琥珀を棺とした英雄
スライム道
第1話 都会はおっかねえ
「ここが町かぁ」
辺境都市ガレリオ
辺境に位置するこの都市ではかつて魔王を打倒した3人の勇者の1人が開拓した土地だと言われている。この都市は現在、開拓した勇者の末裔であるガレリオ辺境伯が統治していた。
その辺境都市に田舎者丸出しの1人の若者が訪れていた。
「えっと、確か門番さんが言ってた冒険者ギルドは此処かな?」
西部劇に出てきそうな酒場に入ると若者は自分に殺気、獲物を見るような視線があることに気が付いた。しかもそれがどこから来てるかわからないほど静かで1匹で獲物を狙う息を殺したオオカミのような殺気に震え上がった。
「ううぅ、俺は此処で死ぬのかな?」
思わず殺気に当てられてギルドの入り口でうずくまっているとガラの悪そうな男がこちらにやってきた。
「おいあんちゃんここは冒険者ギルドだぜ。入り口のそばで何もできないようじゃ登録したって無駄さ。どうせ村の口減らしかなんかできたんだろ別の仕事探しな」
殺気の主はこの男ではない。それだけは確信を持って言えた。この男も殺気を出しているがギルドに入ってから今現在も向けられる殺気に比べればチワワのようなものである。
「すみませんモンスターを狩る生き方しか僕は知らないんです」
「おいおいこちとら親切心でやってるんだぜ。それともちょっと痛い目見ないとわからない口か?お前の木の棒みてえな人器なんてここでへし折ってやるよ」
男が棍棒のような人器を振り下ろしてきたのですかさず自分の人器である木の棒を引き抜き懐に入り込んでみぞおちに突撃した。
「ゴフッ」
「すみません」
男は気絶した。
「マジかよゴルドの新規加入阻止の10勝目に賭けてたのに大穴の負けるとかありえねえだろあの坊主。震えてるのになんでだ?」
とりあえず殺気の主は今の一連の流れを見ても手を出してこないことから。安心はできないが当初の目的である冒険者登録をすることにする。冒険者登録の専用受付を見つけたのでそちらに向かうことにする。
「え、えええとぼ、ぼぼぼうけんしゅちょちょうろくをおねがいしゅましゅ」
「あのう大丈夫ですか?緊張なさっせているのなら休んでからにしますか?」
受付に居た綺麗なお姉さんに言われるがそういうわけではない。冒険者登録しようとしたら殺気が剥き出しになったのだ。そのおかげで位置がわかるようになったが逃げきれそうな雰囲気で無いことに絶望していた。
「だだだいじょぶでしゅ」
「そ、そうですか。とりあえず冒険者になるに当たっての必要事項を書いていただけますか?代筆も可能ですがその……」
声が震えて聞きづらいらしい
「きゃきゃきゃけましゅ」
「じゃあ記入を」
記入用紙には名前と戦闘方、出身地などの記入事項が書かれていた。
「できゅました」
「はいお名前はヘルマンさん、年齢は17ですか辺境伯の娘さんと同い年ですね。それと戦闘方は罠、出身地が魔の森ってなってますけど冗談ですよね?」
「こ、こりぇわたしゅってて死んだおじいちゃんが」
ヘルマンは手紙を出した。
「これは?」
「町の冒険者ギルドに渡せば良いって爺ちゃんが」
「少々お待ちくださいね」
受付嬢はスタスタと奥の方に入っていた。
「ねえ君、村の口減らしか何かで冒険者の成ろうとしたの?」
ボブカットに切りそろえられた翠髪を靡かせた女性がこちらに話しかけてきた。しかしそれは先ほどからずっと殺気を向けてきた人物に他ならなかった。
ガクガクブルブル
ヘルマンは震えて声が出せなくなっている。まるで蛇にらまれたカエルのように
「ん?ああ、ごめんなさいね。私のオイタに反応できた人初めてだったから」
そういって彼女は殺気を剥きだしにした。
「いつもやっているんですか?」
殺気を意図的に隠しながら観察する彼女にヘルマンは恐怖を感じていた。
ヘルマンにとって殺気とは自分にとっての脅威になりえるモノの総称だった。
よく言われる達人は殺気を感じたり隠せたりするというのは
そうこんな感じで
「ヘルマン、何度言ったら恐怖を感じられるようになるんじゃ?」
