44.内装作りはユニーク優先!?
ダンジョンの大体の構造が作られ、今日からはダンジョンの内装――要は、モンスターやトラップの配置――を決めていこうとなった。
4人は現在、ダンジョン階段前の草原におり、相談していた。
「ということで、モンスターやトラップの配置を決めて欲しいのです。大体はこの設計図通りにしますが、一部、貴方たちにも自由に決めて貰いたいのです」
「いいの? そんな事して……」
「皆様には感謝しておりますから」
ハル達が恐縮していると、ミスティは笑顔で返す。ハル達はミスティからダンジョンの地図といつでも戻れる要にテレポート用の魔法石を渡され、各々ダンジョンの部屋に向かうことになった。
「~~♪~~♪」
「ミスティー、順調?」
「ショコラさん、もう終わったのですか?」
「まぁね、しっかし、終盤の十九階層を任されるとは思わなかったわ」
「ショコラさんは強い人ですからね」
「よせやい、照れるって」
ミスティに褒められ、ショコラは照れる。ショコラはミスティに困ってることは無いか相談した。
「ところでミスティ、モンスターとかはどうしようと考えているの?」
「そうですね……ここどう見ても初心者向けのエリアじゃないですか。だからモンスターも少し弱めにしてますね」
「へー、どんな? ミニゴレームとかスライムとか?」
「ミニレイスにビックリおばけ、あと火の玉ですね」
「属性:幽霊だけじゃねーか!」
「ダメですか?」
「……幽霊ダンジョンって勘違いされたくなければ今すぐ変えなさい」
「ダメかぁ……」
ミスティは幽霊の一部を引っ込めたが、今度はゾンビやミイラを繰り出そうとしたため、ショコラが召喚させることで落ち着いた。
「よーし、ここにこの本を設置して、あ、何かドリンクサービスつけとこ、うーん……ポーションの方が良いかな?」
「……オマエ、何やってんの?」
「あ、ショコラさん。仕事早いですね。何ってトラップですよ」
「……私には図書館を作ってるようにしか見えないんだけど?」
「嫌だなー、本があれば何でも読みたくなりません? なので面白そうな本を集めてトラップを……」
「オマエだけだ!」
ショコラはハルにツッコミを入れる。どうせこの読書バカのことだ、屋敷で何かあったら、丁度いい隠れ蓑にする気だなという本音はさすがに隠したが。
しかし、着いてきたミスティはまんまと罠にはまった。
「ぐ……続きが気になる! もう1冊だけ……!」
「何引っかかってんだ制作者!」
ショコラのツッコミも虚しく、結局ミスティはハルの新作である冒険物を全て読むまで動かなかった。
「……ルチア、アンタは何作ってんの?」
「あ、ショコラ、ミスティにハルまで」
「だから、何作ってんのよ」
「女の子が好きそうな物を集めたお店!」
「ダンジョン内で商売するな。なぜこういう物を作った?!」
「え、可愛い女の子が来たら即座に攫って……いてて!」
「私という者がありながら! この浮気者!」
「オマエはまーだ懲りないのか……」
「当たり前だろ!? 大体今回の計画に賛同したのはさっさとミスティに成仏して欲しくて……」
「ルチアさん、その発言マズくないですか!?」
「あ、やべ」
さらりと今の恋人(のような存在)にさっさといなくなって欲しいというクズ発言をしたルチアに対し、ミスティが盛大にブチ切れ、たくさんの霊を彼女に向かわせた。しばらく霊に埋もれるルチアをショコラとハルは冷や汗を流しながら見ていた。
さて、ようやく霊から解放されたルチアをほっぽり出し、3人はショコラの階層にやって来た。まだダンジョンとして機能してないため、モンスターもトラップも発動していないが、どこから見ても最下層に近いところのダンジョンとしては普通にあるものだった。
「……つまんな」
「……面白み無いですね……」
「悪かったな面白みも何も無くて」
ダンジョンとしてはショコラが作った内装が一番正統派かつまともなのだが、全くユニーク性を感じられないため2人は即座に興味を無くした。その事にショコラは思わず怒鳴る。
「そもそもアンタたちちゃんとあの本読んだの!? という割には結構モンスターの配置とかトラップとか偏ってるけど!?」
「ショコラさん、あの本刊行当時とは違うんです!」
「そうよ! 時代をちゃんと先取りしなくちゃ!」
「先取りしすぎだ!」
そこにギャーギャー騒いでいる3人を追うようにルチアが入ってきた。ルチアは少しボロボロだったが、気にせずショコラが作った内装を見てポツリとこぼした。
「……ショコラのクソ真面目が表れてるつまんない場所だな」
「なんだとゴラ、泣かしたるムキー!」
自分の内装をボロクソに言われたショコラは杖に火を灯したまま、3人を追い掛け始めたのであった。
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