第2話 爺ちゃんの知り合いに会った

「ええとヘルマンさん確認が取れたのですがあなたのおじいさまがうちの上司の知り合いだったらしくよろしければお会いになっていただけますか?」

「へ?あ、はい」

「それではお通ししますね」


受付の女性に促されるがままに進み豪華そうな扉の前に立つ。扉を開くとそこには艶やかな美しい肩までかかった長い金色の髪のエルフがソファーに座っていた。


「いらっしゃい。あなたがルイスの拾い子かしら」

「はい」


エルフはほんの少しだけ視線に殺気を込めた。ギルドで話しかけた女性のをさらに柔らかくしたような見えない糸のような殺気というよりも視線にすら思える僅かな脅威を

ヘルマンはその脅威をその身に感じながらも受付嬢に促されるままにソファーに座った。


「あああのうギルドって試す人が多いんですか?」

「あら一発で気づくなんてあの森で生活してきただけのことはあるわね。それとオイタした冒険者はクレハちゃんね。申し訳ないはあの子常日頃から殺気を出す癖があるのちなみにクレハちゃんのお眼鏡にかなったのは貴方だけよ」

「あのお二人とも何の話を?」


一緒についてきた受付嬢は殺気に気が付かなかったようだ。エルフは面白いおもちゃを見つけたように笑みを浮かべていた。


「大丈夫よミッシェル。この子は大物になるわよ今のうちに唾つけときなさいな」

「え、ギルドマスターあの手紙になんて書いてあったんですか?」

「ヘルマン君のおじいさんから常識知らずだからよろしく頼むとしか書かれてないわよ」

「でもなんで大物になると、というかクレハさんってオリハルコン級冒険者のクレハさんですよね。私は殺気なんて感じませんでしたけど?」

「まあそうねえ私が気づけていたのは彼女がミスリル級になる前だったわ。それ以降は全く感じられなかったもの。このヘルマン君は気づいてたみたいだけどね」

「ああ、それで声が震えてたんですね。命あっての冒険者ですからオリハルコン級冒険者の殺気に気づけるくらいの警戒心なら大物になりそうですね」

「あのうオリハルコン級とかってなんですか?」


聞きなれない言葉に疑問に思ったヘルマンはおそらく目上に当たるであろう人物に対して不躾ながらも質問をした。


「あら説明してなかったの?」


ミッシェルという受付嬢に対して職務を怠ったのかという意味を込めた視線を込めて睨むエルフ


「すみませんあまりにも有名なものだったので説明を省いてしましました」


ミッシェルは思わず彼女の放つ特有の威圧感にやられたのか身を縮こませる。


「まあいいわ。いいことヘルマン君冒険者には等級というものがあってそれぞれ鉱物によってランク分けされてるのただミスリル以降は依頼の傾向に応じた鉱物が渡されるのだけどね」


ミッシェルを一瞥し途中まで話してから説明するように促す。


「ミスリルまでは錫、翡翠、鉄、銅、銀、金の順で等級が上がっていきます。ミスリル以降は討伐、戦闘依頼特化ならオリハルコン、護衛依頼特化ならアダマンタイト、採取依頼特化なら神珍鉄、調査、斥候(せっこう)依頼特化ならレインボーソーダライト、そして二つ以上に通ずる場合は琥珀となります」


説明は終わったのか彼女はそそくさに退出していった。


「それの裁定方法だけど冒険者ギルドの本部があるこの国の首都で試験を受けてもらう必要があるわ。それであなたにわざと殺気を隠していた彼女はオリハルコン級冒険者なのだけれども、殺気を隠すのは彼女の昔からの癖みたいなものでね。彼女の人器は杖なんだけれども魔力もそこまでないし少しでも脅威とは見られたくないらしいの。あえて隙を見せるためにね。あの森で罠を使うあなたならわかるでしょう?」


空気が変わった。

エルフの彼女が魔力を高めだしたのだ。

どうやら意図して彼女を外に出したらしい。

威圧感はミッシェルに向けられたものの数十倍にまで跳ね上がっていた。


「罠に関してはそうですね。通ってきた草原では森での数週間分の食料が1日で取れましたもん……ただ、威圧それ疲れません?」

「あら、ここまで魔力を剥き出しにすればあの殺気に気付いた手前、何かしらの反応をすると思ったのだけれども?」

「あ、その為でしたか。森では基本的に自分を大きく見せようとすることは意味ありませんでしたしおじいちゃんも気にしないでいいと言っていました」

「なるほどルイスは貴方を生粋の狩人に育てたようね」


ルイスとはヘルマンの祖父の名前だ。

その名前を口に出したとき彼女は懐かしむように微笑んでいた。


「えっと……上司さん」

「ごめんね自己紹介がまだだったわね。私の名前はフィーカ・ストックホルム。ルイスさんと昔パーティを組んでいたのよ。それでヘルマン君、何かしら?」


澄んだ空気を纏いながらフィーカはヘルマンの瞳を覗き込んだ。

机越しに見つめられるその姿は近所のお姉さんと言った感じなのだろうか

そんな自分では経験しえなかったことを思い出しながらヘルマンは先ほど思った子を口にした。


「僕は爺ちゃんからは狩人ではないと言われました」

「へえルイスがそんなことをね。でも私からは狩人の素質にしか見えないけどなぁ。それじゃあ何に近いって言われたの?」

「爺ちゃんは死ぬ間際にお前はここに来れば自分が何者であったかがわかると言っていました」


「辺境都市ガレリオに来れば何者であるかわかるか……そうねえこの都市は貴方も知っていると思うけど異世界から来た3人の勇者様の内、魔法、武術、知略共に万能であったゲルマン勇者シュトロハイムが造った都市。彼の故郷アメリカと呼ばれる国の当時を基に造ったと聞いているはこの世界ではありえない鉱石を使った建築物が多いのもそのせいね。他の勇者たちは木製で都市を造っていたようだけれど私たちには未知の建物が多かったわね。勇者たちが造った都市は良くも悪くもこの世界とは違い過ぎている。王城ですら叶わない建築物が多く存在するものね。この都市に来ればわかるというからにはやはり勇者と関係しているのかもね」


そう話を終えるころには夕日が傾きかけていた。


「あらごめんなさい時間が結構経っちゃたわね。今日はギルドの領を使ってちょうだい。私もそこに住んでいるし融通できるから領の場所はミッシェル…さっきの受付の子に聞いてついでにギルドタグも発行されていると思うからちゃんと受け取るのよ」

「はい、ありがとうございます」

「いいのよ本当は宿をとるかの野営をするつもりだったんでしょう?それの準備をする時間を潰してしまったのだからこれくらい当然よ。だから領のベットに安心してタイブしなさいよ」


フィーカはヘルマンの頭を小さな子どもをあやすかのようにやさしく撫でた。

ヘルマンにとって頭を撫でられるのは祖父が死んで以来初めてのことだった。どこかもどかしくてほっとするようなそんな感じだった。

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