第十四章「魔界と天界の和平締結祭」

62.女王達からご招待

 「ホントに平和ねぇ……まぁ平和な方が読書に集中出来るからいいんだけど」

 「どっこが平和な方が良いよ。この前悪魔と天使の女王を従わせて無理矢理和平させたやつが何言ってんだが……」

 「仕方ないでしょ、図書館破壊しようとしたんだから」

 平和ねとぼやくハルに対し、ショコラは悪態をついてハルを睨む。そんな二人のやりとりをリリィ達3人は生温かい目で見ていた。



 「……ハル師匠って規格外ですよね……」

 「ホント……」 

 「いつかはああなれるのかなぁ……」

 「ならんでいい、ならんで」

 ハルに対してますます憧れと尊敬の気持ちが増す弟子達に対し、ショコラは首を振りながら制止する。

 いつものようにのんびりとした空間になっていた図書室だったがそこにサフィがパタパタと走ってやって来た。彼女の手には手紙が2通あり、息を切らせながら、こう言った。



 「手紙を預かりました」

 「手紙? 何、ショコラさん宛の?」

 「いえ、ハル様宛てです」

 「はい!?」

 「え、師匠文通する相手いたんですか!?」

 「いや、そんなこと無いけど……」

 読書するためにこの世界にやって来たハルは交流は基本屋敷内の住民としかしてないし、文通など以ての外だ。



 不審に思いながら、封を見ると、そこには天界の女王ガブリエルと魔界の女王リリスと書いてあった。

 あまりの出来事にハルは驚き、しばらく震えていた。そんなハルの様子を見たショコラがハルから手紙をとったが彼女もまた同じ反応をしたのだ。



 「え、ちょっと待って? 昨日の今日よね。まさかこの前の報復とか……」

 「マジかよ……ちょっと怖いな……」

 「師匠、2国相手に喧嘩売ったんですか?」 

 弟子達も2人の様子を見て恐れていた。しかし、このままではダメだとハル達は2つの封を開け、手紙を取り出した。

 すると、いきなりガブリエルとリリスが現れた。



 『ハル様、ご無沙汰しております。ガブリエルです』

 『よ、ハルちゃん久しいな! わらわだよリリスだよ』

 いきなり現れた2人(といっても実物よりかなり小さいが)に驚くハルは小さく「こんにちは……」と返すことしか出来なかった。

 しかし、それ以上に驚くことが起こったのだ。



 『あの後、私たち本格的に和平を結ぶことにしましたの』

 『いつまでもいがみ合ってちゃあダメだってね』

 「はぁ……それは何より……」

 『そこで、そのきっかけとなったハル様を天界にご招待しようと……』

 『ちょっと、ガブリエル! 何抜け駆けしてんだい!! こっちが先に招待するんだよ!』

 『割り込まないで、リリス』

 『何だと、やる気か、ガブリエル』

 和平を結んでも仲の悪さは相変わらずの2人であり、紙越しだというのに武器を取り出して戦おうとしていた。それを見たハルは慌ててこうとりなした。


 「じゃ、じゃんけんで決めませんか!?」

 『じゃんけんとな!?』

 「はい、じゃんけんとは……」

 そう言ってハルはじゃんけんとは何かを解説した。



 『なるほど、拳が掌に弱くて、掌が二本指に弱く、二本指は拳に弱いのだな』

 「はい、では私が最初は、と声をかけますのでそこからじゃんけんして下さい」

 『分かりました』

 「それではいきます、最初は拳」

 『ジャンケンポン!』

 と声をかけたのはいいものの5分近くの間あいこが続き、ハル達は半分呆れたように見ていた。

 

 そこからまた5分経ったぐらいにようやく決着がついた。


 『やった!わらわの勝ちじゃ! 』

 『くっ……負けてしまいました……』

 手紙の上で喜ぶリリスと反対に落ち込むガブリエル。ハルはそれ見て2人に言った。


 「分かりました。では先に魔界に行って、後で天界に行くことにします」

 『え!? 天界にも来てくれるのですか!?』

 「はい、両方に招待された以上どちらも行きたいので」

 『そうですか! ありがとうございます!』

 『では、ハルちゃん、1週間後迎えに来るぞ』 

 そう言って、2人は消え、手紙は机の上に落ちた。その様子をずっと黙ってみていたショコラはハルに言った。



 「……後で屋敷の皆に説明な」

 「……はい」

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