73.悪魔たらしのハル
「アンタ達ね、流石に友好を結んだパーティーで喧嘩を始めるのはどうかと思うのよ」
「その通りです……」
パーティーであること且つこの2人が高貴な身分であることを考慮して流石にこの前のように正座はさせてはいない。
しかし、先程の行動に関しては1回叱っておかないとダメだと思い、ハルは小声で説教した。
ハルは遠くにいるとある1組の悪魔と天使を手のひらで指しながら2人に言った。この1組のペアはリリスとガブリエルだった。
「ほら、あなた達の母親を見てみなさい? ちゃんと仲良くしてるでしょ? なのに娘で王女である2人が喧嘩してどうするの?」
その言葉にミカエルとルシファーはハッとし、すぐに黙る。そして、互いに謝ったのだ。
「さっきはごめんね……」
「こちらこそ、少し熱くなっていたようでした」
そう言い、2人は仲直りし互いに握手した。
ハルは自分はもう用済みだと思い、その場から抜け出し、ショコラを探そうとしたが、その途中で数人の美丈夫の悪魔に囲まれた。
その悪魔は先程ハルに殺すような目線を向けていた王子達だった。
「……あの……悪魔にこれ言うのはどうかと思いますけど、男性多数で女性1人を囲むのはどうかと思いますよ……?」
「うるさい! オマエに俺らの気持ちが分かるか!?」
ハルは至極もっともなことを言ったが、囲んでいた悪魔の1人はそれを泣きながら遮った。
そして、それとは別の悪魔が血涙を流しながらこう言った。
「ついこの前までは兄様、兄様につきっきりだったルシファーが最近は貴様の話しかせん!」
「つきっきりならいいだろ! オレは反抗期でちょくちょく無視されるんだぞ!?」
「しかも昨日デートしたと聞いたぞ!」
「どうやってルシファーちゃんたぶらかした、この悪魔!」
(悪魔に悪魔って言われたくないわ!)
ハルは見えないところに青筋を立てて彼らの言い分を聞き流していた。
すると、1人の悪魔がハルに向かって攻撃を仕掛けてきた。彼は短剣を持っていたがいつ仕掛けたのか闇の魔法が少し強めにかかっていた。
あ、これは少しマズいなと思ったハルだが、その瞬間その悪魔はまるで時が止まったかのように制止した。
「全く、この国に来てからも世話を焼かすんじゃないよ」
「ショコラさん!」
悪魔達の柵からハルはひょこと覗き悠々と登場するショコラを見つけた。ショコラは指を振っただけでその悪魔の動きを止めたのだ。
すると、先程とは違う悪魔がうろたえ始めた。
「お、おいこの女……『時の魔女』ショコラじゃねえか……」
「え、じゃぁ……」
その悪魔のうろたえが感染したかのように他の悪魔達も怯え始めた。
ショコラはころころ笑いながら悪魔達に言う。
「キミ達その人を知ってるかい? 彼女は女王2人を部下にして、悪魔と天使の国交を結ばせるほどの力を持つぜ?」
「な、な、な……」
確かにそれほどの力があればルシファーは自分たちよりハルに懐くのは当然だと思った悪魔達はすぐに忠誠の姿勢になり、ハルに行った。
「た、大変申し訳ございませんでしたぁぁぁ!」
「いいよ……別に……」
その後、王子達からも甲斐甲斐しく世話されるハルとその姿を見たルシファーが「アタシも世話するー」と言いだし、ハルの疲れと緊張はピークに達した。
ハルはパーティーが終わった後疲れが溜まりにたまったのか、すぐにベッドに倒れ、そのまま眠り込んだ。
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