#13 ぶち上げバイブスぬくぬくキラりんTOUR @黒芽翼
ヒロインのセリフに一部トリックがあります。ご容赦下さいでは本編どうぞ
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週末になるとまたダンスレッスン。主治医の先生——今村先生——が付き添ってくれた。茉莉と今村先生が見守る中、ステップだけをひたすら練習。春夜先生も充希先生も、ニコニコしながら、俺を褒め称えるだけ。ただ、ステップを踏んでいるだけなのに。
「春彩くんは相変わらず可愛いね。茉莉ちゃんさえいなければなぁ」
「せ、先生っ! そういうこと言うと」
今村ナツキ先生は美人女医さんで、すごく親身に話を聞いてくれる人。今日だって、休みのはずなのに、こうしてダンス療法に付き合ってくれるんだから、頭が下がらないってやつ?
典型的なメガネ美人で、おっぱいが大きい。ウェストが締まっていて、おっぱいが大きい。足が細くて、おっぱいが大きい。要するに、おっぱいが大きい。
「ま、茉莉がいなければ、せ、先生はエッチさせてくれるんですか?」
「お、いいね。でも、男子高生に手を出しちゃったら犯罪だからなぁ」
「ちょ、ちょっと。先生〜〜それは、あんまりです」
今村先生が、春夜先生と充希先生になにか話しかけると、いきなり踊らされた。やっぱり踊れる。身体が勝手に動く。俺………。風を切るように動く指先と、しなやかに宙を舞う足。あれれ、本当に自分の身体なのこれ。
「春彩くん〜〜〜ミスったらおっぱい触らせてあげないからねっ!」
「せ、先生、またそういうことッ!!」
え。ミスしなかったらおっぱい触らせてくれるのっ!? 今村先生のおっぱい………おっぱいに触りたい……触りたい………柔らかいんだろうな。顔をうずめたい。先生のおっぱいで窒息したい。
なんて考えているうちに、一曲踊りきってしまった。踊っている最中のことなんて、全然覚えていない。唯一覚えているのは、今村先生のおっぱい。
今村先生は結局、おっぱい触らせてくれなかった。だって、用事があるって行って、先に帰っちゃうんだもん。あんまりだよ。約束破ったから、今度エッチさせてもらうんだ。
「春彩って………やっぱりアホなんだね」
「そんなにしんみり言わないでよ」
「今村先生、あんなこと言って、春彩にダンスのことを考えさせないで踊らせたんだと思うよ」
「………そうなのか」
考えてみたけど、全然意味が分からなかった。むしろ、今村先生に対するおっぱい愛だけが深くなった気がする。
ファーストフード店で時間を潰して、しばらくすると紅音ちゃんのヌギヌギライブ配信の時間になった。どんなおっぱいなのか楽しみだな。で、でも、こんな大きいハコでやるんだ。あれ、ハコ………ここって武道館っていう場所じゃないんだっけ。ハコってなんだ。
「なあ、茉莉」
「うん、どうしたの?」
「ハコってなんだっけ?」
「………プレゼントとか入れるやつだよ。箱にプレゼントを入れて、ラッピングして、ほら、クリスマスとかによく見るやつ。プレゼントボックス」
「………そうか。つまり、この大きな建物がプレゼントボックスか」
会場に入ると座席が階段みたいになっていて、俺と茉莉の席は一番前みたい。ステージがよく見えるなぁ。紅音ちゃんのおっぱい小さいけど、これならちゃんと見えそう。振り返ると、うわぁ。人が溢れかえってる。
「そろそろ、はじまるよ。照明落ちたし」
「楽しみだなぁ。でもさ、こんな大勢の前で恥ずかしくないのかな。紅音ちゃんって、見かけによらず大胆だよね」
茉莉は首をかしげて、「ん?」っていう顔するの。変なこと言ったかな。あ、いよいよ、白と赤、それに青の照明が入り混じって、ステージの上にシルエットが浮かんだ。かっこいいっ!!
エレキギターを持った紅音ちゃんが、
横を見ると、茉莉がぼーっとしていた。両手で口を押さえて、見入ってる。
繊細なのに迫力があって、歌詞がスッと入ってくる。言葉の意味が分からなくても、なんていうんだろう、感情が伝わってくるような歌。全身が震えるの。
『みんな……来てくれてありがとう………ほんとに嬉しい。みんなに会えるの楽しみにしてたんだよ』
ね、熱がすごい。背後の観客が「あかねちゃ〜〜〜んッ」とか「愛してる〜〜」とか、「会いたかった〜〜〜」とか叫ぶんだけど、紅音ちゃんはお辞儀してしっかりと手を振るんだよね。さすが歌姫。ファンサービスを忘れていないって感じ。
『次の曲は……大切な人がいなくなっちゃったけど、心の中にいるよって、愛する人はいつも心で囁いているよって曲です。少しだけ、しんみりしちゃうかな。でも、聴いて。“日が昇れば”』
紅音ちゃんの歌を聴くと思い出しちゃうんだ。母さんが亡くなった日のこと。茉莉が一緒に泣いてくれた日のこと。心を包む込むように、歌声が温かくじんわり染み込むみたい。
「茉莉……俺、泣きたくなった」
「………うん」
茉莉はそっと俺の左手の指を摘んで、それから手を握ってくれた。優しく触れるみたいに。横を見ると、茉莉は泣いていた。俺より先に泣いちゃうなんて。だから、握った手を強く握り返した。ぎゅーって。茉莉はなにを考えているんだろう。何を想っているんだろう。いなくなった人がいるのかな。大切な人がいなくなった? それは誰?
