2004年12月20日08時14分

【時間】2004年12月20日08時14分

【場所】五十市の住むアパート

【人数】五十市依光・七十石三依

【目的】五十市依光の昔話

【分岐】共通



あれは俺が小学生だった頃だ

家族全員で隣町に買い物に行って

その帰り道だった

あの時は落石事故、なんて言われてたが

今にしてみれば

あれは厭穢による仕業だったのかも知れねぇ

だって

俺を助けてくれたのは

祓ヰ師だったから

少し長めのトンネルを進んで

俺は後部座席を占領する様に寝そべっていた

オレンジ色の光と切れた電灯の色を見つめながら

トンネルを通り過ぎるのを待っていた

けど、トンネルから出ていく直前

ガラガラと物音が聞こえて

その瞬間に車の屋根が近づいた

トンネルが崩れたんだ

座席に座っていたお袋と親父は

それによって死んじまったが

座席に寝ころんでいた俺だけは運良く助かった

それでも、かなりキツかったのを覚えている

石によって潰れ掛けた屋根が太ももを挟み込んで痛かったし

呼吸をする度に酸素が薄くなって

今にでもパニックになりそうだった

このまま俺が死ぬのかと思って

俺は、それは嫌だと涙を流したよ

だれか助けて欲しい

こんな死は嫌だ

そう思った時、暗闇だった世界に

光が差し込んできた

それが祓ヰ師だ

俺を見て笑みを浮かべて

心配ない、もう大丈夫だって

そう言って車の屋根を剥がして言ってくれた

隣で両親が死んでたけど、俺は悲しみなんて無かった

ただ、自分は救われる

助かるんだと思うと涙が止まらなくて

その安堵に俺は酔い痴れたんだ

………それが、俺の根本で

多分、それはきっと

忘れる事の出来ない奇跡だ

俺が人を救いたいと思うのは

俺が救われたあの感情を

誰かにも教えたかったから

ただ、それだけなんだ

……はは、この話さ

良い話風だけど

結局は親不孝な話だよな

死んだ両親に涙すら流さない

クズみたいな話だって

自分でもそう思っちまう


……そんな事、ありませんわ

決して、そんな事


……そうか?

そう言ってくれるのは、少し嬉しいけどよ

……はは、なんか湿っぽくなったな

コーヒー飲んで気分を入れ替えるか

七十石は飲むか?コーヒー


………はい

ぜひ、頂きますわ

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