報酬


「うっし」

「あさがお寮に到着っと」

「おらお嬢」

「これお嬢の部屋に置いて良いのか?」


「えぇ」

「……待って部屋の前までで良いわ」


「あ?んだよお嬢」

「部屋ん中汚いのか?」


「違うわよッばかッ!」


「あ、お疲れ様ですお嬢様」


「うお、界守さんじゃん」

「あそこから逃げれたんすか」


「えぇ、紙一重でした」


「ウソつきなさいな」

「貴方程の術師なら」

「あそこから逃れる事も容易だったでしょうに」


「あ、お嬢様」

「どうでした?」


「……どうでしたって」

「何の話よ?」


「え?お嬢様」

「ホテルに行かれたのでは?」


「……本ッ当に」

「貴方って頭の中」

「どんな事を考えているのかしら」


「エッチな事ですが」


「答えなくても良いわ」

「もう、ほらさっさとこれ運んで頂戴」


「了解しました」

「あ、お嬢様」

「お帰りが遅かったので」

「部屋の掃除もしておきました」


「……お嬢やっぱ」

「部屋が汚かったんじゃ」


「ば、ッ違うッ」

「……いえ」

「別に部屋が汚いとは言って無いのだけれど!?」


「えぇ……」

「いやでもさっき」

「俺の言った事否定したじゃん」


「私が嘘を言ってるとでも!?」

「そんな筈無いでしょう!」

「私、ウソなんて吐いた事ないんですものッ!」


「あぁ……はいはい」

「じゃあそれでいいや」

「……お嬢の素って面倒臭ェな」


「何か言ったかしら?」


「聞こえる距離で言ったら殴るだろ」

「だから言わねぇよ」

「はぁ……じゃ」

「荷物預けるからよ」

「じゃあな、お嬢」


「あ、待ちなさい八峡」


「あ?んだよ」


「これ」


「あ?……ってコレ」

「士柄武物……名前は確か」

「〈蛾眉光がびみつ〉………」


「今日の報酬」

「私の手助けをしてくれたお礼」


「え?いいのか、コレ」

「高いんだろ?」


「いいの」

「私があげたいと思ったのだから」

「素直に受け取りなさいな、八峡」


「……そうか」

「あぁ……分かった」

「ありがとな、お嬢」


「……いいのよ別に」


「本当は」

「私を差し上げたいのだけれど……」


「……界守」

「声真似しないでちょうだいな」


「失礼しました」

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