【禍憑姫/零】2004年12月17日11時30分

五十市依光の速度は軽く120キロを超える。

肉体に展開されている洞孔によって。

その身体能力は極限にまで高まっている。


しかしそれでも。

贄波阿羅教師を捉える事は出来ない。

その姿を視認し、掴もうとするが。

寸での所で贄波阿羅は消えてしまう。


超常の域に達した贄波阿羅教師を捕まえる事は至難の業。



「か、はッ……ひ、ひゅ、う………」

「ひーッ……は、………かはッ………」


「………11時30分、か」

「今日はここまでにしよう」


「あ、あざま………し、たッ……がはッ」

「………き、ひ、あ、あぁー……つか、れた」

「やっぱ……一筋縄、じゃ、行かねぇ、な………」


「はぁ……はぁ……、み、水ッ」

「は、っ………自販機、金………」


「あ、五十市さま~」

「五十市さま、五十市さま~!」


「お、ひゅ、ひ、ち、じっ、こく……」

「ひさし……ぶ、ぐぼぁえッ!!」


「やぁ、五十市さま」

「口から吐瀉物が……」

「大丈夫ですか~?」


「み、水………水、を」


「水ぅ?」

「はぅあ!承知しましたわぁ!」

「えぇと……これで、購入、出来る……のでしょうか?」


「金……か、かね、いれ」


「お金?えぇと……万札しかありませんわ………」


「おれ、俺のッ、これ、使えッ」


「そ、そんな、五十市さまのお金を徴収する真似などできませんわッ!」

「お待ちくださいまし、今すぐ小銭に交換してきますわ!!」


「こっち、急いでんの……ッ金、やるからッ!買ってくれッ!!」


「しょ、承知しましたわっ!」

「そそくさっ、ええっと、で、このおはじきをどちらに入れれば?」


「あぁもういい!俺が買うから、もう其処で待っててくれッ!」


「う、うぅう……も、申し訳御座いません、五十市さま」

「この七十石三依、五十市さまの為にお水すら購入出来ませんでしたわ……」


「んぐ、んぐッ………ふ、ぅ………」

「あー、生き返った……はぁ……」


「あ、五十市さま、口に水が……」

「今、お拭きしますので………」


「いた、痛ッ、あの、目、目に入ってんだけど……」

「いでででッ!どこをどう動かしたら目玉に入れる事が出来るんだよッ!!」


「も、もうしわけありませんッ!五十市さまぁ~!」


「な、なんというか………七十石三依」

「こいつ、鈍いと言うか、なんというか、あれだ……」

「度を越したドジっ子なんだよな、こいつ………」

「………いや、ドジっ子なのか、これ?」


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