第6話 名前
司音くんからプロットというものを渡されてから四作目の作品だった。
高校を無事に合格し、本格的に作品に取り組んだ高校一年の夏。
僕らの描いた漫画が毎週読んでいた週刊キングの公募で佳作に選ばれた。
早ちゃんの受験を前に渾身の一作を書き上げたつもりではいたけれど、賞をもらえるとは思ってもいなかった。
「すげー。マジで名前、載ってる!」
僕だけ高校生になったこともあり、部室で集まっていた僕たちのたまり場は中学と高校の真ん中にあるファミレスになっていた。
そして、そこにも啓くんはちゃんと来ていて、毎週自腹で買っている週刊キングを開いて、珍しく興奮している。
「漫画の掲載はまだ先なんだけど、その前に決めなきゃいけないことあって」
二対三で座る位置はいつの間にか決まって、早ちゃんと啓くん。
こっち側に僕と咲良。
一番体のデカい司音くんが、僕たちが座って余った部分に腰かけてノートを開きながら今日の議題を口にする。
「名前だよねぇ~」
「名前だな」
早ちゃんの後になぜか啓くんが続ける。
「そう。俺らの名前。公募は四人の名前で出したけど、今回の掲載を機に名前が必要だってことで」
ノートにシャーペンで落書きしながら司音くんが説明する。
「俺と司音の時は二次までしか残ったことなかったから考えたこともなかったしな」
「まぁ読者から言わせると、タイトルと同じくらい大事だな」
「そんなもん? オレとか作者とか結構有名になるまで認識してないよ」
「それは晴ちゃんだからでしょ、普通の人はちゃんと知ってるよ」
「いや、俺も分からん」
咲良の突っ込みにボソッと僕も呟く。
「えっ? 先輩マジっすか?」
「マジです」
速攻で真顔の司音くんからツッコミが入る。
イケメンだから迫力がありすぎで、思わずつられてこっちも即答。
TEN ~僕たちの覚悟~ 綾瀬 ーAYASEー @shu-mi
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