第16話 人生とはクソ、もしくは別のクソ、どちらかのクソを選ばねばならない。そんな選択の連続である!


 前回までのあらすじ


 Ghostの小説を読み終えたC社長に呼び出されたGhost。どんな感想を聞かせてくれるのだろうと不安と期待が入り混じる中、突然C社長からスカウトされるのだけれども……。




〇講〇社の知り合いが居るから紹介してあげるよー。


C社長

「それでね。Ghost君が僕らと同じように本気で取り組んでくれるんだったら、ウチの芸能事務所に来てみない?」


Ghost

「来てみない……は?」


 突然のスカウトに、どういうこっちゃと戸惑っていたところ、助け舟を出すように鞄から僕の小説を取り出すC社長。


C社長

「ウチで脚本を書いてみないかな?」


 あ、スカウトってそういう事ね!


 ちなみにC社長が取り出した小説、僕が始めて書いた小説なわけですが、自分の体験をモデルにした私小説的な作りになっておりました。

 具体的には過去に勤めていたブラック企業での出来事をベースに、某県で仲良くなった外国人や音楽関係者、路上での出来事から得たインスピレーションを元に自分の価値観を見つめ直していく、と言った感じのストーリー。


 今思えばワ〇ミの元幹部にブラック企業を題材にした小説を読ませるとか、すでにブラックジョークも良い所です(/・ω・)/

 一年ほどかけて頑張って書いたこの小説。表現や展開が稚拙で読めたものじゃありません(笑) けれど、それなりに愛着のある作品ではありますが(笑)




 さて、突然小説を引っ張り出したC社長。今思い返すと、ここからのC社長の言葉はすごかった。ブラック企業経営者が用いる洗脳の手法を流れるように畳みかけていきます。


C社長のターン!

「Ghost君の書いた小説ね。良かったよ。僕も仕事が辛くて自分を追い詰めた事があるから、読んでいてちょっと泣きそうになったよ」


Ghost

「ホントですか!? ありがとうございます!」

【まずは褒めて上げる! Ghostは油断した!】


C社長のターン!

「けどね。ちょっと悪い言い方させてもらうと、これって君のマスターベーションだよね」


Ghost

「あ、そういう印象受けましたか」


C社長

「せっかく路上でいろんな人と出会っているのに、世の中が見えていないよね」

【褒めてからこき下ろし! 油断していたGhostに大ダメージ!】


ずっとC社長のターン!

「技術的なところは良く出来てるよ。起承転結や伏線の描き方とか。けど、先見の明が無いね」


Ghost

「……」

【さらに追い打ち。もう、やめて! とっくにGhostのライフはゼロよ! もう勝負はついたの!】


さらにC社長のターン!

「それでね。うちの事務所で脚本を書けば、お客さんの反応をダイレクト感じ取れると思うんだよ」


Ghost

「……はぁ」


C社長

「ウチで脚本書いて、よりいい作品が書けるようになったらさ、知り合いに講〇社で働いている人が居るんだけど、紹介してあげるよ」


Ghost

「……」

【おや? Ghostの様子が……】




〇夢とか希望とかは健康な人が語ってろよ! 俺は働きたくないんじゃ!! ギリギリの所で社会人やってる精神疾患持ち舐めんなよ、ボケェ!! (/・ω・)/イヤッホーイ


 C社長のスカウト、そして芸能事務所Cへの所属しないかと説得を受けながら、わりとボロカスに処女作を否定された僕でしたが、実の所、内心は結構穏やかでした。

 だって、初っ端から「?」何て言われてるんですもの。


『ええ、そうですよ。だって大好きですもの(なにがとは言わんが)! 何か問題でも?』ドドン!!


 物書きたるもの傲慢であれ! ババン!


 僕の経験則でしかありませんが、その通りと思ったご指摘は大事にした方が良いですが、的を射ないと感じた助言なんて無視しても良いのです。実際、僕は的外れな指摘を無視し始めてから、公募等でチラホラと選考通るようになりましたし(/・ω・)/


 そして何より、C社長が小説への評価と称して、手軽にお抱えの脚本家を手中に収めようとしている魂胆が透けて見えていました。

 ちょっと褒めてから、ボロクソにけなして、自信を失ったところに助け舟を出してあげる。

 落とし文句に「知り合いに講〇社で働いている人が――」


 あ、これ、進研〇ミの赤ペン先生前職のブラック企業が教えてくれたところだ!