「爺ちゃん、そんなこと言っても……」
「あのな、今日もそうだがお前、儂が様子を見に来んかったら10回は死んでいたぞい」
「そんなに?」
「ほれ」
祖父は平べったい石ころを拾うと
「Giraaaaaaa!!!」
スパスパという音とともにただの木だったものが異形に姿を変え青い体液と共に飛び散った。
「いいかヘルマン、この森にはありとあらゆるモノに擬態し命を奪いに来る。擬態するっていうのは自分が脅威ではない、もしくは自分に興味を示さないモノに成りきるってことだぞい」
「そんなのわからないよう」
「わからない、だから怖いんだ。それを叩き込むまで地獄谷で修行じゃ」
「えーやだよ」
「あとで女の子の本見せてやるからの……」
思わず手をブンブン振りたくなるような記憶だった。
ヘルマンは少なくとも物心着いてからは祖父と二人だったのだが祖父は祖父でとんだスケベ爺でエロ本をよく持っていた。とはいえ情勢を知らないのは良くないと思っていたのか常識はある程度教えてくれた。
恥ずかしい記憶を思い出して顔を赤くしていたのだが彼女は気付いているのか居ないのか不敵な笑みを浮かべながら
「ええそうよ。それでなんで冒険者になろうと思ったのかしら。それだけの危機管理能力があれば兵士に志願してもおかしくないでしょう。あそこは人器は関係ないし武器も全部支給してくれるしね」
話しかけてきた彼女自身は
「狩人ではあったのですが祖父が死んでしばらく罠で獲物を狩っていたのですが実力不足を感じて祖父が昔やっていた冒険者になってみようかと思いまして。兵士の話も聞いていたんですが統一された戦法は今まで学んできた罠の技術を生かせないと判断して冒険者になりました」
「へえ、確かにあれだけ敏感な感覚を持っているなら狩人というのもうなずけるわね。私の技術も警戒心の強い魔物を仕留めるために得た技術なのだけれどもあなたには見破られちゃったしちょっと自信なくすわ」
目を瞑り両手をヒラヒラしながら参ったのポーズをする彼女
「いえそんなことありませんよ。あそこまで隠せる
「
わざとらしく首を傾げる彼女。あざとさを加えているそれはまさしく童貞を殺すであろう一撃だったがヘルマンは本で読んだことはあっても実物は見たことが無く殺さることも無かった。
「獲物を狩る存在のことをそう呼んでいました」
「あらそう。でも私のことを気が付けるあなたには興味がわいたわ。良ければパーティを組まない?」
「パーティ?」
今度はヘルマンが首を傾げる番だった。17歳とはいえ小柄な容姿を持つヘルマンはカッコイイというよりは可愛らしいが似合う少年だ。祖父と二人で育った人間だ。ある意味純粋無垢な少年と言えるだろう。正確には紙しか見たことが無い少年だが、天然であることは事実。わざとらしさのかけらもない仕草は破壊力が半端じゃなかった。
これには話しかけてきた彼女も思わず萌えた。
「いわゆる依頼を共用する仲間ね。おじいさんには習わなかったの?」
彼女は思わず抱きしめたくなる気持ちをぐっと我慢して話しかけた。
「いえ祖父はプライベートに関しては寡黙な方だったので昔話も多くは語りませんでした」
主にエロ以外だが……
「となるとソロでやっていたのかしらね。まあ多くはないけど珍しい話でもないしね。連携を苦手とする冒険者も多いしね。それでいっしょにやってくれる?」
「申し訳ありませんが僕も連携は得意ではありませんので」
「そっか、振られちゃったね。でもまあ押しかけちゃえばいいか」
後半は小さな声で聞こえなかったが彼女はヘルマンのもとを離れていった。
この日、夜の
知るのは未来の今日偶々冒険者になった少年なのかもしれない
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あとがきこれ没供養だから残弾全部放出したら完結するよ
かなり中途半端に終えるからフォローやレビューをしないことをお勧めする
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