すれ違い的ポジション


「はぁ………」

「もう、こんな筈じゃなかったのに……」

「あの執事……やっぱり」

「お婆様は私の動向を理解してる?」

「………一筋縄じゃいかない」

「そういう事ね」


「なあお嬢」

「腹空かね?」


「なによ藪から棒に」


「いや、もう昼時だしさ」

「ほら、あれ見てみ」


「なに?」

「………出店?」

「ホットドック店?」


「そうそう」

「あァいうジャンキーな食いモンが」

「なんか欲しくなるよな」

「つぅワケで買って来るわ」


「……」


「あ?どしたお嬢」

「そんな呆然として」


「……いえ」

「ただ、私ああいう店のモノ」

「食べる事なんて無かったから」


「あ?そうなのか?」

「じゃあ初めてってワケか」

「ちょいと待っといてくれや」

「すぐに戻るからよ」


「えぇ……」

「…………」

「なんだか」

「普通の少女みたいね」

「こうして」

「外で食べるだなんて……」

「……もちろん」

「外食はした事くらいあるわ」

「……静月と食べに行ったりしたもの」

「けど」

「男の人と食事だなんて」

「まるでデートみたい……って」

「何を考えてるの、私」

「あぁ、もう」

「なんだか背中が熱いわ……ふぅ」

「八峡とは、そんな関係じゃないし」

「対象でも無い、そう」

「別に全然、そんなんじゃないもの」


「んだよ」

「俺が対象外って話か?」


「ちょッ八峡!?」

「い、今の呟き、は」


「いや別に」

「そういう対象で見られても」

「俺の方が困るしな」

「ほら、ホットドック」


「あ、ありがと」

「あつッ……と、ふっ……」

「あの、八峡、さっきのは」


「あ?あぁ」

「別にそう思っても良いんじゃね?」

「俺もお嬢は恋愛対象とかじゃねぇし」


「………」


「あ?んだよお嬢その顔」

「意外にショックだったか?」


「ばッ、違うわよ」

「違う……もの……」


「……あー」

「まあお嬢が俺ん事どう思ってるかは知らんけど」

「俺はお嬢ん事は好意的に見てっから」


「……それ、どういう意味よ」


「えーっとな……アレだ」

「憧れとかそこら辺」

「尊敬とか感謝とか」

「恩人的ポジション」


「……なによ」

「それだったら私も」

「……その、アレよ」


「アレってなんだよ」


「えっと……だから」

「……嫌いじゃないポジションだから」


「はァん」

「……どういうポジションだよ」


「知らないわよ!」

「なんなのよ、そのポジションって」

「あぁもう恥ずかしいッ!」


「いや俺にキレんなよ……」

「まあいいや」

「さっさと食おうぜ、メシ」

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