71.身支度大騒動
衛兵と侍女に連れられてハルはいわゆる控室みたいなところにやって来た。そこには色取りどりのフォーマルなワンピースが所狭しと並んでおり、また近くには専属のメイクアップアーティストやヘアスタイリストもいたようだ。
ハルは促され、まずは服を決めるとこになった。
「ところで、ハル様いかがいたしましょうか」
「そうね……露出度は出来れば控えめにして欲しいけど……後は特に……」
「お任せを」
そういうとスタイリストはそそくさとドレスの方に行きあっという間に何着か持ってきた。
「とりあえず長袖で明るめの色のものをもって来ました」
「あ、ありがとうございます……」
ハルはハンガーに掛けられた何着かのドレスを見た。色はどれもパステルカラーで可愛らしい感じであるが、服は袖がうっすらと透けていたり、スカートがフレアやタイトになっていたりと様々だった。
ハルはその中から特に気に入ったものを選び、鏡の前で確認した。
「この色いいなー……でも髪と被るか……。これはいいけどちょっと露出がね……」
と数分かけて悩んだ結果、ハルは淡いグリーンーのワンピースを選んだ。袖がレースになっており、若干透けているが、そのレースの柄が凝っているためハルはかなり気に入り、着ることにしたのである。
「これにします」
「……随分と早いですね……」
「もうちょっとかかった方が良かったです……?」
「いえ、女王陛下及び王女殿下……まぁご兄弟の王子殿下も似たようなものですが最低でも20分は選びますので……」
「はぁ……」
ハルも読書好きで普段は引き籠もっているが読書するために外に出るときはある程度オシャレするし、使う場面なぞあまりなかったが、ドレスコードも頭に入っていた。
スタイリストはハルからドレスを優しく受け取ると早速着せ替えた。
「しかしまぁ、ハル様美人ですね。落ち着いた感じがあって綺麗です」
「あら、そう? お世辞でも嬉しいけど……」
「お世辞じゃないです!」
そう強く侍女がいい、ハルはその圧に押されそうになった。
「後はそのドレスに合う靴やストッキングをこちらで用意しておきますので、そちらに腰掛けて下さい。ヘア担当とメイク担当任せましたよ」
「は、はい……」
ドレス担当の侍女は靴やアクセサリーがたくさんある部屋へと向かった。ハルは椅子に腰掛けた。すると、すぐにメイク担当とヘア担当の悪魔がやって来たのだ。
「ハル様本日はよろしくお願いします」
「こちらこそ」
そう言って、2人は早速仕事にとりかかった。
「しかしまぁ、ハル様綺麗ですね……髪も透き通っていて……」
「肌も素敵……どんな手入れを……」
「まぁ、ちょっとしたスキンケアね……」
「いいなぁ……」
悪魔2人はハルに惚れながら仕事をしていたが当のハルは(転生するときのサービスなんだよね……言ったら驚かれるから言わないけど……)と心の底で思いながら黙っていた。
「出来ました、鏡をどうぞ」
「ありがとう……誰この美人!?」
ハルは前に出された鏡を見て驚いた。そこには髪をハーフアップにし、ナチュラルメイクの美人がいた。そのあまりの変わりようにハルは驚いた。その時、先程まで出ていた侍女が帰ってきた。
「あら、とんでもない美人さんになりましたね、ハル様! あ、こちらこのドレスや髪飾りに合うアクセサリーやパンプスを用意しましたわ! さぁ早く」
「は、はぁ……」
ハルは侍女にエメラルドをあしらったネックレスとルビーがキラリと輝くイヤリングをつけ、ドレスの色と同じパンプスを履いた。
その姿に侍女3人は感嘆の叫びを上げた。
「美しいわ! こう言っては何ですけど陛下よりも!」
「バカ、不敬になるでしょうが! でも事実よね!」
「ハル様、流石ですわ!」
キャーキャー騒ぐ侍女達を見てハルは完全に固まっていた。そこで恐る恐る声をかけた。
「あの……そろそろ会場の方に行っても……」
「あ、忘れておりましたわ。案内いたしますね」
「といっても陛下も殿下もまだドレスを選んでるかですし……」
「時間になるまでここにいますか?」
「そうね……とりあえず本があればいいから……」
「分かりました! 持ってきますね!」
ハルはそこでルシファー達の支度が終わるまでそこにいることにしたのだった。
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