第17話 Ghost。普通のブラック企業B社を辞める事を決意!!

 前回までのあらすじ


 C社長から脚本家として芸能事務所へのスカウトを受けたGhost。夢だ希望だと語り合う華やかな世界からのお声がけにもかかわらず、精神疾患とストレスMAXな職場のせいで精神が恐慌状態な僕はそれどころじゃない。


「今の仕事! 辞めたい!! つーか、このまま働いてたら先輩のこと殺しかねねーわ!」


 と言う不純な気持ちから仕事を辞めようか迷い始めるのであった。




〇C社長はめっちゃ愚痴りたい!


 前回のエピソードで僕をスカウトしたC社長。彼とカフェで話した話題は、僕の小説やスカウトについてだけではありませんでした。

 僕への勧誘が終わった後、C社長は熱を込めて語っていたことがあります。


C社長

「それはそうと……役者A君の事なんだけど、アレは何なんだ!?」


 おー、アレと来たか(笑)


Ghost

「アレと言いますと?」


C社長

「いやね、あいつチョットおかしいんだよ。夜中にどうでもいい電話してきたりさ。事務所のスケジュール無視して、海外に旅にでて自分の好きな映画監督に会いに行くとか言い始めたり。今そんな事してる場合じゃないってわからねーのかね? あいつ昔からあんなんなの?」


 役者A……あいつ事務所の社長にまでしてんのか……。(もはや鬼電は死語かな? 鬼のように電話、着信を残す事。主に嫉妬深い異性から電話などの事。1993年代のコギャル語である。ちなみに僕の世代ではない)


 ちなみに役者A曰く、

「オレ、C社長とメッチャ仲いいよ! よく電話してるしさ。『友達かよ!』って社長にツッコミ貰うくらい」

 ……それツッコミやない。単純にキレられとるんや。


Ghost

「あー、役者Aさん、旅がどうのこうのとか言ってましたねー。昔アフリカに行った時の写真を自慢げに見せられたことがありますよ。会いたい映画監督の話もしてたことがありますけど、その人だって、いきなり片言の英語しか喋れない日本人に来られても困るでしょうねぇ」


C社長

「今行く事じゃないって話なんだよね。これから事務所として盛り上げていこうっていう状況で自分勝手にするなら、当然、軌道に乗ってから出しゃばるなよって話じゃん?」


Ghost

「そりゃ、そーでしょうね(役者Aがそう思っているかは別の話だけど)」


C社長

「それにさ。この間、CM撮影の仕事を頂いたから役者AとダンサーAに出てもらったんだけど、役者A、監督さんに噛みつきやがってさ」


Ghost

「噛みついた?」


 C社長曰く、そのCMは某大手通信企業からの新発売製品で、手の平の中に納まる大きさの通信機的なグッズの広告だったそうな。で、胸の前でそのグッズを持った姿を撮影する際に


役者A

『手は内側に向けた方が良いですか? 外側に向けた方が良いですか?』


 と割とどうでも良い質問でいちいち撮影を止める、などして大ヒンシュクを買ってきたそうな。


C社長

「そんな事、役者なら自分で考えろって話しなのにいちいち監督さんに食ってかかってんだ、あいつ」


Ghost

「あー、それはダメですねー」(ちなみにこの後、件のCMを見てみたけれど、手の向きとかホントどうでも良い演出だったのよ(/・ω・)/)


 当時はまだ役者Aについてまだわからない事が多かった僕ですが、次第に彼の事を理解するうちにわかってきたことがあります。役者Aがいちいち食って掛かって撮影の進行を止めた理由。それは


『オレ、芝居わかってんですよ』


 と言う事をアピールしたかったんだと思います。

 ちなみに映画監督、北野武は撮影に口を出す役者が大っ嫌いらしく、そういう役者は二度と使わないそうな。役者Aがオフィス北野から声がかからないのはそういう事か!


C社長

「とにかく、俺は役者Aが考えを改めるまで、あいつに仕事を回すことは出来ないな」


Ghost

「あー、それは仕方ないと思います」


 と言っても、自分の考えを改められるほど役者Aは賢くないんです! そしてC社長のプロダクションにも先はないんです! 無念!!




〇「仕事辞めたいんですけど」に対する精神科医処方箋プリンターの反応


 さて、C社長からのスカウトを受けて多少なりと悩んでいた僕です。仲の良い友人に話を聞いてもらったりして頭の中を整理したところ……


『もう、本っ当に今の仕事辞めたいんじゃぁ!!』


 と言う思いが何よりも強い事に気づきます。そこで当時働いていた普通のブラック企業B社を辞める事を決意。

 決意したものの、一応この人にも話しぐらいしておくかぁ、と思ったのが僕の担当医である精神科医処方箋プリンターでした。


【プロローグから抜粋】

精神科医処方箋プリンター

 僕が前職のブラック企業で患った精神疾患を診ていた主治医。患者である僕に対し「薬漬けになれ」といって、精神安定剤を出すだけで治療らしい事はしない人。

 最近、グーグルマップでこの病院のレビューを見たら、ものすごいボロカスに書かれていた。


 すでに心の中でこの人の事はと断定していたものの、なんやかんやで人の話を聞くのが商売。こういった人生の機転にもなりうる今の僕の状況を話してみようと思ったのです。

 いつもは病院に行っても30秒ほど受け答えした後、処方箋を出してくれるだけの精神科医脳無し野郎ですが(若い女の子相手だと20分はカウンセリングしているよ!)、ちょっとは医者、そして人生の先輩っぽい事を言ってくれるのではないかと期待していました。


