品は 0603チップインダクタという電子部品で 外寸が0.3mm角×0.6mmの ゴマ粒くらいの大きさのコイルでした。」
「 0603チップインダクタは 当時 世界最小のコイルであり あまりに小さいので それを作るのに 従来の製法が使えないものでした。 そこで 宮杉社では このコイルを作るために新規工法を検討していました。 それは 電着UVエッチィングレジストを用いた工法であり 簡単に言うと プリント回路基板を作る工法を この微小なコイルに適用しようとしたものでした。」
「技術部長は 私に『この1年間 ラボラインで 0603チップインダクタの開発を行ってきたが 物ができてこない。これが できるものかどうか 3ヶ月間で見極めてくれ。』と言いました。」
「3ヶ月間というのは その時までに 0603チップインダクタの量産設備を導入しないと ビジネスチャンスを逃してしまうからという理由でした。」
「私は 直ぐに 派遣対応で 0603チップインダクタの開発支援を行うことになりました。」
「0603チップインダクタの製法は まず 直方体のセラミック基板に銅メッキを施し YAGレーザーを用いて メッキをコイル形状にトリミングした仕掛品を作製します。 次に この仕掛品の両端を冶具で固定し ポジ型電着UVレジスト浴に浸漬し 通電してレジスト皮膜を電着します。
「次に マスクを用いて仕掛品のコイル部分をUV露光し 現像し レジストを除きます。 その後 レジストを除いた部分に絶縁用の電着塗料を電着し乾燥します。 最後に 仕掛品の端部に残ったレジスト皮膜を剥離し 端子メッキを施して完成します。」
「現状は それぞれの工程で 不具合が発生して 完成品が得られない状況でした。」
「私は 支援業務に着手すると まず 0603チップインダクタの設計思想を吟味しました。 一連の加工プロセスの一つ一つについて そこに用いられる材料や部品の仕様が合理的なものかどうかを検証しました。」
「設計思想が正しいものであると判断した 私は 一連の加工プロセスで起きていることを検証するためのモデル実験を行いました。」
「一連のモデル実験が終わると 私は 技術部長等に 新工法を用いた0603チップインダクタの作製が可能であることを伝えました。」
「宮杉社では 0603チップインダクタの量産設備の導入が行われました。 最初に 量産設備を用いて作られた0603チップインダクタの歩留まりは5%くらいでした。 生産技術や技術のリーダー等は 直ぐに 歩留まり対策会議を開き 改善策を検討しましたが 何か効果的な対策がとられることはありませんでした。」
「私は 3ヶ月間の契約で派遣対応を終えて 引き続き 0603チップインダクタの量産支援を行うことになりました。」
「職場では 午後5時になると 近くの談話室に 0603関連の生産技術、技術、製造の担当者等が集まって休憩していました。 私は その場で 歩留まりの改善策について話しました。」
「すると 翌日には 歩留まり改善のための道具が揃っていました。 改善活動を始めてから3ヵ月後には 歩留まりは 100%近くまで改善していました。」
「0603チップインダクタ量産支援は 引継ぎを行い ミッションを完了しました。その後 宮杉社では 0603チップインダクタの市場へのサンプル出荷が行われました。」
「数ヶ月後に 宮杉社の勝田技術部長から私に連絡がありました。 彼は 私に 兵庫県にある豊岡杉下電気社へいって そこの0603チップインダクタの製造 ラインを見てくるようにと言いました。
「豊岡杉下電気社は 杉下電気社直轄の工場の1つであり そこの0603チップインダクタと 宮杉社のものとのコンテストが予定されていて 優れた方が杉下電気社に採用されるとのことでした。」
「その後 私は 宮杉社の技術者等と 豊岡杉下電気社を訪ね 生産ラインを見学しました。
先方の生産ラインは 直方体のセラミック基板に銅メッキを施し YAGレーザーを用いて コイル形状にトリミングし仕掛品を作るところまでは、宮松社と同じでした。」
「その後工後は バレル工法と呼ばれるもので ボールミルと粉体塗料を用いて 仕掛品表面に粉体塗料を付着させ 加熱硬化させる工程があり、その後 端子部分の粉体をYAGレーザーで取り除き 端子メッキを行うものでした。」
「先方の技術者によると この工法は 歩留まりが悪く 良品を選別しているとのことでした。」
「私は 先方の0603チップインダクタの生産工法は良いものではなく その設計思想は良くないと感じました。 この工法では粉体塗料の厚みをコントロールすることができず そのため 塗料を硬化した時に 硬化状態にばらつきが生じ 製品の品質を確保できなくなると予想されました。」
「数ヵ月後に 私は 宮杉社の技術者から 0603チップインダクタのその後について聞きました。 彼は 自社品は採用されずに 豊岡杉下電気の製品が採用されたと言いました。」
「ちょうど その頃に 私は 宮杉社の技術部長と会う機会がありました。 彼は 『川緑君 会社というものは 必ず儲かる いい製品ができたら必ず儲かるようにできておる。 それが儲からんのは マネージメントが悪いからだ。』 と言いました。」
「私は 彼の言葉に 0603チップインダクタ採用杉下電気社の判断は 政治的な要素が大きかったと感じました。」
「製品は 品質が第一であり その品質は製品の設計思想によって決まるものであるとすれば 杉下電気社は 設計思想の良し悪しで 製品を選ぶべきと思いました。」
