第7話 路上には、いろんな人が居て良い。

 前回のあらすじ。

 路上での創作活動(鉛筆画)を行いながら、そこを行き来する人たちとの交流に何故かはまってしまったGhost。

 半年ほど路上で絵を描いているうち、そんな僕に声をかけてくる青年がおりました。



○オレ! オタクになるんで暴走族ゾク辞めます!!


 とある土曜日の日中の事でした。その日は僕を冷やかしに駅前まで遊びに来てくれた友人と世間話をしながらスケッチブックに絵を描いていたのですが、一人の青年が声をかけてきました。


 その風貌は

・身長180センチ後半。でかい。

・肩幅も大きく、恰幅もある。恐らく体重は90~100キロほどか……。これは脂肪デブ……否! すべて筋肉!!

・立ち振る舞いの重心が低く、何かスポーツ武術やってたような雰囲気。

 

 何だか強そうな奴が声かけてきたなー、なんて思いましたが人懐っこい表情と喋り方もあり、威圧的な雰囲気はない好青年でした。

 話を聞いてみたところ、彼は当時十九歳。地元のデザイン系専門学校で勉強をしていて、いわゆる”萌え画”の修行をしているそうな。


 さて十九歳と聞いて僕も友人も「「若い!」」と反応してしまいました。当時の僕の年齢が二十五歳、友人は三十歳手前。早くもジェネレーションギャップによる意思疎通の行き違いが起きないか不安になったところで友人が尋ねました。


友人

「え? 十九歳だと始めて買ったCDって何?」(もはや現代はCDの存在すらまれね)


青年

「え、言っても絶対知らないと思いますよ」


友人

「いいから、いいから。教えてよ」


青年

「チルドレン・オブ・ボドム(フィンランドのメロディック・デスメタルバンド)ってバンドのアルバムです」


友人

「え? 何そのバンド?」


Ghost(めっちゃデスメタル好き)

「お、おお……おおう……」(嬉しすぎて言葉にならない。とりあえず握手を求めに行く)


青年

「え? 知ってるんですか?」


Ghost

おう、おおう、おおおおおう僕の所属してるバンドでコピーするくらい好き。来日時にライブ見に行くくらい好き


友人

「落ち着け、Ghost!」


 その後、十分ほど談笑していたのですが、彼は用事があるそうで駅前を離れていきます……が一時間ほどすると再び僕らの所へ戻ってきました。スケッチブックとコピックを持って。


青年

「俺も一緒に描いて良いですか」


 と言った感じで彼とは駅前で偶然出会い、一緒に活動することになったのですが、そんな彼の事を今後は絵師Aと記載していきます。


【プロフィールより抜粋】

○絵師A

 路上アート集団Aのメンバー。

 初対面の時は十九歳。男性。学生。二つ名『筋肉で描く絵師』

 萌え系のイラストがめちゃくちゃ上手い、元暴走族の副総長。

「オタクになりたいから辞めます!」と言って暴走族を辞めた斜め上にスゲー奴。

《所有する芸術スキル》

・コピック、水彩、PCを用いたイラスト

・エロい絵がうまい。

・極真空手。シャレにならんくらいつおい。

・気は優しいのに力持ち。

・驚異の下ネタ好き。


 さて、絵師A、彼と交流するうちに元暴走族の過去の話もちょこっと聞くことになりました。

 と言っても以前のエピソードで少しだけ出てきた同じく元暴走族の元ヤン看護師さんとは違い、受け答えや立ち振る舞いなどに一切”攻撃性”も”凶暴さ”もなく、唯々ひたすらに”実直”で”優しい”男でした。まさに”剛の者ごうのもの”の立ち振る舞い。

 彼から聞いた暴走族時代のエピソードについても


・二十対一。たった一人で暴走族を壊滅させた。(いやいや、それはいくらなんでも……いや、彼ならそれくらい実現可能だろう)

・突っ込んできた単車を回し蹴りで廃車にした。(はっはっは。冗談きついぜ! そんな事できるわけ……奴ならできるかもしれん)

・通常、暴走族を抜ける際には金を払ったり、暴行リンチされたりするらしいのですが、暴走族のメンバー全員と戦っても勝てるからお咎めなし。(納! 得!!)