歌い終わった紅音ちゃんも、マイクに寄りかかってしばらく俯いていた。一番前だから見えたんだ。紅音ちゃん、顔に力入れて、泣くのを我慢していたんだと思う。みんな、大切な人がいなくなっちゃったんだね。
俺、弱音は吐かないって決めていたんだ。だけど、紅音ちゃんの歌を聴くと、どうしても泣いちゃうんだ。でも、寂しさも全部温めてくれる歌。それがこの曲。
ライブがそろそろ終わるのかな。紅音ちゃんがステージから姿を消しちゃった。
「なあ。茉莉」
「どうしたの?」
「紅音ちゃん結局、脱がなかった……寂しい」
「……え? な、なんで脱ぐと思ったの?」
「ヌギヌギ生ライブじゃなかったの……?」
「そ、そんな餌をもらえない子ヤギみたいな顔されても困るんだけど」
「じゃあ、茉莉で我慢する………」
「は? な、なに我慢するって。意味分かんないんだけど。っていうか失礼でしょそれ。あんな碧川さんなんかより、わ、わたしのほうが」
赤くなった。茉莉もヌギヌギ生ライブすればいいのに。おっぱいの大きさからしても、いい線いくと思うんだけどなぁ。かわいいし。
アルコールッ、アルコールッ! って騒ぐ観客は、みんなお酒飲みたいのかな。あ、消毒してほしいってこと? 意味分かんないんだけど、なぜかライブが終わったはずの紅音ちゃんがまたステージに現れた。アルコール消毒したいのかな。
『みんなぁ〜〜〜アンコールありがとっ! ここで、私のライブのためにゲストが来てくれましたぁ!! ブレイズディスタンスの
銀髪のイケメンが手を振りながらステージに現れた。観客がキャーキャーうるさい。照明に照らされて、キラキラしてる。
————え。
お、俺の……俺の……紅音ちゃんに抱きつきやがった。一瞬抱きついた。背中をポンポンって軽く叩きあったくらいにして。ゆ、許せない。なんなんだアイツ。絶対に許せない。
「つ、翼くん………」
「え……茉莉?」
翼っていうヤツに茉莉は釘付け。茉莉まで………。なんなんだよアイツ。
「茉莉………なんなんだよアイツッ!?」
「ブレディスの翼くん」
「だから、あいつなんなんだ」
紅音ちゃんが激しい曲を歌いながら、翼っていうヤツがダンスを披露した。どことなく、春夜先生に似ている。華麗な指先とか。まるで観客を殺せるんじゃないかっていうくらいに鋭い目つき。とにかくかっこよかった。今の俺では勝てる要素なんて一個もない。
「翼くん……かっこいい」
茉莉……茉莉もやっぱり、ああいうかっこいい男が好きなんだ。紅音ちゃんもきっとそうだ。抱き合っていたくらいだし。紅音ちゃん、歌いながらチラチラと翼のダンス見て嬉しそうだし。許せない。俺、絶対にアイツを許せない。
「……なにがブレディスだ。なにが翼だ」
「え……春彩?」
「あんなダンスが何だ……」
「ど、どうしたの? 怒ってるの? ねえ、春彩?」
「俺、あいつに勝つ。紅音ちゃんに触って良いのは、紅音ちゃんの幼馴染だけなのに」
「………あれはハグっていうんだよ。ねえ、聞いてる?」
俺はアイツにダンスで勝つ。いっぱい練習して、アイツと勝負して、アイツから紅音ちゃんを取り戻すんだ。
ライブが終わった。みんな帰っていく。俺はとてもじゃないけど、動けなかった。悔しくて、切なくて。
————情けなくて。
「春彩……ね。帰ろう? 世界中のみんなが翼くんの味方をしても、わたしは春彩の味方だから、ねっ?」
「それじゃ、ダメなんだ。2対世界中の人じゃあ、負けちゃうじゃん。民主主義は多数決で決まるんでしょ。俺、世界中のみんなから味方してもらえるようにがんばる。アイツに負けないくらい、ダンスがんばってみる」
「……うん。分かった。わたしも応援する。春彩がんばろうねっ!」
————俺、絶対あいつになんか負けない。
————————
茉莉ですっ!
面白いと思った人は★をくださ〜〜い。ハラグロとか言われてますけど、そんなことないですよ〜〜〜!!
はぁ………芳しく無くて凹む。春彩もおっぱいしか言ってないし。どうなっちゃうんだろ。
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