ブラック企業に就職した俺がチートスキル(精神疾患)を手に入れて、現実社会で俺YOEEEE!!する実話2! ~ブラック・アーティスト群像劇編~
第25話 ”無い”んじゃない! 無い状態が”有る”んだ!!
第25話 ”無い”んじゃない! 無い状態が”有る”んだ!!
劇団A組の第一回、第二回公演が終わり、問題が浮き彫りになるどころか、このままでは最悪の劇団をして誰の記憶にも残らずに消えるだけだ……という恐怖心を覚えたGhost。
打ち合わせを無視する役者AとミュージシャンBの相手していては最悪のイベントを量産するだけだと感じ、自分のやりたいイベントを作ろうと決意するのであった。
〇鉱脈の掘りつくされた一人芝居と言うジャンルから、如何に新しい物を掘り起こすか。
第二回公演が終了後、僕はノートパソコンの前に座って次の公演の脚本を練っていました。次のイベントは6月ごろ。半年近くのスパンが開きます。
第1回、第2回と一月足らずで公演をしていたのに、何故ここで半年近くも時間が空いてしまうかと言えば、数々の失敗を克服するための時間が必要だった……という真っ当な理由ではありません。
第2回公演が終わってからすぐの事……
役者A
「オレ、旅に出るからさ。しばらく公演やめない?」
Ghost
「今!?」
役者A
「今しかないんだよね。もうじき俺も三十歳だし、役者として忙しくなってからじゃ度にも行けなくなるし」
Ghost
「いやいや、だったら劇団立ち上げんなよ。無責任すぎじゃね?」
と僕は主張するのですが、それに対して役者Aはいつもの
役者A
(……なに怒ってんだ、こいつ)
と言う表情。あー、ぶん殴りてぇ(笑)
結果、役者Aが意見をごり押す形で、半年後に公演を予定する事になったのです。ふぁっく。
それはそうと新しく脚本を作るなら早いうちに作らないとクオリティの高い演劇は望めないわけでして、本番半年前の段階で僕は頭を悩ませていました。
【ここで一人芝居について、個人的な見解を述べるよ】
文字通り、舞台に役者が一人しか上がらないスタイルの演劇。
有名どころではイッセー尾形さんや、柳原可奈子さんのパフォーマンスでしょうか。テレビで見た事のある人も多いハズ!
舞台に上がった一人の役者が”特徴的なキャラクター”を演じる、と言った手法が多く、「あー、こういう人いるよねー」のような”あるあるネタ”や、演者のコミカルな表現で笑いを誘うコメディが多い印象です。
さて、舞台に上がる役者が一人しかいない為、脚本は演者のキャラクターに依存せざる負えない状況になります。
役者がオッサンなら、オッサンというキャラクターに物語が影響を受ける事になります。
オッサンが女子高生を演じても、オッサン臭を消す事はできません。
シリアスで手に汗握る脚本を掛けたとしても、ステージに上がっているのが女子高生の恰好をしているオッサンじゃ、どう足掻いてもコメディにしかならない。
ちなみにイッセー尾形さんは、顔の右側と左側に異なったメイクをして、右を向いている時と左を向いている時で異なるキャラクターを表現し、一人二役を演じ分けておりました。
その器用さはさすがとしか言いようがありませんが、やはりコメディから抜け出せない。
そしてもう一つ。
多くの一人芝居の脚本がキャラクター先行型。
逆にいえば構造上、物語性を重視した脚本を作る事が難しい。
その結果、世の中にはオムニバス形式の一人芝居がひしめくようになっているように感じました。
と言うのが、一人芝居を勉強した僕の感想です。あくまでも個人的な。
さて、役者は一人しかいない。シリアスな物語は作れない。物語性を重視した脚本も作れない。
しかも製作費もない。裏方も少ない。主催者の責任感もない!
ない物づくしじゃないか!
〇ないんじゃない! ないがある状態なんだ!
あれも無い、これも無い、な状態で脚本制作に取り掛かっている時、ふとなんか思考がネガティブになってね? と思いました。そこで、ない、ない、ばかり言ってないで発想を変えて強引にでもあるに変えてしまおうぜ! と思ったのです。
《器の本質とは器ではなく、その中の空間である。》
と言ったのは魯山人でしたっけ? まぁ、とにかく昔の人の言葉を参考に、発想を逆転させてみました。
当時、書こうとしていた脚本は女子高生が主人公の物語。ストーリーは青春の鬱陶しい部分を描いたシリアス系。
当然、演じ手が役者A(オッサン)と言う時点で、そのまま公演を行ったら女装したオッサンがシリアスに演じるシュール系ギャグ作品になってしまいます。
そこで前述した言葉《器の本質とは器ではなく、その中の空間である》。
ここでの本質、つまり器の中の空間は主人公の女子高生。
それでは脚本を用いて器の部分を詳細に作りあげれば、おのずと器の中の本質=女子高生を描けるんじゃないか?
と言うアプローチで脚本制作を開始。
主人公の女子高生の周りにいる”カウンセラー”、”マスコミ”、”警察官”、”父親”などを役者Aに演じさせ、彼らの姿から主人公の女子高生の姿が炙り出される仕組みです。
初めての挑戦だったのでわかりやすく、一つのキャラクターごとに起、承、転、結を与える形に物語を作っていきました。
今までの一人芝居の脚本と同様、演者が一人と言う制約は変わらないので独り言のようにならないよう注意が必要でしたが、このアプローチによって脚本の物語性が飛躍的に生き生きしてきた事を感じました。
蛇足ですが、物語を描く際にこの書き方をすると必然的に”リドルストーリー化”します。
僕の小説にリドル要素が多いのはこの時の経験が大きいかもしれませぬ(;^ω^)
そんなこんなで、アイディアが固まってからは一気に脚本を書き上げ、かなり実験的ではある物の悪くない物が出来ました。
しかしながらこの脚本の欠点(?)がありまして、演じ手にかなりの負荷をかけてしまう(なんたって一時間弱の芝居の間に、まったく違うキャラを四人演じないといけないですから(/・ω・)/)という問題がありました。
この時点でイベント本番まで、あと半年。
正直言って、十分すぎるほどに役作りする余裕もあります。
ふっふっふ、この辺りも抜かりなし。だいぶ舞台監督としてのスケジューリング能力、気遣いのレベルも上がって来たんじゃないの? なんてこの時は調子に乗っていました。
奇しくもこの時、二〇一一年二月……。
多くの日本人にとって忘れられない日が迫ってきていたのですが、それはまた次回!
to be continued(/・ω・)/
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