誰が悪人? と問われれば、おそのの夫と答えられるが、作中人物の誰もが少しずつ、この悲恋の要因を担う。 理不尽に見えて道理が立った世の中にては結ばれなかったふたり。 彼らの決断こそ、もっとも理不尽に思わせながら、移ろいゆく農村の四季と共に描かれる心情を追えば、決して否定できない説得力がある。
愛は素晴らしく、愛は絶対的で、愛は何ものにも勝るという脳天気な刷り込みを払拭する。これは純粋な日本文学。