 などなど、トンでもエピソードだらけだったのですが(一度、空手の組み手をした事があったけど僕は手も足も出んかった。こんなの初めて(笑))、そんな事より路上において彼の特筆する点は”優しさ”でした。


 当時は”けいおん”等のアニメが流行っていた時代。萌え系の絵を得意とする絵師Aが路上で絵を描けば、同じようにアニメが好きな人達が彼の前で足を止めて談笑していきました。

 そうやって足を止める人の中には小学生低学年くらいの年代の子もいて、そんな子供らが無邪気に


「○○描いて~」


 と言えば、その場でサササっと描いてあげたりしていました。そうやって絵を描いてワクワクさせたり、喜ばせたりする技術と当人の圧倒的な優しさは僕には真似できない素晴らしさでした。




 あと彼は路上で絵を描いてる時、女の子にめっちゃ人気あった。

 うーむ! 妬ましや!!




○Ghost、エロ漫画を描く。


 駅前の路上で出会ってから絵師Aは毎週のように駅前に顔を出し、僕と一緒に絵を描くようになっていきました。

 絵以外の事でも(音楽、ゲーム、映画等々、趣味が合った)非常に意気投合して僕の家ヘルハウスに泊っていく事もしばしば。

 年齢は六つ離れている物の、彼の人格が良く出来ていたので歳は関係なく良い友人関係を築けていたと思います。



 あ、もちろん泊まっていくときは、ご飯は僕が作っておりました。

 当時の僕の見た目はヘビーメタルバンドに所属していたこともあって、黒服で黒髪の長髪。統合失調症の影響か目は瞳孔が開きっ放し。ドラッグの売人みたいとか、名探偵コ〇ンの黒の組織に居そう、とか言われる風貌。失礼な!

 そんな横を筋肉の塊みたいな大男である絵師Aが闊歩しながら、近所のスーパーで買い物カゴ片手に食材の買い出しです。


絵師A

「Ghostさん、そんなにキャベツを睨みつけないで! キャベツに恨みでもあるんですか(笑)」


Ghost

「いやね、こっちのキャベツの方が重いし、中身が詰まってて美味しそうだなって思って。ほら、持ってみ」


絵師A

「あ、ホントだ! こっちの方が美味しそう!」


Ghost & 絵師A

((……うーん。なんか、俺たち不審じゃね?))


 さて、当初は「Ghostさん、買い物かごが似合わねぇ!」と大笑いしていた絵師Aでしたが、数か月もすればその光景も当たり前になったようで、


絵師A

「むしろGhostさん、買い物カゴ似合うっすね」


 と評価されていました。うん、別に嬉しくはない。


 そんなとある大型連休の前日、絵師Aから電話が入ります。


絵師A

『Ghostさん、連休暇っすか』


Ghost

「暇だけど、どしたー」


絵師A

『エロ同人描くんですけど、手伝ってもらっていいですか』


Ghost

「いきなり、すげー依頼(笑) 別に大丈夫だけど、締め切りはいつごろ?」


絵師A

『三日後です』


Ghost

「三日後!? 今どの辺まで進んでるの?」


絵師A

『まだネーム(漫画におけるコマの構成等を決めるラフスケッチ)が三分の一も終わってないです』


Ghost

「三分の一!?」


 さて、漫画に詳しい方ならお察しの通り、締め切り三日前でネームがほぼ終わってない状態なんて作品のページ数にもよりますが、完成なんてほぼ無理! って状態です。


 それから数十分後、画材とノートパソコンを持って僕の家にやって来た絵師A。

 男、二人でさっそくエロ漫画の制作開始です!


 エロ漫画制作の詳細は次のエピソードにて!?

 それにしてもこの話し、どの層に需要があるんだ!?


 to be continued(/・ω・)/

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