精神科医ヤブ医者

「最近はどうですか」


Ghost

「そんなに悪くないです」


精神科医クソ医者

「ふーん、そう。じゃぁ、いつもの出しとくね」


Ghost

「あの、先生」


精神科医診断書プリンター

「んー、何ですか?」


Ghost

「プライベートな事話すのはちょっとあれなんですけど、ボク、今まで小説を書いていたんですね。で、その作品を読んでくれた芸能事務所さんから今、脚本家としてスカウトを受けていて」


処方箋プリンター精神科医

「うん? (なんか不満げな表情)」


Ghost

「それで、今の仕事を辞めてそっちに行こうと思っているんですけれ……」


医師免許を持った処方箋プリンター

「やめなさい!」


 食い気味で止めに入ってきた処方箋プリンター《医者?》。


処方箋プリンター

「今の仕事辞めてどうするの? 収入が不安定になるかもしれないのに」


Ghost

(うん? 収入の問題なの?)

「いや、でもこういうチャンスも多くはないですから」


処方箋プリンター

「チャンスなんてね、生きてればいくらでもあるの」


 この言葉、外から聞けば良い言葉に聞こえますが、精神安定剤の多剤処方で常に五里霧中の状態を余儀なくされている僕に対し、元凶の安定剤を処方してるお前が言うな!! という心境でした。

 何このブラックジョーク、ちょーうけるー。

(ちなみに朝昼晩と二十錠ほど安定剤を飲んでいたらしいです。ただし安定剤のせいで薬を飲んでいた記憶すら曖昧)


 その後も僕に仕事を辞めさせまいと説得してくる処方箋プリンター。

 今の今までまともに人の話なんて聞かなかったのに、これは一体どういう事でしょう? 今まで無関心だった人が、こんなに躍起になって説得する意味が分からない。


 僕の感覚としては、この時の処方箋プリンターに対し、《息子の進路に納得がいかないから絶対に認めない! と言って無理やり丸め込もうとする父親》みたいな印象を受けました。

 もっと言ってしまえば、カネヅルが一匹いなくなったら大変でしょ! と言う印象すら覚えた。


 と言うか根本的な話し。医者他人患者オレのライフプランを決めんじゃねーよ。昨今じゃ、入退院はもちろん、手術や輸血ですら患者の許可を最重要視するのに、医者の一線を越えとるわ。


 その日は医者の言葉に対して


Ghost

「わかりました」


 と答えていつも通り処方箋を貰って病院を出ました。何ともやるかたない気持ちでした。

 職場では正直者が馬鹿を見るような目にあっていて、医者に行けば話は聞いてくれないし、こっちの要望は全部無視。僕に自由意志なんて無いように思えました。

 外に出ると風が強く握っていた処方箋がパタパタたなびきました。

 そのとき、ふと、気づいたのです。


 いや違う。

 この処方箋だって、今、手を放して紛失してしまえばそれまで。決して僕を縛り付けるような効力はない。馬鹿正直に二週間ごとに医者へ行っていたけど、今までも、これからも医者に行かない、医者の言う事を聞かない、なんて事は出来たはずだ。


 職場が気に食わないなら何時だって辞める事は可能だった。職場の大嫌いな先輩だって殴れないんじゃない、殴らないだけだ。物理的に殴る事が可能な相手なのだから、殴れないなんてことありえない。

 結局、と思い込んで自分を呪っていたのは自分自身じゃないか? 唯々、僕は自縛していただけなんじゃないか?

 なーんだ、じゃ、簡単な事じゃないか……。




 遠回りしてしまいましたが、何もかも自分で選択してよいし、選択肢が無いように見える問題も大抵の場合、自分が選択してしまっているのだと感じました。結局のところ、


 手を離した途端、空っ風にあおられて宙を舞う処方箋。

 うん。やっぱり簡単じゃないか。


 どのような結果が出るのかはわかりませんが、何をするか選択してよいのはにだけが可能な行為なのです。


Ghost

(よっしゃ! もう、ぜってぇ! ここには来ねぇ!! ファ〇ク!!)


 そう心の中で中指立てて、それから二度と処方箋プリンター《精神科医》の所に行くことはありませんでした。

 ここから地獄の断薬生活が始まるのですが、それはまた別の機会に。


 to be continued(/・ω・)/

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