第23話 ゲネプロ(通し稽古)を止めるな!

 前回までのあらすじ。


 役者Aが率いる劇団の活動が本格的になり、初のイベントの準備も佳境に差し掛かる。

 そしてイベント当日。夕方から始まる本番を前にゲネプロ(本番を想定した投資稽古)を行うのだけれど、次々に問題が浮き彫りに!




〇お前ら、ゲネプロって何のことか知ってんのか?


【ゲネプロ】


 ゲネプロとは、(中略)舞台芸術やクラシック音楽において、(中略)本番同様に舞台上で行う最終リハーサル、「通し稽古」のことを意味する。


 本番と同じ条件(メイクや衣裳、音響、照明など)で本番を上演する劇場の舞台上で行う。(中略)。途中を抜いて行う場合はゲネプロとは言わない。


 ウィキペディアより抜粋。


 さて本番当日。午前中に会場の準備を終え、午後からゲネプロがスタートです。本番を想定したリハーサルの重要な点として、ステージ上の演者だけでなくの最終確認があります。演者がいくら頑張ったって、裏方と息が合わなければ、まともに公演が行えません。

 ゆえに

 絶対に!!


 ま、ここまで強調すれば、ここまでこのエッセイを読んで頂いた皆さまならお察しでしょう。


 このゲネプロを止める輩がおりました。そいつの名前は……


 


 この先しばらくの間、このミュージシャンBが役者Aに並ぶくらいの問題児として大活躍(!?)をしていきます。ここで今一度、ミュージシャンBのプロフィールを抜粋しますと……




○ミュージシャンB

 二十代前半。女性。

 シンガーソングライターを自称しているがギターは弾けない。詩は書けない。歌もまともにブレスすら出来ない。

 なので他人の楽曲を盗もうと躍起になっていた。

《所有する芸術スキル》

・作詞、作曲?

・うたが、うまい……?

・嘘八百!

・いつもダイエットしてる。


 音楽に限らず、芸術と言う物が単純な《上手い、下手》だけの世界ではない事は僕も重々承知しています。下手くそなのに、クッソカッコ良いミュージシャンや、めちゃくちゃ上手いのにお金にならない画家など、そんな知り合いもおります。

 それを踏まえましてミュージシャンB……恐ろしく歌が下手なんです。何と言いますか、高校生のカラオケ……しかもあんまりうまくないレベル。情感なんて皆無。

 高校時代、声楽部に所属していたと自称していましたが、まともにブレスすらできていない。喉を開いた発声もできていないから声域も狭く、高音は苦しそうに聞こえる。結果的に一度ライブを行えば喉が潰れる!

 おいおいデスメタルバンドでボーカルやってた僕ですら、一度のライブで喉潰した事なんてなかったぞ(ちゃんとボイトレに行って、発声法は身につけてたからね)。

 彼女は楽器も弾けないのですが、なぜか


ミュージシャンB

「私ギター弾けます!」


 と言葉だけは自信満々。ま、自信だけで弾けるようになれば苦労しません。


 そして作詞の方も出来ない! 僕に電話で、


ミュージシャンB

「Ghostさん、詩ってどうやって書くんですかぁ」


 と電話が来る。

 はぁぁぁ? アンタ、シンガーソングライターじゃないのかよ!?




〇ミュージシャンは顔じゃない! じゃないんだけれど!?


 さて、歌に関して良いとこ無しなミュージシャンB。

 音楽と容姿は関係ねーよ! 派の僕ですが、プロモーションする側としては容姿が良ければ誤魔化せる部分があるのも事実ではあります。

 さて、そこでミュージシャンBの容姿ですが、その容姿に関わる大きな問題を抱えていました。

 その問題とは、ズバリ


 見た目と性格は関係ないとお思いでしょう?

 いえいえ、時にこの性格が容姿に対して凄まじいデバフをかけてしまうのですよ。


 詩も書けない、楽器も弾けない、歌も下手、作曲もできない、自称シンガーソングライターのミュージシャンBは、なぜかそれでも常に!!

 自信を絶世の美少女でありながら完璧なミュージシャンと錯覚しておりました。

 その様子を例えるなら……


『自分の事を”きゃりーぱみゅぱみゅ”だと思い込んでいるハダカデバネズミ』


 と言った感じです。ハダカデバネズミを知らない人は画像検索してみよう(/・ω・)/


 さて容姿が”ハダカデバネズミ”に似ていたミュージシャンB。それでいて自分の事を”きゃりーぱみゅぱみゅ”さんだと思い込んだ調子に乗った発言や言動ばかりをしているわけです。

 もう態度だけはプロフェッショナル。

 身長低いのに上から目線を演じたくて仕方ないのか、姿勢は常に仰け反っているし(/・ω・)/


「ブタちゃん」

 の愛称で友人たちから呼ばれていた彼女ですが、そんなの関係もありません!

 その鋼のメンタルで真面目にギターの練習でもしてくれればいいのに!


さて、

「ハダカデバネズミ可愛いやん!」


 と思う方が居たらごめんなさい!! 僕だってあのキモカワ系な動物は結構好きなんです。あくまでも、ハダカデバネズミに似たミュージシャンBがアレなだけで、ハダカデバネズミは悪くないの!

