第3話 ギルドメンバーと変身魔法!

 王都ベルナールにつくと、俺はカーターとカミラについていくことにした。

「身元不明者か。難しいな」

 扱いに困っている様子の門番が首を傾げている。

「わたしのギルドにきてもらう。そこで監視を行いながら、生活になじんでもらう、というのはどうだろう?」

 カミラが大人びた口調で提案する。

「それならいいが……。しかし、本当にそれでいいのか? キミのギルドメンバーにも迷惑がかかるんじゃないか?」

「大丈夫よ。彼女らも提案にのってくれるわ」

 自信満々なカミラは大きな胸を張っている。まあ、大きさは関係ないが。

「分かった。そのように手配する。……となると、必然的にトーヤは冒険者になるわけか?」

「そうなるわね。まあいいでしょ? 貴族の紹介がなければ、本来はなれないのだから」

「え。なにが始まるの? 俺不安なんだけど……」

 俺氏不安を覚える。普通は冒険者になる、って言われたらゲーマー心が刺激され、否が応でも感情が高ぶるが〝貴族しかなれない〟というのが引っかかる。

 このままだと、俺は冒険者になるのか……。それも悪くないかもな。

「さっそく、ギルドに行くわよ! トーヤ」

「ああ」

 俺はカミラの後をついていく。

「しかし、ギルドとはどういうところなんだ?」

「市民から寄せられた依頼を請け負う、いわゆる何でも屋よ」

「なるほど。でもなぜ貴族の紹介が必要なんだ?」

「力を与えるには精神的に優れたものじゃないといけないですからね。一応、面接とかあるわけ」

「ほう。なるほどね」

「まあ、ついてくるといいわ」

「おう」

 町外れにあるギルドにたどり着くと、受付に向かう俺たち。

 受付嬢は金髪の髪をなびかせている。線の細い体躯に、にこりと笑む顔が素敵な女性だ。

「こんにちは。今日はどういったご用件で?」

「この人をギルドに参加させたいと思いまして。名前はトーヤです」

 カミラが俺のことを紹介し、ギルド登録をすませる。

「あとは、こちらの用紙に必要事項を記載してください」

「……」

 日本語でいいのかな? いいよね? こっちの言葉分からないし。


 ってあれー!? 日本語で書かれているよ! こっちの言語も日本語じゃん。ラッキー。

 俺は用紙に必要事項を記載すると、返却する。

「分かりました。ありがとうございます」

 ぺこりとお辞儀をする受付嬢。ずいぶんとご丁寧なことだ。

「それでは最後に注意事項を、この書面にてご説明させていただきますね」

 注意事項を聞き終えると、俺は冒険者としてのカードを受け取った。それを所持している間は冒険者として扱われるらしい。あと依頼を請け負った際の失敗や損失は全て冒険者の自己責任となるらしい。

「しかし、素敵なお方ですね!」

「でしょう! 放っておくにはもったいないお方です!」

 受付嬢とカミラが変なやりとりをしているが、気にしてはいけな

「さてさて。冒険者になったからには依頼を受けてもらいますよ~」

「ああ。それはいいが……」

 ステータスに職業:小説家(冒険者)となっているが、いいのだろうか?

「ステータスの画面がおかしいのだが……」

 俺は小説家と表示されているところタップすると、小説一覧のボタンまでタップしてしまう。

 そこには俺の書いた小説がずらりと並んでおり、その中の一つ目。虎徹こてつをタップしてしまう。

 と光りが俺を包み込み、一拍おくと光りが止んだ。

「す、すごい……!」

 受付嬢と、カミラが驚いた顔でこちらをみる。

「え。な、なにが、ですか?」

 困惑する俺。

 しかし、発せられた声音が少し高い。

「す、すごい! どっちが本当のあなたなのかはわかりませんが、これはすごいチートですよ!」

「ホントにそうね。これじゃあ、身元が不明になるのも無理はないわ」

 俺は近くにあった姿見を見やる。そこには高校生くらいの男の子が立っているではないか。それも見たことのない制服を着ている。それが俺の姿だ。

 いや、この佇まいどこかで見覚えがある。そうだ。小説のイラストにそっくりなのだ。それもラブコメの主人公。能力は〝魅了〟〝難聴系〟〝ギャグ補正〟の三つ。

 魅了は近くにいる異性に好かれる能力。

 難聴系は言葉が耳に入らないことがある能力。

 ギャグ補正は、どんなことでもギャグで乗り切ってしまう能力。

 といった説明がステータス画面に現れる。

「なんだ、これは……?」

「チートです。きっとこれは変身魔法の一種です」

 なんとか正気を保っている受付嬢が説明をしてくれる。

「あら。素敵な男性ね。私にも紹介してくれるかしら? カミラ」

「ん。クロエ。こちらはトーヤ。わたしたちのギルドに入ってもらったわ」

「そうなのね。私はクロエ。よろしく」

「こちらこそよろしくお願いします」

 手を伸ばしてきたクロエに握手で返す俺。

 と、電気が走ったかのうように退くクロエ。

「……!?」

 驚きのあまり顔が歪むクロエ。

「クロエさん?」

「え。ああ。私のことはクロエでいいわよ、新入りくん」

「わかった。クロエ。それでメンバーはこのふたりだけか?」

「違うわよ。わたしとクロエ、それにアリアがいるわ」

「あとはアリアって子だけか……」

「そうね。でも今日は会えないわよ」

「なんで?」

「今日はオフの日、らしいわ」

「そうか。休みか」

「ふふ。ではさっそく依頼を見て回りましょうか?」

 クロエが提案し、掲示板を覗く俺たち。

「これなんてどうでしょうか?」

 クロエが持ってきたものは、淫夢討伐。

「いやいや、俺、こんなことしたくないぞ」

 淫夢。聞いた感じからして恐ろしい印象を与える。

「クロエ。トーヤはまだ初心者だから、まずはアークネズミの退治くらいからいこう?」

「……しょうがないわね。それで手を打とうじゃない」

「アークネズミ?」

「大丈夫よ。弱いモンスターだから」

「分かった。やってみよう」

「ふふ。新入りさんの腕前、見せてもらおうかしら」

「……体術とかには自信はないが」

「そうなると、まずは装備が必要ね」

「そうだな。身一つで戦えというのも無理がある」

「ならまずは衣服からね」

「あー。やっぱり?」

「じゃあ、楽しい衣服選びといこうかな?」

「ふふ。それじゃあ、私のセレクトも受け取ってもらえるのかしら?」

「まあ、参考にはさせていただくよ」

「それと実用性も考えないといけない」

 カミラが深刻そうな面持ちで近くの防具店に向かう。


 ところで虎徹のままでいいんだろうか? 初期値は高いみたいだけど。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界転移でも小説家になろう! ~変身魔法が俺の主人公に変えてしまう~ 夕日ゆうや @PT03wing

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