72.天使族の一団

 しばらくの間ハルは衣装部屋兼控室で本を読んでいたが、突然ドアがノックされ、侍女の一人が入ってきた。  



 「ハル様。陛下達の支度が終わりました。至急大広間に来てくださいとのことです」

 「分かったわ」

 ハルは椅子の上に読みかけの本を置き、侍女や衛兵と共に大広間の方に向かった。

 そこにはセクシーな深紅のドレスを纏ったリリスと闇のような黒のワンピースを纏い、綺麗に着飾ったルシファーがいた。



 「リリス陛下。ただいま参りました」

 「うむ、ハルちゃん……。まぁべっぴんさんになって!」

 「ね、そうでしょ? 昨日一緒に買い物行ったけどハルは何着ても似合うもの」

 「ルシファーの見立ては凄いの!」

 と、上機嫌に笑う2人だったが、ハルは内心(いや、あなた達の方が綺麗でべっぴんですけどね……)と思っていた。

 ハルはふと気づき、とある疑問を口にした。



 「そういえば、ルシファーってお兄さん達いるよね? その人達は……」

 「兄様達なら別室よ。昨日のこと話したら『誰だその女!』とか言っちゃって」

 「……なんかごめんね……」

 「いいのよ別に」

 ルシファーは無邪気に笑った。



 さて、会場には既に大量の悪魔が来ており、パーティーを楽しんでいるようだった。

 そこに既に会場入りしていた悪魔国の王子殿下が揃い、またルシファーとリリスそしてハルが入ってきたことにより、更に熱気はあがった。

 一瞬ハルは初めて見る王子殿下達を見たが、ハルが見た途端視線が殺気立っていたのでこれは一悶着ありそうだな……と思いながら玉座の方へと向かった。



 さて、ルシファー達も位置に着き、リリスは玉座、ハルはその隣にある豪華な椅子に座る。

 ハルはその中にショコラ達を見つけた目線を合わせる。ショコラは少しハルを馬鹿にしたようにプッと笑ったが、ハルは何とか自分を抑えることにした。

 その事を確認したこの国の宰相らしき悪魔が厳かに宣言した。



 「それでは、天使国と悪魔国の国交締結として来賓を招待しております。それでは門をあけい!」

 宰相がそう言うと、門番が恭しく扉を開ける。そこには天使国の一団がおり、女王ガブリエルを始め、王女ミカエルそして彼女の兄弟姉妹が入っていった。

 そして大広間の玉座の前に来ると、リリスとハルは玉座からおり、ガブリエル達に丁寧に挨拶をした。



 「天使国からはるばるようこそ、ガブリエル女王陛下。本日はお楽しみくださいませ」

 「ええ、お招きありがとうリリス女王陛下。精一杯楽しませてもらうわ」

 2人が和やかに挨拶を終えると、パーティーは再開され、天使も悪魔も各々会話を始める。

 最初は少しぎこちなかったが、だんだんと打ち解け始め、次第に談笑の輪が広がった。



 ハルは先程見かけたところにいるであろうショコラに文句を言おうと会場を歩く。しかし、そこでミカエルに捕まったのだ。



 「ハル様! お久しぶりです!」

 「あら、ミカエルじゃない元気?」

 「はい! でもハル様に会えなくて寂しかったです……」

 「それは……悪かったわ……」 

 と、ハルは彼女の頭を撫でる。すると、そこにルシファーがやって来た。


 

 「ちょっと、何すんの! この自称無垢!」

 「あら、いたんですの」

 「あらじゃないわよ! アンタ何ハルにベタベタしてんの! 離れなさいよ!」

 「いーやーでーすー」 

 「はぁ!? 何やろうっての?」

 「まぁ、怖い。すぐに暴力に訴えるなんて……」

 といいながらミカエルもドレスの裾に隠していたナイフを取り出そうとしている。

 その気配を察知したハルは2人を他の人に見つからないようにこっそりと止めた。

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