 ミュージシャンBの事は嫌いになってもハダカデバネズミは嫌いにならないでください!!




 色々書いてしまいましたが、とは言え、せっかくイベントに出てくれるのですから裏方としては妥協する気はありません。ありませんが……




〇ゲネを止めんな!!


 ~ゲネプロ中~


 ミュージシャンBが歌うなか、音響、照明の動きを検証するGhost(照明オペ)とミュージシャンA(音響オペ)。


 急に頭の上でバッテンマークを作り辞めるミュージシャンB。


ミュージシャンB

「すみませーん。音止めてください」


Ghost

「ん? トラブルでもあった?」


ミュージシャンB

「今のところうまく歌えなかったんで、もう一回最初からお願いします」


Ghost & ミュージシャンA

「……?(なに言ってんだ、こいつ?)」


 今思い出せば当時の僕は芸能などの業界の事知らなすぎ、さらには優しすぎたと思います。ミュージシャンBの要望通りステージ上で歌い直す事を許可したのですから。


 その結果、調子に乗って二回、三回と歌い直すミュージシャンB。ちなみに歌っていたのは、大塚愛さんの『さくらんぼ』。ええ、ええ、ただのカラオケでございます。

 そうこうしているうちに本番の時間が近づいてきます。他にもゲネプロ中に確認したいことは山積みなのに、これでは一向に進みません。


ミュージシャンB

「今のところもう一回……」


Ghost

「いや、もう終わり。切りがないから」


ミュージシャンB

「でも、私プロとして妥協したくないんで!」


Ghost

「今練習しても上手くならねぇよ!(ブチギレ)」


 強引に彼女をステージから降ろしてゲネプロを再開したのですが、本番直前の休憩中に目を潤ませながら(ま、実際は潤んでなくて、そんな雰囲気出して自分に酔ってるだけっぽかったんですが)、


ミュージシャンB

「わたし! プロとしてやり切って見せる」


 と自分のに対して語っていた姿を見て、サブイボが立ったのですが……それはそうと、




〇事務所にも所属せず、アーティストとしての技術もないのに、何でマネージャーが居るのぉぉ!?


 ミュージシャンBの傍らにはいつも一人の男性がおりました。

 痩せ型で色白。おとなしい雰囲気で、顔は両性的で、線の細いイケメン。

 しかしながら、どこか儚い様子の男性で、僕も何度か会話したものの囁くような小声しか聞く事が出来ませんでした。


 ミュージシャンB曰く、彼は元カレで現在は自分のマネージャーなんだそうな。


【プロローグにない登場人物】

〇マネージャーA

 二十代前半。男性。

 両性的なイケメン。男の僕から見ても儚い。もはや不健康なレベルで儚い。

 ミュージシャンBの元カレで、現在マネージャー。

《経歴》

・うつ病。

・自殺未遂。

・無職。

・……ごめんなさい。これ以上、彼の事を思い出すと切なくなってきた(by.Ghost)。



 人間的にも暴虐なミュージシャンBに対して、非常に献身的に接していたマネージャーA。少々本編から脱線してしまうのですが、少しばかりミュージシャンBとマネージャーAの関係を掘り下げてみましょう。




〇イロコイはひとソレゾレ。口だしなんてヤボだけれども。


 もともとは恋人同士の二人。何が理由で別れたかは知る由もありませんが、この二人の関係は奇妙な物だったと思います。


 ミュージシャンB、彼女は普段医療関係の仕事についていたそうです。多分、看護師の資格は持っていなかっただろうから、看護助手だったんじゃないかなぁ(ちなみに看護助手は資格はいらないらしいです)。

 そんなある日のこと、ミュージシャンBの勤める病院に緊急外来がやってきました。救急車から運ばれてきたのは、なんと元カレであるマネージャーA。しかも運ばれてきた原因は自殺未遂。


 正直、こんな重い展開、僕にはついていけません。このエッセイは悲惨な出来事をエンタメ成分をふんだんに盛り込んで綴っていく、と言うのがモットーなのよ。

 話しがヘビー過ぎて面白おかしく書くのに困っちゃうじゃない!


 さて、運ばれてきた元カレに対して、ミュージシャンBの取った行動とは!?


ミュージシャンB

「お前! ちゃんと死んで来いよ! クズ!」


 ストレッチャーで運ばれる元カレに対して、ミュージシャンBは怒鳴りつけたそうな。


 アカン……。僕が面白おかしく書く必要が無いくらい、現実の方がどうかしてましたわ……。いや、まったく笑えんのだけども……。


 その後、病院のお医者さんにブチ切れられて追い出されたミュージシャンB。適切な処置によって命をつなぎとめたマネージャーAですが、そんな事があっても彼女から離れられない彼の心に闇を感じたのは言うまでもありません。




 というか、DV男から離れられない献身彼女の男女逆バージョンやん!




 さて、話しが脱線してしましたが、次回はミュージシャンBに邪魔されつつも始まった第一回公演の本番と、本格的にこのままじゃダメだぞ、と焦り始めた第二回目の公演について書いていこうと思います。


 to be continued(/・ω・)/

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