 ま、それを鵜呑みにするほど僕は素直じゃありません。これは散々ブラック企業でわりを食わされ続けてきたおかげなんだろうなぁ。


 とはいえ、僕の心は揺れていました。

 その理由とは単純に!!


 講〇社とか作家デビューとか、脚本家とか芸能界とか、全部どーでもいいから、今の仕事続けたくねぇぇぇ!!!




〇先見の明ねぇ……


 それはそうと、追い打ちのように言われた言葉「先見の明が無いね」。


 さて、喫茶店でC社長とのやり取りをしていた当時はリーマンショックの翌年くらい。なので大体2009年の夏~秋くらいの事だったかと思います。


 この数か月後、有名電子掲示板2チャンネルから生まれ【ブラック企業】と言う言葉を世に知らしめた映画『ブラック会社に勤めているんだが、もう俺は限界かもしれない』が放映。(2009年11月の事)


 そして同じく【ブラック企業】と言う言葉を世間に浸透させたキッカケである『ブラック企業大賞』の第一回が2012年の事でした。(ちなみに第一回ブラック企業大賞の市民賞は株式会社ワタミ、第二回ブラック企業大賞の大賞はワタミフードサービスが受賞しているよ!)


 ボクって本当に先見の明、無いのか? いやはや、そんなに悪くないんじゃないの(/・ω・)/ムフフ


 そして、この年の年末に夜逃げすることになるC社長。

 先見の明っていったい何なんだ?




〇人生とはクソ、もしくはクソ、どちらかを選ぶ選択の連続。どーせクソなら気楽に行こう、なのだ(/・ω・)/


C社長

「ウチに所属すると言う事になると……芸能界だからね、突然打ち合わせが入ったり、東京に走らなきゃいけない、何て事も出てくるだろうから、今Ghost君が働いている会社は辞めてもらわないといけないんだけれど」


Ghost

「あー、まぁ、そういう業界ですものねぇ(イメージで語っています。芸能界の実情なんて知りません(/・ω・)/)」


C社長

「仕事を辞める、と言うのも簡単じゃないだろうから今すぐ決めろとは言わない。しばらく考えてもらえるかな」


Ghost

「わかりました。そうさせてもらいます」


 と言う事でこの日はC社長と別れることに。

 別れ際、


C社長

「この小説、もうちょっと預からせてもらっていい? 他にも読んでくれる人が居るからさ。その人からも感想聞いておくよ」


 と言って去って行ったC社長。

 実を言うと、これがC社長の姿を見た最後だったのですが、それを知るのはまだ先の話になります。


 それはそうと、僕の心は迷いに迷っていました。

 現在働いている会社、B社で進めていたプロジェクトは非常に悪い循環に陥っていました。

 ……ま、要約しますと、


・ブラックな先輩が自分のミスを僕のせいにして、取引先に言いふらす(ま、取引先ではブラック先輩のミスだってバレてたんですが)。

・ブラック先輩の尻拭いで、連日取引先に頭を下げに行くGhost(どっちにしろ取引先にはブチギレられるんですが)。

・3DーCAD(三次元図面制作ソフト)の使い方を知らないクセに、口出しばかりしてくるブラック先輩。

・危うきには近づかず。我関われかんせずな社長の息子。

・民主党政権時の《仕分け》のせいで一大プロジェクトが企画倒れして超不機嫌な社長。主にブラック先輩とGhostに八つ当たり。

・からのー、ネチネチと厭味ばかり言うブラック先輩。

・こんな環境だから、精神疾患がどんどん悪化していくGhost。

・工場に置いてある大型スレッジハンマーを持ち出して、ブラック先輩の頭を潰してやろうと決意するGhost(アカン!!)。


 当時のB社の内情はこんな感じ。プロジェクトの問題じゃなくて、人間関係の問題だったでござる。


 一方、芸能事務所CはC社長の浅い魂胆と、ブラック企業特有の嗅ぎ慣れた臭いがプンプン漂ってくる。


(これ以上B社で働き続けたら、ブラック先輩殺しかねねーしなぁ。うーん……)


 今思えば当時の僕はかなり精神的に追い詰められていましたね。


 僕の悩みの次元は夢を追うとか、希望ある未来へ向けて、と言った前向きな物とはほど遠いモノだったわけです。あべし!


 とはいえ近いうちにC社長に返事をしなくてはなりません。

 次回のエピソードではのではなく、わけでもなく、と模索する僕の葛藤を描いていこうと思います。

 ……いやぁ、夢で逃げちゃイカンよ(笑)


 to be continued(/・ω・)/

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る