「私は 優れた製品の開発には その背景に 優れた設計思想と優れた技術基盤が必要であり その事を理解できない責任者等がマネージメントする会社は 将来が無いと思いました。」
「また 話は代わりまして。」 と言い 川緑は 次の開発事例に話を移した。
「2003年に 向こうにいる作本主任技師から相談を受けました。彼は 『ブルーレイの光ピックアップを設計しているんだけど ハイパワーの青色LDに耐える接着剤がないのよねー。 何とかなりませんか。』 と言いました。」
「当時 ブルーレイ光ピックアップ用接着剤の評価は 技術の古澤さんが行っていました。 彼は 光学接着剤メーカー十数社から 約20種類の接着剤を取り寄せて 青色LD光への耐光性試験を行っていましたが、いずれも 青色LDの光に耐えない結果でした。」
「依頼を受けて 私は BD光ピックアップ用青色耐性接着剤の開発を行うことになりました。 これまで行ってきた開発の事例と同様に まず 設計思想を立て 接着剤に求められる機能をリストアップし それらの機能に優先順位をつけて 開発に着手しました。」
「青色耐性の接着剤の開発が可能かどうかは 接着剤を構成する分子構造が 青色LD光の持つエネルギーに耐えるかどうかであり それは接着剤の硬化状態に依存するものでした。 そこで 私は 硬化の理論を基に 実験を行い 接着剤の選定と 接着仕様を決めました。」
「ところが 実際は 計算通りに行かなくて 青色耐性を有すると考えられる接着剤が 試験に耐えられない結果となりました。 そこで NGサンプルの分析を行い NGの原因を突き止めて その原因を取り除くことにより 青色耐性を有する接着剤を開発しました。」
「BD光ピックアップ用青色耐性接着剤は 事業部に引継がれて その後 BD光ディスクドライブの市場への出荷が行われました。」
「後日に 事業部の技術者から聞いたところ 青色耐性接着剤引き継ぎ後のBD光ピックアップのものづくりが大変だったとのことでした。」
「青色耐性が要求される光学部品の1つの光集積素子は その部品を加工する工程で 青色耐性接着剤を用いて ガラス基板を多層に貼り合わせ その後 多層基板を斜めに切り出して 数ミリメートル角のキューブ状に切り出すものでした。」
「柔らかい接着剤を硬いガラス基板で挟み込んだ多層基板の加工は 難しいものでしたが その加工をやってくれた人がいました。 彼は この加工をこなし それを光学部品の量産仕様に落とし込みました。 その方は 丁度 1年前に 定年退職された 石塚さんです。」
「これまで 私は 塗料メーカーと電気メーカーに勤めて 多くの腕のいい技術者を見てきました。
石塚さんも その一人で 腕のいい技術者は それぞれに独自の思想をもっていて その思想に基づいて良いものを作ることができますし 出来たものの素性の良し悪しを見分けることもできます。」
「彼は 以前から彼の技術を後輩に伝える義務があると考えていたそうです。 しかし彼の技術は後輩に伝えられることはありませんでした。」
「彼のような優れた技術者の技術が 後輩に伝えられずに失われてしまったことは 会社の技術力を大きく低下させていると思いました。」
「以上 私の担当しました業務の中で印象に残ったことを お話しましたが その経験から思うところについてお話します。」
「私は 以前に勤めていた会社での業務経験も含めて 会社の責任者達の中には 技術者の興味のある仕事や 彼が追求したい課題について 理解を示す人は少なかったと感じています。」
「会社の責任者等は その年に策定された事業計画の達成に拘ります。 製品の販売額に拘り ステークホルダーへの成果報告に拘ります。」
「そのために彼等は 技術者に作成させる業務計画を その年に収益が見込めるものに限定し 彼等が理解できるものに限定し 業務計画の進捗を技術者の評価の基準にします。」
「優れた技術者にとって 会社の責任者が簡単に理解できるような業務計画は とてもつまらないものでしょう。」
「優れた技術者が追求したい仕事は 彼の知識を更に広め 彼の技術を更に深めて 到達できるかどうかという難題であって そう簡単に達成する事ができないものです。」
「しかし 彼の取組む仕事の成果は 会社の技術力を向上させ 新しい技術基盤を作り 新規事業の創出に繋がるものです。」
「優れた技術者は 彼の仕事が会社の経営に貢献すると思い あるいは思わなくても 彼は 会社に 仕事に必要な 人材や研究費を要求するでしょう。」
「しかし 会社の責任者は 直には収益が見込めない あるいは 彼等が理解できない新しい技術開発や技術基盤の構築には リスクを恐れて二の足を踏んでしまいます。」
「新しいことにチャレンジできない会社は その技術力が低下していき 新規事業創出のチャンスが訪れた時に 開発競争に勝ち残る事が出来ずに 衰退して行きます。 今の会社の状況は そういうことだと思います。」
川緑は「私の話は以上です。 今後は 皆様に 技術者が活躍できる会社に変えていってくれることを希望し 皆様のご活躍を期待しています。 お世話になりました。」と言って退職の挨拶を終えた。
挨拶が終わると 川緑は チームのメンバーから花束を受け取って 退出した。
午後2時頃に 夏の日差しが強い中 技術棟を出ると 川緑は 正門で 守衛さんに「お世話になりました。」と言って 会社を後にした。
電気メーカーで働く /樹脂材料技術者 川緑清 @ykiyo
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