42.死体と修羅場

 ハルの提案でダンジョンを完成するためにダンジョンの知識及び造るための知識を徹底的に入れた4人は、かつてミスティがダンジョンを造った場所に来ていた。



 「ここです」

 「……見えないけど……?」

 「あ、忘れてた」

ミスティは人差し指を1回転させ、何らかの魔法を唱える。すると、草原の中から階段が見えたのだ。



 「へー、ここにあったんだ」

 「そりゃ未完成のダンジョンに踏み込まれてはたまったもんじゃございませんから」

 「ま、確かにそれは言えてるわね」

 そう言い、ハル達はダンジョンの中に足を踏み入れた。



 「そういや、ミスティさん。ダンジョンの何階部分で死んだんですか?」

 「そうですね……こんな平和な草原に20階層のダンジョンを造ろうとしたらまぁ、10階層で死にましたね」

 「あー……ということは半分?」

 「モンスターの配置とかまだ決まってないので3割程度ですかね」

 「え? モンスターの配置って造ったときに決めるんじゃ無いの?」

 「出ようとしてモンスターに殺されたら身も蓋もないですからね。最も私はモンスターに殺される以前ですが……」

 自虐的になり落ち込んだミスティを宥めるようにショコラとハルは慰めた。

 そうこうしてる内にミスティが死んだ階層に来た。



 「あーあ……何じゃこりゃ」

 「うっわ……ガレキで埋まってる……」

 「よくある落盤事故ですね……」

 そこは階段を降りた場所から目に見える範囲は全てガレキに埋まっており、ハル達は困惑した。ミスティは頭をかきながら言う。



 「いやー……まさかここまでヒドいとは思いませんでしたね」

 「アンタここのどこら辺で死んだのよ」

 「判断できませんね!」

 「お茶目に言うな!」

 てへぺろといわんばかりに舌を出して、自分の頭を殴ったミスティにショコラは容赦なくツッコミを入れた。ハルはこの惨状を見てため息をつきながら言った。



 「……とりあえずこのガレキ達どかせません?」

 「そうだな。まずはそっから始めようか」

 「じゃあ、その前にと」

 そう言い、ハルは空間の収納からとあるものを取り出す。それは頭のサイズにピッタリな物だった。



 「ハル。これ何?」

 「ヘルメットって言う防具よ」

 「へるめっと」

 「防具?」

 「こうやって被るのよ。そうしたら少なくとも頭部は守られるわ」

 「へー……凄いな」

 「読んだ本に書いてあったわ」

 「……それ幽霊である私も被った方が良いです?」

 「……どっちでもいい気がする」

 実際、前世の知識と鉄創成魔法を使い、作ったのが、役に立ったようで何よりというようにハルは満足した。4人ともそれを被り、早速作業に取りかかった。



 「いやー……多いな」

 「これどれだけあるんだ……?」

 「……何か人骨見えてきたんだけど……」  

 「あ、私だ」

 「ぎゃああああああ!」

 何も言わずに魔法で黙々とガレキを飛ばし、たまにレイラが作ったポーションで回復していたが、ガレキを半分ぐらい飛ばしたところで半分骨も見えている死体を見つけ、嬉しそうにした。



 「死体を見るとは思いませんでしたね」

 「なんてもん見せようとしてるんだ!」

 「ちょっと出すので早くどかせて下さいよ」

 「ふざけんな! 手だけで既にこれなら他はどうなってんだよ!」

 「ボクは目を閉じさせて貰うよ」

 「というか……さっきから臭いが凄いんですけど……」

 ミスティの死体は長い間ガレキの下に埋まっており、そのためか死体特有の強烈な臭いが漂っていた。ハル達は目を閉じ、鼻をつまんでその死体に出来れば関わらないようにしていた。



 「皆さん薄情ですね、どっちも私なのに……」

 「オメーは変わりすぎなんだよ!」

 「こんなエグい死体と面倒くさいけど可愛い子を同一人物とは見れないよ!」

 「……あ、ミスティさんのこと可愛いとは思ってるんですね」

 死体に慄いて使い物にならなくなった3人の代わりにミスティは黙々とガレキをどかしていた。そしてとうとう死体全般が取り出したのだ。



 「へー……これが私ですね」

 「見せようとするな! 近づけるな!」

 「うっわ……臭いんだけど!」  

 「あらあら、右目が取れてるー」

 「そんな嬉しそうに言うことか!?」

 「あ、何か内臓も飛び出て……」

 「言うなー! 想像したくない!」

 「というか、ミスティ、アンタは何も感じないの!?」

 「臭くも無いですし特に……」

 「そうだった、コイツ幽霊だわ!」

 ミスティの行動で修羅場と化したダンジョンの作業場。しばらくミスティは3人を追いかけ回し、それが終わる頃にはとうに日が暮れる時間となっていた。

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